NEOPAN F

 いつものように週末の仕事帰り、行きつけのカメラ屋さんに明日使うフィルムを買いに寄ったときのことです。
 常用しているフィルムを数本買い求めた後、たまには気分転換に使ったことのないフィルムも買ってみようかと陳列棚を見ていると「NEOPAN F」のパッケージを見つけました。別に特段珍しいものでも何でもなのですが、私はその箱を見たとき懐かしさでしばし立ちつくしてしまいました。
「このフィルムまだあったんだぁ・・・」
 私が写真の面白さに目覚めた学生の頃、もう35年以上昔のことフジフィルムから新発売されたのがこの「NEOPAN F」で、当時は判で押したように晴れたらNEOPAN SS、曇りや室内ならNEOPAN SSSとまるで定説でもあるかのごとく、2種のフィルムを使い分けていました。 元気のいいアナーキーな学生は、コダックのTRY-Xを効果的に使い粒子を故意に荒らした森山大道さんの写真に強く惹かれていました。このムーブメントはかなり強く、学生の間で一時は「TRY-Xでなければ写真にあらず」みたいな雰囲気すらありましたね。
 私は自分が保守的だとは思っていませんが、階調を無視し、ハイキーな仕上がりの乾燥しきった写真がどうにも好み合わず、この流行に乗ることが出来ず終いでした。
「NEOPAN F」はこれとは逆に微細な粒子で微妙な階調を上手く引き出してくれるフィルムで、やや軟調になりましたがグラデーションが綺麗に出るので、私はかなり長い間使い続けた記憶があります。
 こうゆう状況では圧倒的に私は不利で、友人や仲間からは「お前のは古い!」の一言で全く相手にされず疎外されていましたね、でも「好かんもんは好かん!」こればかりはどうしようもないです。
 フィルム売場で立ち尽くしているとき、瞬時に若かりし日の思い出が蘇りました。そうだ、明日はこのフィルムで写真を撮ってみよう、とちょっぴりノスタルジックな気持ちになってNEOPAN Fを買って帰りました。

 今回、お世話になったカメラは「AGFA B2 SPEEDEX」。
 1950年代に作られ
た6×6判の簡易スプリングカメラです。「B2」というのはアグファ流のフィルム呼び名で、俗に言う120ブローニータイプを指しています。
 レンズは85mm/f4.5のトリプレット、フィート表示の目測式焦点合わせ、シャッターは1/2秒から1/250秒までの7段、ほかにバルブとタイムが使えます。
 一応ドイツ製にも関わらずフィート表示になっているのは、アメリカ向けに輸出されたものだったんでしょうか。これといって突出した特徴のない実に地味なスプリングカメラです。
 このカメラを含めてアグファ製のスプリングカメラを何台か使っていますが、みな一様にベローズがやられてしまっていますね。どうも材質に欠点があるようで、外観はすこぶる綺麗でも折り曲げの角にピンホールが必ずあります。
 このSPEEDEXも入念にピンホールを塞ぐ作業を繰り返しました。 ほんの小さな光線漏れでも著しくコントラストが低下しますので面倒がらずにやるしかないですね。完璧に整備された蛇腹カメラは内面反射が殆どありませんから良質な画像を得ることが出来ます。

 さてこの「NEOPAN F」は、ISO 32という低感度フィルムで絞り込んだときはかなりシャッター速度が遅くなりますので、手ブレには十分に配慮しないと尖鋭な印画が得られません。
 また同様に曇天で光量が不足気味の時は更に条件が悪化していきます。
 ということでお天気が心配でしたが今朝は雲一つなく良く晴れています。これはNEOPAN F日和と、早速カメラにフィルムを詰めて出かけることにしました。
 向かった先は三浦半島相模湾側の磯場です。しかし、ここまで天気がいいとコントラストが強くなり過ぎ、このフィルムが持っている「本来の味」を上手く引き出せませんでした。次回は1/1000秒まで切れるカメラで絞りを開けて使ってみたいと思います。

 

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上の作例は、FUJIミクロファインで標準現像後、
CanoScan D2400Uでフィルムから直接スキャニングした画像です。

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