神奈川の子取り・玉取ワンコ


阿吽とも、あるいは阿吽のどちらかが、子供を連れていることがあります。
これをギョ〜カイでは「子取り」と呼んでいるようです。
また前足の下に玉を踏んでいるもの居ますがこれを「玉取り」と呼ぶんだそうです。
このスタイルはどうも明治以降の近代のものに多く見られるようですが、
玉取りはともかく、子取りのワンコにはとっても愛らしく
可愛いものがたくさん居ますので、
ここではそれだけをピックアップして特集してみることにしました。

折本町・淡島神社
生息地: 神奈川県横浜市都筑区折本町

 「日本中に数少ない女性の神さま」というキャッチフレーズについフラフラと足下を拠らせながらお参りに行って来た神社です。でもって、折角ならいいワンコが居れば尚のこと最高なんだけどと思いつつ、参道の階段をヨタヨタ上がっていくと、おぉ〜、拝殿前に相当立派な「親子江戸」が鎮座しているではありませんか!
 早速、仔細に観察したいキモチをグッと堪えて、まずはオンナのカミサマに賽銭を投入しながらご挨拶と本日ワンコに引き合わせて頂いた御礼をシッカリ述べます。
 こちらの「江戸犬」はなんと言ってもシッポがスゴイ!長さは充分、そしてウェーブには最上の品格がありますね。これはかなりのノミの使い手の作と見ました。台座の裏側に回って刻字を確認してみましょう。下の写真の通り「嘉永二年二月」の誕生日ですね。嘉永二年は1849年ですから幕末の頃に産まれてきたんですね、今年で161歳になります。
 で、もう一方の台座には「石工 七治良」の銘が・・・・、このシチジロウさんという職人さんの作品はここで初めて見ましたが、相当に腕の立つ人ですね。阿吽とも像全体のバランスがご覧のようにとってもキレイです。そして、特に吽パパが押さえ込んでいるヤンチャ息子のパパを見上げる表情が圧巻です。うぅ〜ん、なんてカワイイんでしょ、やっぱり「子取り」は癒されますね。あっ、そうだっ、すっかりワンコ達に夢中でコチラの「オンナのカミサマ」の正体を探ってくるのをケロッと忘れちゃいました、きっと「淡島千景」さんのような美人のカミサマには違いないんだと思います、引用が古すぎてゴメンナサイ。

淡島神社の狛犬について
●狛犬としての仕事ぶり度 (夫婦で子守をしつつも「江戸犬」の特長である首曲げをしているので業務は完璧ですね)
●狛犬としての個性度   (削りの出来が良すぎて、逆に子取りの個性は没していますね)
●癒され指数       ★★★★(モンク無く好き、これは・・・

●思わず笑っちゃう度   (ヤンチャ坊主の表情が○)
●奉納日 嘉永二年二月
●作者名 七治良
●撮影機材 Minolta SR505

 



2010.11.11

座間・日枝大神
生息地:神奈川県座間市四ッ谷479番

 こちらは反対に二頭ともが「子取り」の例。
 二人の子持ちなので夫婦でそれぞれ子供の面倒を見ています。この石工さんの腕は相当に立つようで雌雄がはっきり彫り分けられています。このような実在しない唐獅子という動物に於いて性別を明確に彫り分けるのはただただ石工さんのセンスに依るところで、その意味でもこれは傑作ではないかと思っています。

日枝大神の狛犬について
●奉納日 明治三年二月
●作者名 松仙○○(下の二文字が欠けてしまって判読不能)
●撮影機材 ライカM4-2 (Hexcer50/3.5)



