minolta SRT101

30数年を経て理解できたパーフェクトSLRカメラ
 このカメラは、見れば見るほど、触れば触るほど、さらに撮れば撮るほど、全くと言っていいほど破綻を見いだせない。
 私にとっては、完璧なカメラといえる。
 世の中に100%完璧なものなど存在するはずはないのだが、あえて完璧と言い切ってしまおう。
 30数年前、初めて使う一眼レフとして5、6機種の選択肢があったが、最終的にこのSRT101とCanon FTの2機種で散々迷い、後者を選んで以来、そのことを何となく後悔することが度々あった。
 それは、容姿は美しいが目つきが暗く気の強いわがままな女性と、ちょっとおでこの出ぱった緑色の瞳で目元が明るく涼やかな顔立ちで相手を思いやる優しい心根の女性(絞り込み測光と開放測光の比喩としてはちょっと強引だが)に同時に交際を申し込まれ、若気の至りなさで前者を選んでしまい後々後悔するのに似ている。
 今までの人生でそんな美味しい経験をしたことは皆無で、この先も勿論あるはずもない夢想だが。気の強いわがまま娘のCanon FTはなかなか私の思い通りになってくれず、FTbに買い替えるまでの約6年に亘って様々なことを教えられた。人はそうして成長するんだネ。
 以来30数年、事あるごとに目元の涼しいSRT101を恋い慕う気持ちは延々として持ち続けていた。
 そんなある日、神楽坂に程近いカメラ店のショーウインドでこいつを見つけた。
 物件としては、珍しい機種ではなく、たいていの中古カメラ店にはおいてあるもので、今までにも何台か物色したことはあったのだが、なかなか気に入ったものが無く、購入には至らなかった。
 この機体、外観は傷一つなく、ファインダーやレンズも非常に綺麗でコンディションとしては上々だったが、値札を見ると¥9,000と表示してある。
 今まで物色した中では最安値だったので、どこか不具合でもあるのかと店主に尋ねると、完動品とのこと。
 その場で電池を入れてくれメーターが生きていることを確認させてくれたので、即購入となったわけである。

 そこで、冒頭に書いた三つの理由を挙げてみることにする。
 見れば・・・デザインについては、レンズマウントからペンタ部へ立ち上がっていくラインが精密感を伴って何ともいい形。
 無骨に組み上げたニコンFなんかより、遙かにデザイン心を感じる。また内部も含めて同様だが、部品の加工精度がとても丁寧でそこに施されているクロームメッキや塗装が大変美しい。
 1960年代中頃に生まれた同種のカメラとしては、群を抜いて秀逸な造形だと思う。まあ惚れてしまえば、「あばたもえくぼ」ということもあるが・・・。
 触れば・・・このカメラの一番の美点はファインダー。
 開放測光の利点を大いに生かす接眼窓の大きい等倍のファインダーは、覗いているだけで楽しい。
 人によっては、ピント合わせのマイクロプリズムが細かすぎて合わせにくいという声を聞くことがあるが、平素からマット面 を利用して合わせているので、私はあまり不便を感じることはない。
 また測光用の押さえ込み指針や下辺に並ぶ速度表示も大きい見えのお影でとても使いやすい。
 このシステムに使われたミノルタSR系レンズは、鏡胴全てが金属製で、ダイキャストで出来たギザギザのあるフォーカスリングのスムースな操作感や持った時のヒヤッとする金属感はとても心地よい。
 ボディ・レンズを含めた重量 が重いせいか、カメラの質量でミラーショックを吸収してしまうような感じでシャッターの感触もソフトに感じる。

 撮れば・・・これはもう完全に個人的嗜好の領域だが、ミノルタの設計するレンズはこのSR系からMD,そして現在のAFと一貫して共通 なのが、ナチュラルなボケの美しさ。
 写真表現において重要なファクターが、遠近感であり立体感であるとするならば、それを司るのがボケ方で、これが不自然であったり、二線ぎみであったりすると主題よりもそちらが気になってしまい絵が台無しになってしまう。
 勿論、これらのレンズはコントラストも柔らかく質感等も充分再現してくれる。若い頃はペンタックスやリコーのカリッとしたドライで正確無比なレンズが好きだったのだが、最近は雰囲気のある少しウエットな写 りをするレンズが好みになってきた。
 やはり音楽や文学もそうだがレンズの味も年を重ねる度、好みが変わっていくんだねェ。これは進歩なのか後退なのかはよく解らないけど。

 このカメラの最大の売りというか、特徴が「CLC」という上下2分割の測光方式。
 この当時、既に分割測光というアイデアを具現化し、製品化したミノルタの先見性は凄い。
 今では常識となってしまった分割測光だが、現在の40数分割のカメラと比べたら稚拙で非力に思えるが、これがなんと全く遜色のない威力を発揮してくれる。
 リバーサルで撮影するとよく分かるが、最初のコマから最後までピッタリ適正にコントロールしてくれる。
 ちょっと不思議なのだが、縦位 置にして空を半分入れても、そう大きく露出は狂わない。
 このカメラを使っていると分割測光なんてせいぜい5分割もあれば十分で、それ以上の測光機能はただただ売値をつり上げるための理由付けとしか思えないのだが・・・。


SRT101の主な仕様
発売年度・価格 1966年 55,300円(58mm/f1.4付き)
レンズマウント SRバヨネットマウント
シャッター 横走り布幕フォーカルプレーン B・1ー1/1000秒
測光モード CLC方式 上下2分割測光
ASA感度設定範囲 ASA6から6400まで マニュアルにてセット
電源 MR-9を1個使用
大きさ・重さ 幅145・高さ94.5・奥行き47.5mm 705g (ボディのみ)
主な特徴 開放測光、追針式メーター、ファインダー内速度表示、ミラーアップ機構等    

SRT101を使ってみました


1
MC ROKKOR-PF 55mm f1.7


2
MC W.ROKKOR-SG 28mm f:3.5

3
MC W.ROKKOR-SG 28mm f:3.5

4
MC W.ROKKOR-SG 28mm f:3.5

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