YASHICA LYNX-1000

眼に宿る山猫の輝き
 ヤシカ・リンクス1000は、1960年の誕生。
 私はまだ中学生でしたが何か世の中が騒然としていたことは憶えています。国会前の安保闘争で警官隊とデモ隊の衝突で女子大生が死んだことがいたくショックでしたね。
 私の家にもテレビが入ったばかりだったので、これらのニュースの生々しい場面をよく見ていました。映画では戦闘シーンや暴力シーンはよく目にしていましたが、これはフィクション、テレビニュースの衝突シーンはついさっき起こった本当のことですからこれは映画とは比べものにならないくらいの衝撃が伝わります。
 テレビといえばこの年からNHKはもとより民放各社もカラーの本放送が始まったんですよね。
 勿論一般家庭では当時の金額で50万円(現在でも大金ですが)もするカラー受像機など買えるわけはありませんからその後かなり長い間、白黒テレビで見ていました。
 当時、父親が大変なプロレス好きで、といより一億全国民が力道山の活躍に熱狂していましたね。
 それで、国鉄新橋駅の駅前広場にステージがあって、そこに街頭カラーテレビジョンが設置されていて、夏休み中など金曜日の夕方になると私を連れて電車で1時間ほどの新橋駅までプロレス中継を見に行くんですよ。
 中継が始まる1時間前だというのにこのテレビジョンの前には何百人という人の山、すごい人気でしたね。
 今になって思い出すとそのテレビジョンは、角が大きく丸くなっていてせいぜい19インチくらいの小さな画面だったのではないでしょうか、それを数百人の人が食い入るように見つめて熱狂していたのですから・・・。信じられないような話ですが本当のことです。
 前の戦争で無条件降伏をした日本は米国に対し劣等意識があるのは当然で、大きな米人レスラーを相手に小柄な力道山は悪戦苦闘、相手の反則攻撃で額から鮮血を流しノックアウト寸前、相手はトドメを刺そうと跳び蹴りに出ます。しかしそこを狙い澄ましたようにロープに掴まってかわすと今度は最後の力を振り絞って「必殺空手チョップ」の一撃で相手をマットに沈めてしまいます。
 これで一億国民は大興奮の大歓喜!いやぁー、凄い騒ぎでしたよ。
 この中継を見ながら興奮しすぎて心臓麻痺を起こして死んだ人も随分いましたね、プロレス見ながら死んじゃうんですよ。これも今の若い方には信じがたいでしょうが本当の話。

 あらら、気が付けばすっかりカメラとは全く関係のない話になってしまいました。話をカメラに戻しましょう。
 この年、小西六からは「KONICA J」、ミノルタからは「ユニオマット」、オリンパスからは「オートアイ」、リコーからは「メイト」というようなカメラが誕生しています。
 どのカメラもそれなりに60年代のトップを切って出しているので、デザインにそれなりの新風を感じさせますが、唯一このリンクス1000だけは50年代を引きずった古臭い保守性を感じます。
 同じくこの年にヤシカでは「ミニスター」をデビューさせますがこちらも大同小異、デザインは依然として新鮮味がありません。
 何を根拠にLynx(山猫)とネーミングしたのでしょうか、どう見ても野性的で精悍な山猫のイメージは想起できませんが・・・。しかしこの古色蒼然さは今にして見ると堂々たる威風を感じますね。
 ヤシカがカメラのデザインに時代の風を入れて本気で拘るのは「エレクトロ35」以降ですね。コンパクトカメラの「35MF」なんて素晴らしくバランスのよいデザインで見ているだけで惚れ惚れしますね。
 実際に使ったみた感触ですが、ファインダーはやや暗く、見えも0.7倍と小さいのですが歪みが全く無く二重像がハッキリしていてピント合わせはとても容易です。
 またパララックスも自動補正される上等な装置が内蔵されています。
 巻き上げレバーも軽からず重からず非常にスムースでストロークも実にいい感じです。
 このカメラにはセレン光電池で動く連動露出計が搭載されているのですが、私の機体はブラシが劣化してしまってもう指針が動きません。カラーネガで使う限りはそう大きく崩れることはないのでこのままマニュアルカメラとして使うことにします。
 シャッターには1/1000秒まで切れる当時としては高級なコパルSVが載っています。
 ということで、パララックス自動補正、ZUNOW製ダブルガウスタイプの大口径4群5枚f1.8レンズ、コパルSVシャッターと、これは60年初頭ヤシカレンジファインダーの高級機だったんですね。

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サムネイルをクリックすると大きい画像を見られます。

作例1:ピントは最短80cm、絞りはf.16、写って当たり前の数値ですが・・・。
作例2:大口径を利用して夜の町に挑戦。開放で1/4秒、が大失敗。イルミネーションの電球の形が手ブレをしっかり映し出してくれました。4は同条件でもう一枚。やはりf.8くらいまでは絞りたいですね。三脚に据えて2秒くらい切れば万全だったと思います。
作例3:こちらの技術不足が主要因ですが、立体感とか遠近感を表現するのがどうも上手くいきません。色再現に関しては偏りもなく満足なのですが、総じてメリハリに欠ける感じがします。この辺りは当時の国産レンズが一番苦手とするところなのでしょうか。エクターやスコパーなどは実に良い感じに写るのですが・・・。
作例4:テストなのでフィルターやフードは装着していませんが、この程度の斜光線でもフレアーが出ます。やはりフードは必須ですね。

作例写 真は、Agfa Vista400をLPL PRO現像キットで処理。Nikon Coolscan4でネガフィルムを直接スキャニングした画像です。

ビュッカーさんの報告

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