こちら「阿」を担当してママさん
一目で「女性」と判りますでしょ


ママに寄り添い甘える小獅子


こちらがお父さん、見比べると髪の毛(?)の表現の仕方がまったく違います


子供もひっくり返して押さえつけ、スパルタ教育の最中ですね
子供の手がそこから抜け出そうと頑張ってます
最近では、一番気に入ってしまった親子像のブッ犬でした

2009.7.6

小机・住吉神社
生息地:神奈川県横浜市港北区小机町110

 ここは町の外れにあるごく普通の小さな神社なのですが、どういう訳だか狛犬だけはおよそここの規模にそぐわないほど大きくて立派なのです。ご覧下さい、その大きさたるや台座から大きくはみ出してしまうほどで、しかも彫刻としての出来が素晴らしくよろしい!
 これだけ大きいのにさらに、夫婦で各2頭、計4人の子持ち!
 なので、ここには合計で6頭のワンコが参拝者をお守りしてくれています。

住吉神社の狛犬について
●狛犬としての仕事ぶり度 (一応、仕事はしているみたいなんだけど、これだけ子供がいたんじゃどうしょ〜もないでしょ)
●狛犬としての個性度   ★★★(子持ちブッ犬はかなり見てきましたが、これはそれぞれの仕草や位置、バランスなど見事なほどに完成度が高いです!)

●癒され指数       ★★(どうしたって、子供には適いません、親の方も標準的な狛犬なのですが、やっぱり表情に豊かな愛情がちゃんと表現されていて、見事に見るものの心を癒してくれています)

●思わず笑っちゃう度   (さすがに4匹の子供達を見たら笑えますよ)
●奉納日 明治39年11月
●作者名 これほどの傑作なのに銘が刻んでありません。ぜひ、作者を知りたい像の一つです。
●撮影機材 キョーセラ230AF (AF50/1.8)



この写真ではよく分かりませんが、原物はとにかくデッカイ!


阿クンの方は顔の面積がデカイので、たぶん父親でしょうね
背中に1頭、足下に玉遊びをしている子供を抱えています


こちら、吽さんの方はお顔がとっても穏やかなので母親でしょう
やはり背中と前に甘えん坊が2頭います
それにしても、この作者のデッサン力と仕上げの細かさは
群を抜いています、場所がやや不便なところにあるのですが
ついででもありましたら、ぜひ立ち寄って実物をご覧下さいませ

2009.7.6

新百合ヶ丘・十二神社
生息地:神奈川県川崎市麻生区万福寺3丁目

 子獅子と絡んでいる狛犬にはどうにも弱いのです。特にこの十二神社のブッ犬は子供がママと瓜二つの顔立ちで大笑い!まさに親の因果が子に報いの典型なのでありますね。

十二神社の狛犬について
●狛犬としての仕事ぶり度 (夫婦で子育て中なので、本来の警護の仕事はどうしたってなおざりになりますもの)
●狛犬としての個性度   ★★★(次女の存在がとにかく大きい!)

●癒され指数       ★★(子供が父母それぞれ付いて二頭居ますからネェ〜、それはそれは可愛いものですよ)
●思わず笑っちゃう度   (やっぱりママそっくりな次女の顔!)
●奉納日 大正五年四月三日
●作者名 登戸・吉澤耕石
●撮影機材 キョーセラ230AF (AF50/1.8)



この石工さんの仕事は見事です!ママの腕の中にあるこの次女と
ママの胸回りは中空で抜けていて、それもすごくスムースな仕上げが
施されています。また、口の中も歯が一本一本独立して植わっていたり
舌の細工も奥からしっかり削り込んであってまったく手を抜いている
ところが見あたりません。


親のDNAがシッカリと!
ママとおんなじ顔した次女


こちらはパパに甘えっきりの長女
見事なまでのアットホーム狛犬たちでした

2009.7.6

海老名・有鹿(ありか)神社
生息地:神奈川県海老名市上郷2791

 こちらはいかにも「村の鎮守さま」という風情のこぢんまりとした佇まいのヤシロで大袈裟に目立つような神社ではないのですが相模地方では1300年以上の歴史をもつ当地最古の神社がこちらなのであります。
 そういう由緒ゆえか立派な完成度の狛犬が本殿前に2対いて、参拝者を護ってくれています。
 両対とも味のある逸品なのですが、ボクのお気に入りは本殿前の奥にいる子取りのワンコで、この子供がママのシッポでじゃれ遊んでいる姿がとっても可愛いのであります。


