リコーフレックス


VI & VII

6,800円の伝説
 世に伝説を生んだカメラというものは洋の東西を問わず数えるほどしかありませんが、この板金リコーフレックスは日本の代表的伝説カメラの一つですね。
 その伝説の一つ一つにつては皆さんの方がよくご存じなのでここでは触れませんが、移り気な日本人を相手に昭和17年に誕生した「リコーフレックスB」から33年の「ニューミリオン」まで16年の長きにわたってよく基本モデル(板金ボディ)のままで頑張ることが出来たものだと思います。
 この板金カメラもそもそもはドイツの「レフレクタ」というカメラのコピーだったのですが、あまりの大受けに柳の下を狙ったこのリコーフレックスのそのまたコピー品すら多く出回ったのはご承知の通りです。
「このカメラがなかったら今日の我が社は存在し得なかった」とリコーの現社長が言っているように大企業誕生の礎を築いた偉大なカメラでもあるのです。
 そう言えば現在活躍しているカメラメーカーにはその会社を形作った偉大なカメラ達がそれぞれにありますね。ニコンには「ニコンF」、キヤノンには「キャノネット」、ミノルタは「ハイマチック」、コニカは「C35」かなぁ、フジカは・・・うぅ〜ん、これはチト思い着きません。

 さて、シンプルイズベストという言葉がこれほどピタリと填る工業製品も珍しいですね。
 複雑な機構を一切廃することに依るメリットは甚大で、価格の低減はもちろん、故障率の低下、重量の低減、操作のし易さと良いことずくめなのです。
 自動車の世界で言えばフォルクスワーゲンやシトローエン2CY、スバル360などと共通のコンセプト、最低限必要な物だけで構成されています。
 初代のB型はローライコードをそっくり模したA型のシャッター機構を引きずり3枚バネのタイムまで装備した6速(1/5から1/200秒)という高級品が使われていましたが、戦後このカメラが大ヒットするきっかけを作ったIII型以降では2枚羽の3速にスペックダウン!
 この機能を削ぐという時代に逆行する大英断が史上最も安価で丈夫なカメラに仕上げる秘策だったのかも知れません。
 現在のコンパクトカメラが小さな身体にギッチリと使われもしない多機能を背負い込まされて、2,3年も使い込むとウンともスンとも言わなくなっちゃう、どうなんでしょうこうゆうモノ造りの姿勢は・・・代替促進のためにこうゆうふうに作ってあるのは見え見えですが嫌らしい企業姿勢ですね。

 リコーフレックスは、何と言っても長期間に亘って支持され続けたカメラですから写りだってヘナチョコな訳がありません、このリコー・アナスティグマットレンズは伝統的に四隅の光量が若干不足するのですが、大方の使用目的は市井の人々の肖像、それこそ画面の真ん中にド〜ンと子供達や妻が鮮明に写りさえすりゃ十分に用が足りちゃいます。
 しかし、見くびる無かれ!絞っていくほどに、どんどん解像力が増して素晴らしい絵を造ってくれるカメラなんです。
 当時のカメラ雑誌をめくっていてもこのカメラで撮った投稿写真なんてまず見かけません。圧倒的に売れたカメラですからそれを使った投稿があっても不思議はないのですが、アマチュアにはアマチュアなりの沽券とか見栄でもあったのでしょうか・・・
 雑誌に投稿するような方々は高価なカメラを使わないと良い写真が撮れないと言うような錯覚があるのでしょうか、たかだか1万円にも満たないカメラを使って投稿しても選漏れは確実とでも思っていたのでしょうか。
 確かに高価なレンズやカメラには値段なりの解像を保証はしてくれるのでしょうが、そのことが力のある写真を撮れると言うこととは別の問題ですがね。



 さて、使い勝手はすこぶる軽快です。
 標準感度のフィルムをセットして1/100秒に固定、晴れ間なら絞り16、日陰や曇天なら8で何も考えずにバンバン撮っちゃう。
 暗くなりがちな二眼レフのファインダーですがこのカメラに限っては結構明るいんです。お陰でルーペなんか覗かなくてもスラスラピントが合わせられますよ。
 私の場合、動作に昔のようなキレが無くなってしまったので二眼レフによるスナップは暴挙と呼ぶに相応しいのですが、このカメラを持つとその軽快感から不思議とスナップの誘惑に駆られます。

 現在、私の手元には、銀座三愛で騒動を起こす伝説を生んだVI型と、シリーズ中、量産効果で最安値を設定した(\6,800)VII型が有ります。
 今回の作例はアイレベルでも容易に使えるVII型で撮ったものを使いました。
 アイレベルで使うときはファインダーの蓋に細い線でカットされたフレームラインを片方の目で覗き、もう片方の目で被写体を直視します。そうするとアァ〜ラ不思議!視野の中に綺麗で鮮明なブライトフレームが現れるではないですか。コツや慣れなど全く必要ありません、両眼を動員できる方ならどなたでも簡単に出来ます。
 この仕組みを「コンツールファインダー」と言うそうですネ。
 あなた自身の目玉以外何一つレンズを使っていないファインダーなので見えは最高。このカメラをお持ちでしたら是非一度このファインダーでの撮影を試みてください、ウエストレベルとは違う二眼レフの楽しみ方が拡がるはずです。
 ただ近接で使う場合には、上下のパララックスがさらに大きくなりますので、そのことを忘れてレリーズすると思いも寄らないトンチンカンな写真が出来上がってしまいます。思いも寄らない写真を撮り続けた私が言っているのですから間違い有りません。
 因みにVI型で撮ってもコントラスト・尖鋭度・光量落ちなど全く同様になりますので、全く同じ形式のレンズが使われているものと思われます。

 この3枚玉、モノクロに関しては必要にして十分、言うことのない描写をしてくれるのですが、カラーを詰めても全く癖のない自然な発色を見せてくれます。こんな良いレンズを使ったカメラが何で6,800円で作ることが出来たのでしょう。

 

RICOHFLEX VIIの作例です。

以下の写真、モノクロはAgfa APXをND-76で標準現像
カラーはコニカ・センチュリア100を純正現像処理したものを
Canon D2400Uでフィルムを直接スキャニングした画像です。

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