ジャンクなリクォーツ時計

もう44年もむかしの1969年のこと、セイコーが世界初のクォーツ式腕時計を発売しました。
「アストロン」と名付けられたその世界初のクォーツ時計をみなさまも覚えているでしょう。
発売時の価格はなんと45万円!
当時、同じ年に新発売になったスバルR-2は31.3万円でしたから、トヨタカローラと同価格くらいか・・・
いかにこの時計が高価だったか分かります。
このアストロン発売から、遅れること2年、いつも先進的なデザインとコンセプトで
世間を驚かせてきたあのRicohがセイコーの独占にストップをかけたのです。
もちろん、鈑金二眼フレックスやゼンマイハーフカメラでおなじみの手法、価格破壊での挑戦です。
とはいっても第1号の製品は8万円という価格設定。
リコーとしては、それでもセイコーよりは一気に1/6近いコストダウンに成功したワケですから
これは、「オートハーフ」に次ぐ快挙だったといってもいいかもしれません。
このリコーのクォーツ時計は「リクォーツ(Riquartz)」というネーミングを
与えられて現在まで40年以上も製造が続けられています。
カメラや事務機でリコーを知っていても、世界で2番目のクォーツ時計の開発メーカーだった
リコーのことを知っている人は案外少ないのではないでしょうか。

さて今回、ジャンク箱から引っ張りあげてきたのは、そのくだんの「リクォーツ」、値段は500円。
状態は、経年の使用通りのキズはありますが、文字盤などはまだまだキレイ。
しかし、肝心のリューズが引き出しも回転も出来ないという超リスキーなやつ。
もちろん、針はすべて止まっていて、どれくらい前に電池切れになったものか・・・
電池切れの期間が長いと、内部で電池が腐食してムーブメントまで殺してしまうことがよくあります。
こういう状態で500円は高過ぎるのは承知なのですが、リコーの時計ってあまりジャンクが出て来ない。
リコーカメラファンとしては時計も欲しくなるのが人情ってものです。
まぁ〜、整備が失敗してもリコーコレクションとして持っていてもいいなと・・・


↑ まだ時計に関しては資料などが一切なので、このモデルの名称とか品番などが分かりませんが
最初期の頃のリコークリスタルマークが小さくシルク印刷されているので1970年代の製造品みたいです。



↑ この時計もいわゆる「こじり開け」タイプの裏蓋です。
ふたを開けるとご覧の通り、ゴムパッキンがからっからに乾燥した状態で
パリパリポロポロと剥がれ出てきた!

こうなってしまってはいくら裏蓋に「WATER RESISTANT」と刻印されていようが
もう、防水機能を期待するのは無理。夏場、腕にかいた汗でさえ浸入しちゃいますね。



↑ で、このリューズが頑として動かない原因も一発で判明しました。
リューズ心棒を伝って浸入した汗がボディ接触面で腐食して錆が発生。
そのまま長い時間、リューズを動かすこと無く使用を続けたために、
とうとう心棒とボディが癒着してしまったんですね。
クォーツ時計というのは、日差・週差はもちろん、月差でさえも
ほとんど狂わないので、時報調整のためにリューズをいじることって
ほとんど無いので、古くなってシールパッキンが腐るまで使い続けちゃう。

とりあえず、シリコン潤滑油を少量吹いて一晩寝かして様子をみましょ。

↑ 幸いにも一晩の寝かせでしぶしぶながらリューズが微動しはじめました。
この作業はあせって無理にねじり動かすとリューズがぽろりと心棒から折れてしまいますので
気長に気長に気長に徐々に徐々に徐々に押し引き押し引きを繰り返して行います。

↑ 経年で詰まったホコリ・ゴミ・汗跡などをキレイに清掃したら
適合電池を都合してきましょう。
今回もまた、ダイソーにSR920SWの互換品がありました。
なんと2個で105円!
YやBの電池売り場ですと、コレ1個で380円もしてしまう高級電池なのです。
それにしても「ダイソー」の実力ってスゴいですね。
こんな超ニッチな商品まで常時ストックしておいてくれるんですから。
それとも、けっこう時計のレストアってやっている人が多くて、売れ筋商品なのかしら・・・?
電池交換の際は必ず、作業日を裏蓋にマークしておくと消耗時間が分かって参考になります。
もちろん、ゴムパッキンもその都度、新品交換をしておけば今回のようなトラブルを
避けることが出来ますので、忘れずにやりましょ。

↑ さて、すべての作業が終わったので腕につけてスタイルを眺めてみましょう。
すると、前のオーナーがよほど腕太の人だったようで、ボクの腕では
ゆるゆるのするするでブカブカ!
バックルの調整ポイントを最短にしてもなおユルユルなのです。
これは、ベルトのコマ詰めをしないとどうにもなりません。
このタイプのベルトは「↑」マークのコマが調整可能ですので
カメラのレストアで使っていたカニ目回しペンチを使ってピンを外します。
今回は2コマをカットしてジャストサイズとなりました。



さすがに40年も昔のデザインで文字盤の意匠などクラシックそのものですが、
なかなか品格のあるいいデザインですよね。
この時計が誕生した頃、銀座ではマクドナルドの日本一号店に連日、行列ができ
札幌でオリンピックが開かれ、列島改造の田中内閣に国民が期待した、そんな時代でしたね。


2013.3.27

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