有鹿神社・奥にいる狛犬について
●狛犬としての仕事ぶり度 (極々標準的、可もなく不可もなく・・・)
●狛犬としての個性度   ★★★(これまた極々標準的、可もなく不可もなくなのですが、石工さんのノミさばきが見事で有機的な造形に溢れている!)
●癒され指数       ★★(ママもシッポで遊ぶ我が子に目一杯の愛情で応えています、いいなぁ〜こういうの)
●思わず笑っちゃう度   (笑いの要素は手前の玉取パパのお顔にあります、取って付けたような団子鼻はまるでマンガのようで可笑しかった、こちらなら★★
●奉納日 大正八年七月
●作者名 ーーー
●撮影機材 キヤノン AV-1 (50/1.8)


奥にいる1対

手前側の1対

この鼻は笑えます

ブラインドになっている部分もまったく手抜きの無い仕事ぶり
見事なノミさばきで親子の愛情を表現されています

2009.8.8

厚木・金田神社
生息地:神奈川県厚木市金田172番

 こちらは昭和初期の狛犬で歴史的にはかなり浅いものですけど、子取りブッ犬の方に良い「味」を持っていますので、ここで採り上げておこうと思います。


金田神社の狛犬について
●狛犬としての仕事ぶり度 (極々標準的、可もなく不可もなく・・・)
●狛犬としての個性度   ★★(子取りの母子像の方は、母の顔の表情や子の戯れ具合がとても愛情に溢れていて、これを彫った石工さんのノミの冴えが素晴らしい!
●癒され指数       ★★(コトバは要らないよい表情・・・)
●思わず笑っちゃう度   (子供のジャレ具合がやや微笑ましいかな)
●奉納日 昭和五年七月
●作者名 秋元信太郎
●撮影機材 ミノルタX-7(ロッコール35-105)

 奉納年とか石工名はメモしたものを紛失したりしますので、一緒に撮影しちゃうのが一番いい方法かもしれません。


道路に面した参道入り口に居ます

慈愛溢れる母の表情が気に入っています



きっと元気に育つでしょうね、この子は・・・・

2009.8.26

黒川・汁守(しるもり)神社
生息地:神奈川県川崎市麻生区はるひ野2丁目

 こちらは夫婦で「子取り」をやっています。阿ママは胸の前に2頭の子供を置いて、そのうちの1頭はママの指をくわえちゃうという芸の細かさで、この可愛らしさには「これが石の像かっ!?」って思うほどのリアルさがあります。
 そして、吽パパの方も長男らしき悪戯坊主を前に置いて、正面を見据えながら立派に「お仕事」をこなしているというアットホームなファミリーワンコたち。
 とくにここの狛犬で目を惹かれるのが、3頭いる子供達にちゃんとした「大きさの違い」をしっかり表現していることで、この石工さんの観察力というか表現力には舌を巻いてしまいます


汁守神社の狛犬について
●狛犬としての仕事ぶり度 (子育てしながらも自分の仕事を疎かにしていない真面目さ!ぼくらでもこんなチビが3人もいたら家の中、メチャメチャになりますからね、実際の話が・・・・)
●狛犬としての個性度   (次男坊の「指くわえ」に尽きますね、ここのワンコの場合は
●癒され指数       ★★(やっぱり子取りはどうしても高得点になってしまいます)
●思わず笑っちゃう度   (子供のジャレ具合がやや微笑ましいかな)
●奉納日 明治十五年十二月
●作者名 ーーー
●撮影機材 Panasonic FZ-30

 

