山梨の狛犬

大月・八幡神社
生息地: 山梨県大月市初狩町下初狩

 いつも狛犬探索の時はそうですが、その日に決めた最遠の場所にまずは飛んで行きます。そしてそこから徐々に基地の有る場所(今回は日帰りなので戻る場所は自宅)へと戻りながら各所在地を巡ります。そうやって日没の時間切れまで頑張るわけですが、今回の甲斐路の探索ではこの大月・初狩が日没寸前ラストの捜索地になりました。

 もうJR中央本線初狩駅前についた時は5時を回っていて帰りのハイカーなどがゾクゾク集合してきているような状況。
 これは急がないと日没になっちゃう。田舎道、丘の上の神社なんて途中、道路灯なんてないだろうから無理すんの止めようかとおも思ったのですが、どうもこの古そうな街は「いい匂い」がしてきます。撮影がダメなら再訪の下見でもいいやという気分で丘の上を目指して脚を急ぎました。→

初狩・八幡神社の狛犬について
●狛犬としての仕事ぶり度 ★★(大鳥居の前後に新旧犬がそろってのお出迎えですから、これ以上のものはありません)
●狛犬としての個性度   ★★
(こんなの他でみたことない!)
●癒され指数       ★★★★(落涙寸前モノよ)
●思わず笑っちゃう度   ★★★★(海獣のようでもあるし、ナマズのようでも、あるしとにかく可笑しくて可愛い)
●奉納日 
不明
●作者名 〃
●撮影機材 駅前の絵以外は、さすがに銀塩では厳しい光量になってしまったので、
キヤノン・PS SX130 isを使用。

 



丘を登り詰め、参道へ踏み込んだ瞬間、上を見上げると
居た、居た、居た・・・・・!

急な丘登りで、ぜぇ〜ぜぇ〜はぁ〜はぁ〜とまだ息が落ち着かないのに
こんなワンコが出迎えてくれたら、さらにコ〜フンして
余計にぜぇ〜ぜぇ〜はぁ〜はぁ〜が高まります
首に巻いたしめ縄はまるでリードのように見えるじゃありませんか!
これほどシンプルに簡略化してあるのに
なんてイキイキした表情を造型化出来ちゃうのでしょ!!!
すばらしい想像力と造形力だなぁ〜。
リードから垂らした1本の御幣(ごへい)はまるでオシャレなネクタイだ。

後ろ姿もモッシリしていてとってもいい!
前足から腹、後ろ足にかけてのデッサンはエラくリアルですよ。
背中の立ち上がって行くラインからそのまま顔につながって
上向きの姿勢になっているところにこのワンコの
オリジナリティがありますね。
こんなの他では見たこと無い!


一応、狛犬でもあるので「獅子鼻」もちゃんと意識した痕跡があった。


残念ながら台座は無刻で、誕生日や作者の手掛かりは掴めません。
石の風化具合から推すと300年くらいは間違いなく過ごしているでしょうね。
まぁ〜しかし、ただ古けりゃいいと言うものではありませんが、
大昔の人々がモノを作る時の想像力や造形力と言うのは今のように『情報』が
簡単に得られませんから、感性だけがどんどん研ぎ澄まされるんですね。
そう言う意味では現代人の方が圧倒的に「人間力」が鈍化しているんじゃないでしょうか。

2011.7.4

上野原・佐田神社
生息地: 山梨県上野原市小沢4330

 市街地に住むわたしから見ると、もうかなりの山奥と言う感じがする環境でこの子たちはひっそりと暮らしていました。

 これは鳥居下から振り返って見た景色です。住居などももうパラパラという具合でじつに清々した場所にあります。
 こちらの一対はイヌと言うよりは猿ですね、どうもこの顔は・・・。で、しゃがんでいる子の相方は座像なんですよね。こりゃぁもうどうみてもお猿さんですね。こちらも背中を見ると文字が彫り込まれています。
   享保十八年 友清建之
   享和二年 新六再営之
 というようにも読めるのですが、そうだとすると最初は享保十八年(1733年)にここに奉納されたものですが、何かの理由で享和二年(1802年)にこの座像のお猿さんが先代さんに取って代わって「代役」を努めている、と言う意味になるのかしら?
 まあどちらにしても、この子達の表情がとっても素朴でワタシは多いに気に入ってしまいました。280年の風雪に耐えてきたこの顔がなんとも愛おしいのであります。

 お社自体はいかにも「村社」という感じのこじんまりした建物で、村の鎮守さまというのにふさわしいものです。
 一応そこもいつものようにグルっと一回り。
 と、お社の後ろ隅っこに腰をかがめて小さく小さくなっている子を見つけました。
 あっ、居たっ!この子が本来のペアの相方だったんじゃないの。そばに近寄って様子を見るとなるほど、首が落ちちゃってます。たぶん、1800年頃にこのあたりで大きな地震か富士山が爆発して噴石とかが落ちてきてその時に壊れちゃったのかもしれません。しかし、こうして例え境内の隅っこでも捨てられずに保管をして下さってよかった。顔が無いのでその表情は分かりませんでしたが、表の元気な子たちより一層可愛く、愛おしい・・・・・わたしは何度もその背中を撫でて彼の痛みを共有しようとしたのでありました。

