震災後の福島犬はどうしているんだろう(2011.5.16)


このたび、神は人を殺した。
土地を殺し、家を殺し、たくさんの善良な民やいたいけな子供たちや
無心の犬や猫をもっとも残酷な方法で殺した・・・・・
人間の歴史の中で築かれた神の存在をいま疑う
と、写真家・フジワラシンヤさんがこの震災について著しましたが
その神の所在地でもある神域で暮らしている犬たちはどうなってしまったのか
そのことがなによりの気掛かりで、今回、昨年探訪して多いに涙させてくれた
福島県南部に暮らす犬たちの消息を求めて歩き回ってみた。

最初に駆けつけたのは東北道・矢吹ICを降りてすぐの大和内(やまとうち)村の日吉神社

村内で唯一の高台にあって、木々が両側に生い茂って狭くなった参道を登って行く
やがて視界が開けて最初に眼に飛び来んきたのが鮮やかな朱色に塗り直されていた木造鳥居の無惨な残骸
あぁ〜〜、なんてことだっ
さらにその先の拝殿を遠目に見ると、なんだかヨロヨロと建っている感じがよく分かる
心配で胸が張り裂けそうになりながらも、さらに前進してみるとそこには

もし、爆発物を使ったテロがこの近くであったら、
こんな惨状になっているのではないかと思えるような・・・・
彼が150年もの間ただただ唯一、一カ所の居場所であった台座は
その基礎すら完璧なまでに破壊され粉々だ
前方基部を失いグラグラになった彼のバランス力、
それでもさらに揺れ続ける激震にとうとう堪らず彼は
前方からもんどり打って地面に叩き付けらた
もう、苦しくて苦しくてただただ涙が溢れて、彼に掛ける言葉も見つからない

あの日からもう二ケ月以上が経っているというのに、いまだにこの地面の揺れは止まらない
倒れたまま顔を地面に押し付けて苦しがっている彼を抱き起こし
しばし、その苦しみを分かち合おうと抱き続けた

やがて、ボクの姿を怪しんだカラスが頭上の杉の木の上からギャァ〜と鳴いた
ふと我に返り、ここで彼の写真を撮ろうとシャッターに指を置いた瞬間、足元の地面がグサグサと揺れ出した


次に向かったのが中島村・滑津(なめつ)に居る「羽黒神社」のワンコ達だ
ココには和平さんが丹誠を込めた一家四人のワンコたちと等身大の馬が仲良く暮らしているはずだ
しかし、そのどれもが極めてギリギリのバランスで生活しているので子たちなので
とっても心配していたヤシロのひとつだ

現地に着くと昨年には無かった「通行キケン」とか「キケン」の立て看板が
すぐに眼に飛び込んで来た、イヤな予感・・・・
しかし、参道の始りに居る平成犬はじつにビックリするくらいちゃんと仕事をしてるぞ
しかし、その後ろに居るはずの和平犬たちが見えない
どうしたんだろっ、あぁ〜心臓が不安でドクンドクンと波打ちだした

ぐぁっ、このありさまはなんなんだっ


台座からもろに崩され下ろされてバランバランだっ
痛いんだろう、痛いんだろう、痛みで苦悶している顔をまともに見ることができない
あちこちに散らばってしまった彼のカラダの断片を拾い直して
元のカラダに形になるよう置き直すが、もうボクの精神もボロボロだ
呼吸が荒い、石片を抱えて歩く足元がよろける、眼下には止めど無い涙
苦しい、苦しい・・・・ただただ、苦しい

毋子の方はぎりぎりで何とか救えそうだ
宮世話人の方には一緒に処分などと言わずにぜひとも出来るだけのことをして助けてあげて欲しい
さらにこの先で和平親子を見守って来たあの農馬はどうなっているだろ、こちらも心配だ

うぅ〜〜、やっぱりキミもかっ!
ぬかった田を何年も耕して鍛えたその脚でもこの地震には踏ん張ることさえ出来なかったんだね
可哀想に、可哀想に・・・・・

しっかりと見開いて虚空を見つめるその瞳は死んでいるとは到底思えない
出来ることなら脚を継ぎ足してでももう一度この台座の上に起たせてあげたい
彼の首もとに座り、冷たくなってしまった頬を撫でながらしばらくの間、この70年間の想いを聞いてあげた


この他、さらに5、6カ所の生息場所を尋ねましたが
どこも惨憺たるありさまでメチャメチャに破壊が行われていました
地球とは宇宙でももっとも美しいと思われる天体ですが
同時にこんな残酷なことをする「生き物」なんだっ


最後に幼なじみの親友が暮らす石川町を訪ねてみることにした
ここにも和平さんの代表作が街のど真ん中の「石都々古和気(いわつつこわけ)神社」
というややこしい名前のお宮に居るのだ
しかし、彼らも恐ろしくキワドいバランスで、なおかつとても高い台座の上に立っているワンコで
ここも震度6が襲った地区だからとても無事とは思えないし
ましてあの高さから落下したら粉砕破壊は間違いの無いところだ

わっ、なんと、なんと、鳥居が無事に立っているぞ!
今回の訪問で鳥居が無事な姿をここで初めて見た
これはもしかすると、あの子達も無事なのでは・・・・・

おぉ〜、生きてたっ!
まるでゲンキじゃないか!!!

母親の方も逆立ちはキレイに決まってるぞっ
完璧だっ、無傷だっ、奇跡だっ!!!

子供たちも相変わらずボールでゲンキに遊び回っている
うれしい、うれしい、とってもうれしい
本当に良かったね

今回の旅でボクは初めて笑顔になることが出来た
しかし、喜び笑いながらもまたしても涙が止まらない
それも、今までで最高の量のなみだが溢れ溢れて止まらない
もう、嬉しくて、嬉しくて・・・・

神は最後にこの親子だけは助けたんだ
和平さんが先立ってしまった三人の子供たちを想い忍んで
渾身の力で削り出したこのこの子達だけは殺さなかったんだ

このことが判っただけも今回、ここへ来て良かったと思うことにしよう
それにしても今回の大災難で大被害を受けられた東北の人々の
冷静沈着さと我慢強さには驚くとともに尊敬すること以外に想いが浮かばない
この旅でもまたまた多くの方にお世話になってしまった
一日でも早く、元の暮しに戻っていけますようお祈り申し上げております
どうもありがとうございました

2011.5.17

 

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