 奉納年とか石工名はメモしたものを紛失したりしますので、一緒に撮影しちゃうのが一番いい方法かもしれません。


そろそろ130年近くを経過しようとしているワンコたちですが
大きな傷や割れもなく、保存状態は良い方の狛犬です

細密度も充分で、腕の立つ石工さんの仕事ということは一目で分かります



この持ち上げたパパの手の「表情」がなんとも・・・・

2009.8.31

海老名・貴日土神社
生息地:神奈川県海老名市中河内1743番

 この神社は海老名台地が南で下り終える中腹あたりにあって、むかしの村道から脇に外れるように位置しているので、部外者には見つけるのにやや苦労します。台地へ登って行く途中の村道に右のような標柱が1本あるだけなので、これを見逃してしまうと相当先の人家まで行ってから所在地を確かめる以外に方法がなくなってしまいます。こういうことを書いているということは、私自身がそういう目に有ったということなのですが・・・・。

 さて、問題の狛犬ですがこちらのワンコは彫りが深く精密で、またそのディテールがたいへん魅力的なのです。阿吽の写真をよくご覧下さい。まず目につくのは巻き毛の突起のシッカリとして高いこと、高いこと!これほどクリンクリンさせた表現は他であまり見ることがありません。また、球男くんが手を置いている球の丸さのなんと正確なこと。球取りワンコもいろいろ見てきましたが、ほぼ正円というのにはなかなかお目にかかれません。
 この1対はまた、両方が「阿」像になっていて阿吽を形成していないのですが、これもまた珍しい形式で渡来モノにはあることなのですが、和式としては
珍なるタイプですね。
 実は、この「貴日土神社」にはこうして掲載に至までに3回通いました。それというのもどういう訳だかとっても光線条件の難しい場所に置いてあってそれまでの2回がやたらとコントラストのきつい絵になってしまい、気に入らなかったのです。で、今回もまたかなりコントラストが強めではあるのですが、前回よりマシということで掲載することにいたしました。なんでそこまで拘ったかというと、この3枚目にあるように「子取り」の母犬がたいそう気に入っているからなのであります。
 どうです、子供の姿勢と表情が可愛くて味もありますでしょ、「あらっ、こないだのオジチャン、また来てくれたの」って言われているようです・・・・。巻き毛カールがクリンクリンのママの手の置き方も優しいし、これは癒され率が高いワンコですよ。

 しかし、ご覧のように「融け」は至って少ないものの「割れ」がここまで激しくなっています。ここまで深く精密に彫り上げるのは、柔らかい堆積岩を使いたくなる石工さんのことは理解できるのですが、やっぱり狛犬には堅い変成岩を使ってもらいたいですね。

貴日土神社の狛犬について
●狛犬としての仕事ぶり度 ★★
●狛犬としての個性度   (両方が「阿像」である点と巻き毛の「高さ」!
●癒され指数       (この仔の表情一点のみで満点イケます!)
●思わず笑っちゃう度   この仔と対峙してみてください、絶対に笑みが出ること保証致します)
●奉納日 大正十五年四月十日
●作者名 前場さん
●撮影機材 オリンパスSP


この標柱案内が目印

台地斜面の途中を切り開いたような土地にあります

大正15年製としては、割れの痛みが激しいです。
次の地震が来たら保たないかも・・・・。

2009.11.30

梶ヶ谷・神明社
生息地:神奈川県川崎市高津区梶ヶ谷4-13-6

 ここの犬たちが座っている台座には「大正十二年二月吉日」のしるしが残されていました。あの関東大震災が大正十二年九月一日に起きていますので、彼らはそのすさまじい恐怖を味わっているんですねぇ。
 右の写真の阿かぁさんをよく見て下さい、子供を必死で抱えてまるで地震の恐怖から我が子を護っているように見えて仕方がありません。相模湾北西沖80kmを震源として発生したマグニチュード7.9の大地震による災害で千葉・茨城から静岡県東部までの広い範囲に甚大な被害をもたらし、14万人以上の死者行方不明者が出てしまったんですね、怖いナァ〜、地震は・・・・。
 それにしてもこの親子はよくその激震に耐えて、ほぼ完璧というか何処にも破損が無くきれいに残っています。ただ、誕生から90年を経て、その躯には全体にコケやシミで覆い尽くされ、凄みさえある姿になっていますがそれが返って「ナマの生き物」のように作用して今では活き活きとした姿となって見えます。
 モノクロだと色が分からないのですが、現物は白や緑や小豆色で相当にカラフルです。そのグシャッとしたお顔の特長や生々しい原色系の色を纏っていることで、獅子とか犬と言うより、南洋の島で平和に暮らしている「爬虫類」のような生き物にも見えてきました。