佐田神社の狛猿について
●狛猿としての仕事ぶり度 (もう280歳ですからね、そろそろお仕事から解放してあげましょうね)
●狛犬としての個性度   
●癒され指数       ★★★★(穏やかさの讃え方がスゴいです、ホント、癒されました、ありがとう!)
●思わず笑っちゃう度   
●奉納日 
享保十八年(1733)
●作者名 不明
●撮影機材 Pentax Z50P

 




古像の特徴である背書きがこの子にもありました
最初の一文字が風化して読みにくいのですが
「當山王前」とも読めるのですが・・・・?

2011.6.8

甲府・国母熊野神社
生息地: 山梨県甲府市国母4-2-13

 山梨県には今となっては非常に貴重な「甲斐犬(かいけん)」という天然記念物に指定されている純粋和犬がいるが、狛犬の世界でも山梨は独自のスタイルを固持してきた「特区」なのかもしれない。まだ5、6社を訪ねたに過ぎないが、それでも見た瞬間にドッキンとするような、貴重なスタイルをした犬がポコポコと現われるのである。
 今回訪ねたこの「熊野神社」も正面参道にはフツウにありふれた平成建立の岡崎犬が仕事を受け持っていてボクらをガッカリさせるのであるが、拝殿のウラ側、本殿の階段脇を覗くとこんな個性的で可愛いハジメ犬がちょこんとお座りしていたりするのである。

 ちなみにこの熊野神社という名前がついているお社のご神体は「速玉男命(ハヤタマノオノミコト)」というカミサマ。このカミサマは「離縁の神」だ。
 ヤバい男に捕まっちゃった女や、ワガママ放題で手の付けられない女に悩んでいる男は、即、ご利益をもらいに行きなさい。キレイに別れられるから。
 相思相愛でいい感じのカップルがたまにその「ご利益」を知らずに参拝しちゃったりすると、近日中に別れるハメになるので気をつけること。(;>_<;)

国母・熊野神社の狛犬について
●狛犬としての仕事ぶり度 (出来ることならこれほどの「器量」なのでもっとオモテに出てきて欲しい)
●狛犬としての個性度   ★★
●癒され指数       ★★★★(スキ・スキ・ダイスキ)
●思わず笑っちゃう度   ★★★
●奉納日 
そばに近寄れないの残念ながら解らない
●作者名         〃
●撮影機材 Pentax Z50P

 



よ〜く探さないと見つけられないくらいの場所にある。
本殿自体が結構高い塀で囲まれていて覗きにくいことこの上ない!
覗いている恰好は不審者と同様のカタチになるので
ほかに参拝者などが居る場合には、彼らが退場するまで
待った方がいい、通報されるかもしれないから・・・・

シンプルで大胆な造形!
動物の「アイコン」として見ても
その優れたデザイン性に驚嘆する。

撮影となると、もうポジションが限られちゃって
どうにもならない。
しかし、この可愛さであるから何とかして
カメラに収めようと努力したのであるが・・・・

2011.6.27


日本最高齢犬に逢いに行く

念願だった日本で最古の誕生年月が証明されている600歳狛犬に会いに行こうと
2011年5月、GWの最後の日を狙ってバイクに跨がり出掛けてみました。

その生息地を前日にGoogleマップで見当をつけると、自宅からは約200km!
山梨県、甲府盆地を取り囲むカルデラ山輪の東南中腹あたり、久しぶりの遠っ走りだわ。
20万キロ近くを走り込んですっかりポンコツになってしまった我が愛車で幾つもの峠を
越えられるかいささかの不安はありましたが北海道の原野を走る訳じゃないので
遭難するようなことはないでしょと、タカをくくって朝8時に出発。
R16を突っ走り相模湖沿いの甲州街道を目指します。
GWの最終日なので下りの国道はガラガラ!
スイスイ気持ちの良いライディングで約1.5時間で甲州街道に出た。
この後はしゃにむに甲府まで突っ走るだけ。
途中、街道沿いに鳥居でも見つけたら休憩がてら「行き掛けの駄賃」も貰って行こう。

3、4カ所で駄賃を貰いつつ、約5時間走ってくるとようやく甲府へ・・・・
左側に首を振るとドスンと富士山の姿!
おぉ〜、フジサンがこんなに近くにあると「思えば遠くに来たもんだ」という感じ。

さて、この辺りの何処かを左に折れて甲府盆地の山懐に入り込んで行くのですが
もうこの先は地図が無いと判りませんので、本屋さんでバイクを止めて「山梨全図」をget。
うぅ〜ん、目指す生息地まではまだまだ相当に先の奥地です。
時計を見ると早くももうPM1:00、何とか3時までには辿り着きたい、がんばろっ。


