Kodak Pony


左は1955年製「Kodak Pony Model C」、右は1957年製「Kodak Pony II」、
'57 パッカードコンバーチブルクーペと共に

美味しかった脱脂粉乳

 第2次世界大戦で勝利した連合軍側はその後の世界を牽引して行くわけですが、とりわけリーダーだったアメリカはヨーロッパ諸国とは違って自身の国土が無傷だったことで、戦後復興に一切の費用が懸からなかったわけですから、これは傷ついた他の国々とは大きく事情が違ってきます。
 元々経済的には優位に立っていましたが更に輪を掛けて拡大していきました。ソ連が大きく台頭してくる1960年あたりまでは、我が世の春を謳歌するんですね。
 人々は派手なツートーンカラーのオープンカーでドライブ、日が落ちるとジンやバーボンを呷りジャズのリズムでダンス・ダンス・ダンス・・・。当然この恩恵は子供達にも舞い降りてきて、男の子たちはプレスの効いたズボンにフラノのブレザージャケット、女の子も裾が大きく拡がったかわいいレース地のフレアースカートを着せてもらって白いソックスにピッカピカの革靴・・・、おぉー何とリッチなことでしょう。
 その当時、たまたま日本に生まれてしまったわたくしは、尻や膝に継ぎ当てをしたズボンを履き、すり切れた先から親指が覗く”アサヒのズック靴”を素足で履き、学校給食で出されるアメリカさんから供与された脱脂粉乳を「美味しい・美味しい〜」と言って飲んでいたんですね。
 周りを見渡したところで、ジャリ禿の修君もお転婆百合子ちゃんも一年中鼻を垂らしていた良平君も皆同じ様な状況でしたので、これがスタンダード。別に貧しいなぁ〜とか、悲惨だなぁという思いは全くありませんでしたが・・・。

 そんな時代背景の基にアメリカで誕生したのが今回のテーマ「Kodak Pony」です。
 スタイルや仕様、ネーミングを見ると正面切って大の大人が使うものではなく、かといって玩具というほどチャチなものでもないので、少年少女をターゲットにして作られたカメラではないでしょうか。
 単にPonyといっても1950年に初代が誕生し、62年までに細かな変更を加えて6機種のPonyが製造されました。いま私の手元にあるのは、55年製の「Kodak Pony 135 Model C」と57年製最終型の「Pony II」の2台です。

「Model C」は、ハーシーのチョコレートのような色をしたベークライトボディに44mm, f/3.5の3枚玉レンズ、前玉回転式の焦点調節、絞りは3.5から22まで選べ、シャッターもバルブはもちろん1/25から1/300まで4速が選べる本格的な物が使われています。
 コダックのカメラは伝統的に初級者を意識した作りがしてあって、このカメラにも絞り表示にはf値のほかに英語の文字による明るさの表示が鏡胴のプレートにプリントしてあります。
 またレンズリング正面 には目立つ赤い数字で絞りの変化による深度が一目で分かるリングが装着されており、このカメラを子供達が使うことで写真機の仕組みがしっかり憶えられるような教科書的な作りのカメラになっています。

 もう一方の「Pony II」は、正面のメタルプレート以外は全身黒のベークライト製で直線を使ったデザインがやや近代を感じさせます。
 しかし、レンズは3枚玉 は変わらぬものの44mm, f/3.9とややスペックダウン、前玉回転式の焦点調節も出来るのですが、絞り調節がf値ではなくEV(エクスポージャーバリュー)式に変わってしまい、絞り羽の枚数も菱形の4枚(C型はほぼ円形になる6枚)、シャッターも約1/50秒位 の単速になってしまっています。
 これは一体どのような計画で造られたものでしょうか、これでは標準的な写真の基礎は覚えられませんね。これがコダック流の進化なのでしょうか、どうもよく理解できません。
 コダックという会社が写真の歴史に関して貢献したものは、質、量共に膨大なものであることは世界中の誰もが認めるところですが、一方でアメリカ合理主義に基づく切り捨てについても考えさせられることも多いですね。
 特にフィルムフォーマットに関しては直接会社の利益に結びつく事柄なので、手を変え品を替えということが起きてきたわけです。
 今回のPonyシリーズは、たまたま135フィルムを使用していましたので、今日でも問題なく使えますが、126、127タイプ等今では消えてしまったフォーマットだと撮影に要する労力よりフィルム調達の苦労の方が多くなってしまうので、カメラだけが残って路頭に迷ってしまうことになります。
 同様に現在のデジタルカメラにしても、記憶メディアやPCとの接続方式が短期間で進化してしまうのでライフタイムは更に短くなってしまいますね。


Kodak Pony Model C


 使ってみた印象は、作例をご覧頂けば一目でお分かり戴けると思いますが、両機ともに共通 してアンダー部をいとも簡単に省略してしまい、立体的な表現をすることが非常に難しいレンズです。
 製造目的や価格からすれば、そう気を入れて作られたことではないにしても、かなり端折りすぎではないでしょうか。現代の高密度な感材を使ってもこの通りですから、当時のフィルムでは更に解像が悪化したと思われます。
 カラーの作例は「Pony II」を使った物ですが、マッキキという感じで黄色に転んでしまい、どうにもこうにもという感じです。
 ということでどうもいい印象が無いのですが、一つだけ素晴らしいものがあります。それは上質な牛革を使い、しっかり縫製された茶色のケースで、やっぱり物資だけは世界一豊富だったんですね。

 

PONY Model Cでの作例です

以下の写真は、ネオパンSSをミクロファインで標準現像をしたものです。
ニコンCOOLSCAN IVでネガフィルムを直接スキャニングした画像です。

2004.11.24

1. am 7:00

2. am 10:00

3. pm 1:00

4. pm 2:30

5. pm 4:00

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