神明の狛犬について
●狛犬としての仕事ぶり度 ★★
●狛犬としての個性度   (このベシャッとしたお顔は他ではほとんどお見掛けしない作風です
●癒され指数       (やっぱり子を護ろうとする右手1本で決まっちゃいましたね、ココは!)
●思わず笑っちゃう度   爬虫類ファンには、イケていると思うのですが)
●奉納日 大正十五年四月十日
●作者名 小俣さん
●撮影機材 ミノルタα5(35-105mm)Tmax400+D76


右腕1本で子をかばう姿がとても印象的なワンコたちです

パパは相変わらず子育て不熱心、毎日まりで遊んでます

よーく見るとものすごく精密で几帳面な仕事を
されていますね、この小俣さんという人は・・・。
ややつぶれ加減の顔相からはどうしても爬虫類を
連想してしまいます。

2010.1.11

三浦市 諸磯神明社
生息地:神奈川県三浦市三崎町諸磯1872番

 これは2009.9.27に「ナンマイダーさま」からお寄せ下さいました「諸磯新明社」の項を補足するものです。ここの狛犬達の圧巻ぶりはなんと言ってもその子供達の姿勢と表情にありますので、ここで少し近接で撮った絵で補完をしておきます。この犬たちの沿革や詳しい説明はナンマイダーさまのページのコチラの項をまずはご覧下さいませ。

●撮影機材 ミノルタα303(35-105mm)Tmax400+D76


相当な達筆筆跡で「佐島石工・上田○○」と刻まれています。
現在でも佐島で営業されている上田石材店さまのご縁者さまと思われます。


左の吽像に付いている子供は極端なほどの極小のサイズです!
きっと、誕生したばかり小犬をイメージされているのでしょうね

まだ犬だか猿だか分からないほどの生まれたてを描写しています
あまりにも可愛過ぎる!

こちらが阿ママに付いている子
これもかなり小さいです
左耳から背中に掛けての透き、両腕の間の透き等々
極端にデリケートな仕事で圧倒されます
この子の右腕の細さなんて人間の子供小指ほどしか
ありません、すごい・スゴイ・凄い!

2010.1.27

川崎市 橘樹(たちばな)神社
生息地:神奈川県川崎市高津区子母口122

 コマイヌっていうくらいですから、犬そのもので何が悪いんだと言わんばかりの堂々たる犬ぶりの狛犬が、ここ川崎の「橘樹神社」には長いこと住み着いています。
 明治十三年生まれで、誕生からけっこうな月日が経っちゃって震災・戦災の傷も生々しいですが、依然として狛犬業務を全うしています。
 このワンコ達の作者は「内藤留五郎」という石工さんで、この川崎市内ではいくつもの作品を残している人ですが、他のどれもが純正統派のいわゆる狛犬らしい狛犬作品を彫っています。しかし、この橘樹神社のモノのみ、他とは違ってマンマ犬の姿として石を刻んでいます。果たして、この神社の仕事に掛かる際にどんな心境でいたことなのか、あるいは願主に強く懇願されてこの犬姿を産み出したのか、そのへんの事情がとても気に掛かります。
 像の方はご覧の通り、夫婦で一人づつの子供を抱えていて、とても微笑ましい光景をモチーフにしています。ほとんどの夫婦狛犬がそうであるように、ここでも阿像が母親、吽像に父親と、そのセオリーはしっかりと守られていました。
 細工としては、全体に丸みを帯びたしっかりとしたディテールを持たせながら、子供と自分とをしっかり切り離して繊細な透きを刻んでいます。また、吽像の子供の脚が台座からこぼれ出ている描写など、その犬姿とともにものすごいリアリティーがありました。

