Kodak Box cameras

 

1924 Kodak No.2 Brownie Model F(左)
グリーンのフレームにダークグリーンの貼革、経年による草臥れ感はありますが、お洒落なカメラです。

1946 Kodak Brownie Target Six-20(右)
フロントパネル横のレバーは上がバルブとインスタントの切り替え、下がレリーズレバー。
ファインダーは明るく大きくて大変見易いものです。

箱カメラの真髄

 無愛想で表情のない様を味も素っ気もないと良く言いますが、箱カメラはまさにその風情が「味も素っ気もない」のであります。
 手の平から少しはみ出すほどの黒い箱に巻き上げネジと鉄板の小片を折り曲げただけの露光装置が付いているだけ、まったく無愛想で表情の欠片もないのであります。ただそれだけだと天地左右が全く判らなくなるので、申し訳のように革ベルト出来た取っ手が上面に付いています。
 これが箱カメラのスタンダード、製造国・メーカー・年代が違えど意匠は皆同じ風情なのであります。
 実はわたくし、古式カメラに興味を持つまで、この箱カメラの存在自体を知りませんでした。まぁ、このカメラが活躍していた頃は私が物心の付く以前でしたから目にすることがなかったのも当然なのですが。
 古い写真機に興味を持ち始めて、カメラ店の棚に置いてある箱カメラを見る機会は度々出来たのですが、欲しいと思ったり、使ってみたいと思ったことは1度もありませんでしたネ。
 理由は簡単です、味も素っ気もどころか精密感や高級感、さらに重量感と私が古式カメラに求める全ての要素がキレイサッパリ何一つ無いんですから。
 中には本来レンズが有るだろう場所が鉄板で遮蔽されている物まで有ったりして、何がどうなっているやらよく分かりません。
 大体、スタイルからしてこんな物でちゃんとした写真が撮れるとは思えず、万に一つ全ての条件が味方をしてくれた時のみ、ボァ〜ンと解像するのかなという印象でした。
 どうも日本民族の嗜好はこのようなあまりに簡素な写真機を受け入れなかったようで、ローライコードやイコンタのコピーは巷に溢れましたが、箱カメラの国産模倣品は出現しなかったようです。私が子供の頃に目にしなかったのはそのせいもあるんでしょうね。
 箱カメラに関しては、以前kanさんよりお借りして使ったツァイス(ゲルツ)のボックステンゴールが素晴らしい解像で、印象深い写真が撮れて感動したことがあるのですがボックステンゴールは箱カメラ界のロールスロイス、レンズのシャッター機構も別格なんですネ。
 今回は更にプリミティブというか箱カメラの王道・基本中の基本、はたまた神髄、コダックのボックスカメラ2機種を使う機会を得ることが出来ましたのでそのレポートです。

 その1台目は、「Kodak NO.2 BROWNIE MODEL F」(上写真・左)。
 コダックの古式カメラには、よくNO. Xという表示が出てきますが、これはフィルムサイズを示す物で、「NO.2」は現在でも生き残っている「120サイズフィルム」を表します。従ってこのカメラにはフィルムでの加工や細工は一切無し。現行品がそのまま使える便利な箱カメラです。
 コダックは1901年から50年以上に亘って数多くのボックスカメラを英米で生産しましたが、このNO.2 BROWNIE MODEL Fはその中でもかなり古い時期のもので、アメリカでは1924年から33年まで、イギリスでは1928年から35年まで、それぞれ100万台も生産された超ベストセラーカメラだったそうです。
 さすがに80歳近い代物、反射式のファインダーは覗き窓が非常に小さく、見えもことのほか悪くてほとんど実用にはなりません。概ねカンで大体こっちの方あっちの方と狙いを定めてレリーズする他はありません。神様が味方をしてくれれば撮りたいものを取り込めますが、そっぽを向かれたひには何を撮ったんだかサッパリ判らない意味不明の写真が出来上がります。非常にリスキー、スリル満点の撮影が楽しめるというわけです。
 レンズは、ボックスカメラにはお決まりのメニスカス単玉。シャッターも気持ちの良いくらい単純な回転式単速で、これが最前面にセットされているために前から見ると鉄板(シャッター)で遮蔽された丸い穴があるだけでレンズらしき物は見えないんですね。
 無知な私は初見したとき、前玉が欠落しているのではと思ってしまいました。もちろん距離調整などという洒落た仕組みも持ち合わせておりません、いわゆるフォーカスフリー!こりゃぁ良いわ、速写が出来るぞぉ〜。
 と以上のようなプロフィール、もうこれ以上簡素化することが出来ない究極のシンプルカメラですね。

