Druopta Vega

一度は死んだ身・・・

 日本は昭和20年の敗戦時、それこそ家内工業から重工業まで全ての領域で本土爆撃を受け、工業でモノを生産するという行為そのものの息の根を止められて無条件降伏をしたわけですから、終戦当時はどこもかしこも廃墟同然、人々もぼろ雑巾のごとく疲弊していたはずです。
 しかし、米占領軍の監視下でそのような状況の中、1年経つか経たないかで、日本の工業は起きあがろうとという鼓動があちらこちらから見え始めます。
 例えばカメラ製造に焦点を当てると、昭和21年には、早くも昭和光機の「レオタックス・スペシャル」、小西六の「コニカ1型」、千代田光学の「セミミノルタ3A」が誕生しています。
 翌22年になると、千代田光機の「ミノルタ35 I」、光学精機の「ニッポン」、理研光学の「ゴコク・リコール」(ベスト版)、千代田商会の「ボルティ」(ボルタ版)などが出てきました。こうした先人達の生命力というかバイタリティには心底敬服してしまいます。

 上のタイトル写真をご覧ください。
 これは1949年にチェコスロバキアのドルオプタという会社で作られた「Vega」というカメラです。
 私にとっては同じ1949年(昭和24年)生まれということで、何となく因縁めいたものを感じてもう随分前に購入したモノです。
 早速、使っては見たものの尖鋭度は全くと言っていいほど芯が抜けカラーで使うと色が黄濁するなど時代が時代だけに大した物ではないと棚の奥で埃を被らせていました。
 このベガが生まれたチェコスロバキアも1945年にナチスドイツの占領から開放され、自由になると思いきや、ソビエトが手を伸ばしてくるんですね。
 このことがチェコの人々にとってどうゆう影響があったのかは計りしれませんが、時代に翻弄されたことはその後の歴史を見ても分かりますね。日本と同様に戦後の早い時期にこの様な綺麗な工作がされたカメラを作っていたチェコも優秀な人材が多くいたことは明らかです。
 このカメラを含め、チェコのカメラについてあまり多くの情報を持っていないので、詳しいことは分かりかねますが、有名なフレクサットをはじめ、ドイツカメラをも凌ぐほどの丁寧な作りで良く写ることは共通した特徴なのですが・・・。

 さて、このカメラですが皆様にはお馴染みの「素人寫眞機修理工房」の主、たかさき先生が先日、同じドルオプタの「エタレッタ」というカメラをご紹介くださったんですね。
 このカメラの写りが実に素晴らしい!
 そして、何と搭載されているレンズが私のベガと同じ「ETAR 50/3.5」ではありませんか。
 えぇ〜、そんなバカなぁ〜・・・、確かにエタレッタはこのベガよりは新しいカメラですが名前は同じだけどレンズは全く別物なのかなぁ〜・・・。
 そこに写し込まれた作品としてのレベルは私ごときには足元にも及びませんが、画像のクォリティが非常に上等です。
 あまりの写りの差に愕然となった私ですが、気を取り直してカメラを点検してみることにしました。
 うぅーん、原因はここかぁ〜、何とレンズの中玉がうっすら汚れで曇っています。
 おまけに前玉を回転させて焦点距離を合わせるのですが、これがかなりズレていました。
 これじゃぁちゃんとした写真が撮れるわけがありません。このカメラを手に入れた当時はレンズの分解はもとより距離の調整法など自分で出来るなんて夢にも思っていない頃でしたから、ズゥ〜とそのままで放ってあったんです。早速バラして全てを調整し直しました。

 このカメラは、仕組みから操作に至るまで実に趣があります。
 全体的なプロフィールはトリプレットの50ミリ、f3.5の沈胴式レンズを備えた目測式35ミリカメラです。
 フィルム装填のためにはボディ左横に付いているラッチを上げると裏蓋がそっくり外れます。巻き取り側にはスプールがありませんのでマガジンが必要です。
 今となっては純正のマガジンなど入手するのは困難ですので市販のプラスティックマガジンで代用しました。これで難なく使用することが出来ます。上の装填状態の写真をご覧ください。このフィルムに見覚えがある方は50代以上でしょう。(笑)
 その上の接眼レンズが実に小さいでしょ、直径2ミリほどしかありません、瞳の直径より小さいかもしれませんね。しかし、これでしっかり撮影範囲がそれも綺麗に見えちゃうんです。小さくて見難いことでは右に出るモノがいない「リコーハイカラー35」の接眼レンズより遙かに小さいのですが見えは逆にハイカラー35より良く見えるんですから不思議ですね。
 撮影するときは先ず沈胴されている鏡胴を所定の位置まで引っぱり出し反時計方向に捻ります。
 そして、フィルム巻き上げノブの前に付いているストップレバーを引きながらフィルムを巻き上げます。
 さらにトップカバー上のフィルムカウンターをノブで0にセットしたら撮影開始です。
 絞りと速度を任意にセットし、シャッターチャージをします。勿論、沈胴レンズなのでレリーズボタンはリモート式ではなくシャッター上部にダイレクトに付いているんです。
 従ってあくまで優しくソフトに操作しないとブレブレ写真を量産することになってしまいますよ。
 携帯電話に付いているカメラですら鮮明な画像が得られる現在、こんな悠長なことをしてまで心許ない写真を撮っている私は一体何なんでしょう・・・。

 

Druopta Vegaの作例です。


以下の写真は、モノクロはKONICAPAN100をエヌエヌシー社のND-76で標準現像処理。
カラーはFUJI SUPERIA100を使用
Nikon Coolscan IVでネガフィルムを直接スキャニングした画像です。

1. 木槿(ムクゲ・実用上の最短距離です)

2. 場末の銀座(絞り開放)

3. Puppy(無神経に切るとシャッターブレの連発!でもコレ妙な立体感が・・・)

4. 帆船の休日(ボケ足はどうでしょう)

5. 本郷にて

6. ボンネビル(開放での最短距離)

7. 一触即発!

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