 ここに紹介した明治犬たちは、ご覧の通りの痛みぶりで、現在の主座には新たな「二代目」が跡目を継いでいるのですが、これが先代をまんまコピーしたもので、こういう継承の仕方って、狛犬の場合はほとんどしませんので、そういう意味でもこの神社のワンコ達は貴重な存在であると思います。

橘樹神社の狛犬について
●狛犬としての仕事ぶり度 (「優しさ」に溢れすぎています!私個人として大好きなタイプですが・・・)
●狛犬としての個性度   ★★(新が旧を模していると言う点でも非常に珍しい存在)

●癒され指数       ★★(もろに犬なので、その優しさたるや100点満点です)
●思わず笑っちゃう度   (丸々と太った子供のお顔が嬉しい)
●奉納日 明治十三年九月
●作者名 内藤留五郎
●撮影機材 ミノルタ・α5


ほぼ130歳にもなる老犬で、痛みもそれなりに
きていますが、氏子さん達が今でも大切に修復
して可愛がっておられます。

ジックリ見ると、この留五郎さんの力量ぶりがよく分かります

これが現在の拝殿にいる新ワンコ
取材に行ったときは丁度彼らのデート中で
悪いことしちゃいました
ワコ〜ド諸君、お邪魔してゴメンね

新ワンコは平成二年の生まれでまだピッカピカ
それでも、その姿はオリジナルをしっかり模していて
実に好感が持てます

2010.2.10

茅ヶ崎市 八雲神社
生息地:神奈川県茅ケ崎市南湖4ー4ー29

 これを「子取り」のカテゴリーに入れてもいいのやら迷いましたが、やっぱり子供がテーマのメインになっていることには変わりないので、これからも「獅子山」で子供が居た場合には、この欄でご紹介していこうと思います。
 この親子、正直に申し上げてノミの冴えはそれほどでもないのですが、じつにホッとするようなアットホーム感が充満しているんですね。参拝の人はもちろん、通り掛かりの人にさえその温かさは充分に伝わるはずです。参道狛犬には邪気除けとかいろんな意味を持たせて設置させるものですが、この親子のように人々を幸せな気持ちに導くのもその役目の一つなのだと思います。
 石像自体は昭和五年製ということもあって地肌はまだまだ綺麗です。私は狛犬を見る際に「古さ」にはあまり重きを置きません。その個性や作りが大切で新旧などはどうでもいいのです。どんなものでもその当時の石工さんが精魂込めたことには変わりはありませんからね。むしろ、昭和の後半に中国から大量に押し寄せてきた岡崎犬に対抗して、その時代、オリジナリティを発揮した国産犬や平成犬のいいヤツに出会えると興奮の度合いは一気に高まります。

八雲神社の狛犬について
●狛犬としての仕事ぶり度 ★★(下の写真でお分かりのように結構スケールが大きいのです)
●狛犬としての個性度   ★★★(獅子山って、その性格から厳格・方正なものが多いのですが、ここのはとっても「親しみ」感に溢れている)
●癒され指数       ★★(よちよち這い上がってくる子の姿、もう、眼から涙が溢れます、こういうのに一番弱い!)
●思わず笑っちゃう度   (パパの応援顔!)
●奉納日 昭和五年三月十五日
●作者名 不明
●撮影機材 Panasonic FZ30

ガンバレ、子ワンコ、ママの所まではもう少しだ!