いくつかの県道・市道は案内板や標識もあり、自分の現在地を認識していたのですが
やがて市道から山に沿った林道に入り、さらに軽4輪1台がようやっとの細い農道に・・・・
マズイ、ここに来て自分の位置が判らなくなって来ました!
道を尋ねようにもまわりは葡萄畑ばかりで人なんてぜんぜんすれ違わないし。

完全に迷ってしまった!
仕方が無いのでここは先に突っ込まないで人家の有る所まで後退して道の確認をしよう。
10分ほど農道を戻ると案配良くご婦人が洗濯物を取り込んでいるところに出くわしたので
神社の所在を聞いてみた。

ご婦人はとっても丁寧に教えてくださいましたが、案の定、
土地者以外が入り込めるような場所ではなく非常に複雑な経路だった。

で、ようやく参道入口に辿り着いたのが道に迷ってしまったせいもあって午後の3時。
出発から7時間でようやくご対面できる。
なんかドキドキしますね、こういう時って。

山梨県西八代郡市川三郷町大塚4277 村社 熊野神社
ここに居るんです、日本最高齢のワンコが!
くわぁ〜〜、緊張する、逢うぞ、逢えるぞ、触れるぞ・・・・
参道の鳥居をくぐると道は右へドッグレッグしなら登って行きます。
おぉ〜、見えて来ました、仁王門があるの?
こんな(と言っては失礼ですが)寒村の神社としては大層立派な門ですよ。

門口の先、階段の上に居ました、居ました、狛犬です。
けっこうデカイですよ、もっと小型の犬と予想していました。

えっ、えっ、えっ、コレ、どうみても近代犬ですね、違いますね、この子達じゃなさそうです。

やっぱり台座の刻字を読むと「朝鮮帰郷 昭和四年十一月三日」と記されていました。
では、末社かそれともウラ庭で静かに息づいているのかしらと境内をグルリ一周しましたが、
あれっ、あれっ、どこにもそれらしきジジババ犬なんていませんよ???
さて、根本的に場所を間違えて来てしまったのか・・・・
もう一度、書き留めて来た住所を確認しましたがこの村にはここ以外に
「熊野神社」って他にはありません。
しばし、お庭の端っこに立ってお社全体を眺めようとした時
ヘンな位置にヘンな看板が立っているのが見えました。
近づいて読んでみるとこんなことが記してあります。

やっぱりココに間違いない!しかし「本殿の前」ですと?
そうかっ、判った、拝殿や末社じゃなくて
「本殿」の前に居たのね。
そうそう、古犬の場合、本殿前って結構よくあることなんですね。
いわゆる「神前狛犬」の名残である由緒ある置き方ですね。
やっぱり、緊張と興奮のせいか、そんなことがあることをすっかり忘れていました。


で早速、本殿護りの柵越しに中を覗いてみると・・・・

居たァ〜〜!居ました、居ました、一目で大年寄りと判る超ハジメ犬!
さすがに県の「文化財」になっているんですね。
そのためか、盗難・悪戯除けの鉄檻がかぶせられちゃっている。
ちょっと可哀想だけど、本邦最高齢ともなればいた仕方ないかな。
しかし、この右前肢の補修の仕方、こりゃなんてこった!
その辺の木っ端石をあてがっただけじゃないの、もう少しやり方があるんじゃないの。
愛情を感じないのよね、こういうやり方は・・・・

ほら、ひどいでしょ、このやり方は!

んじゃぁ、もう一方の吽くんの方も見てみましょうね。

おぉ〜、吽くんはヒビが入っていますが五体満足ですね。
よかった、よかった・・・・・

この子のお腹の部分に「応永十二年(1405年)二月一日」というお誕生日が記されているらしいのですが、
鉄檻が邪魔して私自身では確認することが出来ませんでした。


オッポも立派に三つ割れで、先端は巻き毛になってます。
うぅ〜〜ん、さすがの貫禄ですね、おん歳ナンと606歳ですよ!
こんな超ハジメくんですが、この時代からもう尾には「巻き毛」の表現が確立していたんですね。
もう一つ驚いたのが、腹下をちゃんとくり抜いてある彫刻の仕方。
その後のワンコでも、脚のレリーフだけで腹下がくり抜かれていない犬は
ゴマンと居るのです。これは格式も彫刻技量も甚だ高いです。

更に仔細に見ると相当に風化が進んで入るものの身体全体に「朱」が塗られていたこともハッキリ見て取れます。
そして、アゴ下部分の巻き毛レリーフには墨色の塗色も!
ということは、このジジババ達は参道狛犬ではなく、最初から屋根の下に居た
神殿狛犬「風」だったのかも知れませんね。


いやぁ〜、とにもかくにも念願の最高齢犬とやっと逢えました。
素朴で古代犬の特徴をすべて持っているじつに愛らしいワンコでした。
もちろん、お別れ際にカラダ中を触って彼らの更なる長命を祈願して来たことは言う迄もありません。

記事中写真:カラーはCanon SX130 IS、
モノクロはKyocera 230AF (35-70/f3.3)を使用しています。

2011.5.11

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