 
さて、2台目ですが、これまたお友達のebatomさんからお借りした「Kodak BROWNIE TARGET SIX-20」。
 ターゲット620は、イーストマンコダック社がアメリカで1946年から1952年までの7年間、量産した終盤の代表的な箱カメラです。
 こちらになるとすっかり進化していて、ファインダーにも凸レンズが組み込まれて面積も大きく、また見えも明るくてクリアー、これはもう充分に実用品です。実際に使ってみて解ったのですが非常に正確なフレームで、ほぼファインダーで見たままの絵が撮れます。
 また、シャッターもバルブレバーが添加されて長秒数の露光が出来るようになっています。インスタントの方は相変わらずの単速ですがね。

 レンズの方はシャッターを挟んで前後にガラス玉が入っているのですが、これがどうにも判らない! 
 前側は1枚と言うことは判断が付くのですが、後側はどうも2枚有るように見えるのです。もしそうだとすればトリプレットと言うことになるのですが、どうも前後の玉はレンズではなく平ガラスのように見えてしかたありません。
 またそのレンズ達は中側が多少埃で汚れているのが何とも気持ちが悪く、バラしてキレイにしたいところなのですが、それが出来ないんですネ。多くの箱カメラがそうであるように薄い鉄板をプレスした何枚かのパーツをカシメで組んであるために分解することが出来ないんです。
 うぅ〜ん、歯痒いですねぇ、分解できればレンズ構成も判るのですが・・・。
 しかたなく、コダック社のHPで調べてみました。するとレンズには「Meniscus」・・・やはり単玉でした。レンズの前後に防塵・防護用のガラスが填っていたんですね。フロントパネルにはちゃんとデザインされた化粧版が施されていて、如何にも大量生産商品としての臭いも充分あります。そのデザインの線の処理やロゴタイプなどはアールヌーボーの香りがまだ少し残っています。
 このカメラは名称にもなっているように620タイプのフィルムを使用します。120サイズフィルムの細軸版ですね、ですから使用に際しては、現在のブローニーフィルムを細軸スプールに巻き替えれば良いだけですので、これも簡単に使うことが出来ます。
 試写の結果ですが、一言で言って両機とも実に良く写ります。ただし、距離や光量をこのカメラのお仕着せに合わせてやる必要があります。
 そのお仕着せを守る限りでは実用十分な写真機ですね。もう少し茫洋とした写りを想像というか期待していたのですが、条件が揃うとコントラストや尖鋭度もすこぶる良くてキリッと締まった素晴らしい写真になっちゃいました。(笑)

2003.10.15


Kodak No.2 Brownie Model Fの作例です。

以下の写真、Agfa APXをND-76で標準現像
Canon D2400Uでフィルムを直接スキャニングした画像です。

1. 窓辺(手摺りまでは約2m、まだ苦しいですね。ちょっとした逆光でも凄いことになります。)

2. ハロウィン(モデルさんまで約5m、いい感じになりました。
左端のヨレはフィルムの平面が出ていなのかもしれません。)

3. 雨のやみ間(こうなると単レンズ、病みつきになりますね。)

 

Kodak Brownie Target Six-20の作例です。

以下の写真、Agfa APXをND-76で標準現像
Canon D2400Uでフィルムを直接スキャニングした画像です。

4. 埠頭-1(前回のプリモフレックスと同時に撮った絵です。左側は歪曲収差でしょうか。)

5. 埠頭-2(係留金具までは2mほど、絞り板を小穴にしていますが、まだ焦点が合いませんね。)

6.

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