2010.3.19

平塚市 春日神社
生息地: 神奈川県平塚市平塚4丁目18−1

 親子4人がそれぞれで、なかなか良い風情を作っているんです、ここの狛犬達は・・・。で、台座の裏に彫られた出生書きを見て、ちょっとビックリしました。この子達、なんと直線で50キロも離れたお江戸のど真ん中から来た、江戸っ子犬だったのです。
 江戸の天保年間のことですから、陸路じゃ無理、きっと船に乗せられて来たんだろうと推測できますが、それにしてもかなりな大型犬なので、そこそこ難儀をしてここまで旅をしてきたのではないでしょうか。
 石工さんの名前が「井筒屋千太郎」ですと!
 いかにも粋でいなせな良い男風・・・。それもそのハズで、この人が暮らしていた「江戸高砂町河岸」とは、江戸時代に元吉原と呼ばれていた遊女街だったところ。高砂町・新和泉町・難波町・住吉町の4町で色町を形成していたんですね。明暦の大火(振り袖火事)のときにすべてが燃えちゃって、その後にこの色町はそっくり浅草の浅草寺裏に引っ越して今のような「吉原」になったってぇわけです。

春日神社の狛犬について
●狛犬としての仕事ぶり度 (けっこう大型なので押し出しは効いてます)
●狛犬としての個性度   ★★
●癒され指数       ★★(こどもが二人も居たら、もうそれだけで5点)
●思わず笑っちゃう度   
●奉納日 天保十四年八月(1843年)
●作者名 江戸高砂町河岸・井筒屋千太郎
●撮影機材 Canon QL-17 GIII


豊満な乳房を独り占めにしている女の子。
後ろ足のたたみ方など、この千太郎という人、巧いですね。


父親の方の腹下の透かし方も相当な技巧を見せています。
相当に腕のあった職人だったことが分かります。


左上のピンク線で囲ったところが高砂町です。
そこを取り囲む新和泉町・難波町・住吉町の4町あたりが
もともとの江戸遊郭でした。
このあたり、今でもその風情が少し残ってますね。
右から湾曲している川は隅田川(大川)です。


こんな水路を辿って、平塚まで運ばれたのでは
と、推測してみました。

2010.4.3

平塚市 春日神社
生息地: 神奈川県平塚市平塚4-18-1

 この神社のある場所は旧東海道と現在の国道1号線との丁度中間くらいのところにあります。この東海道に限らず昔の大街道沿いには古い神社が道沿いに多くありますね。で、そういうお宮では狛犬も古いものが多いし、また、格式が高そうな所も多くワンコたちもひと味違ったものが多く見られますよね。
 今回の平塚・春日神社では天保十四年生という166歳のワンコたちと出会えることが出来ました。江戸末期の作ですがシチュエーションやポーズはもうすっかり洗練されていて、見ようによっては昭和初期の作品と見間違うほどの出来の良さでした。

春日神社の狛犬について
●狛犬としての仕事ぶり度 (設置場所も拝殿正面の一等地。そして、4匹でのボリュームあるお出迎えなので、いやでも目立ちます)
●狛犬としての個性度   ★★(子取りのスタイルとして珍しいものではないのですが、全体の空気感が素晴らしくて魅入ってしまうほどです)
●癒され指数       ★★(ご覧になれば
ね・・・)
●思わず笑っちゃう度   (やっぱりオッパイちゅぅ〜ちゅぅは・・・)
●奉納日 天保十四年四月
●作者名 井筒屋千太郎
●撮影機材 Canonet QL-17(レストア後の試写を兼ねて)

石工 井筒屋千太郎ですと!
どんなにいい男なんだろう・・・・?

 


夫婦共に子守をしている4人家族です
安産に御利益がある神さまがお奉りしてあるらしく
その趣旨に添った狛犬達です。

吽パパは長男を・・・
子どもの手の置き場や口元からペロッと出した
小さな舌など、この石工さんの観察眼は強烈です


阿ママの乳房に夢中の末娘
授乳ワンコはずいぶん見てきましたが
このママの愛情溢れる左手の気遣い加減は素晴らしい!
やはりこの石工さんの造形センスは並じゃないですね

2010.10.10

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