Beauty 35 Super

ビューティフルじゃないビューティ

 このビューティ35スーパーは、JFC会でのお友達、亜哉さんが運営しているH.P.の作例を見て驚嘆し、一目惚れをしたカメラで、亜哉さんがカラーで写された写真は、勿論ご本人の腕によるところが大きいのだが、清々しい発色で線の細い実に精緻な描写で、それを見た私は大いに興奮した。
 せめて同じカメラを使えば亜哉さんと同じような写 真が撮れるかもしれない、と拙速に考えた私は数軒の中古カメラ店を見て回ったが、このマイナーなカメラに巡り会うことが出来ず、半ば諦めていたのだが、念ずれば通 ずのごとくネットオークションでこのカメラを発見し、入手する事が出来た。
 このときは私の欲しいカメラ・ナンバーワンにノミネートされ、喉から手が出るほど欲しかっただけに状態は二の次で「BEAUTY カメラ」という出品名を発見した喜びで頭に血が上ってしまい、しゃにむに落札したのだが、出品者は別に中古カメラマニアなどではなく、ただ家に昔からあり、とうの昔から使わなくなったので売りに出した風な個体で相当あちこち痛んでいた。 それは至極当然でごく普通の家庭で平均的な使われ方をされ製造後50年を経てなおピカピカでいられるわけがない。
 まず、革ケースがホロホロ(ボロボロの入力ミスではなく、ほとんど革ケースのミイラ状態で乾燥して風化が進行し開け閉めするごとにホロホロとちぎれてしまう。 しかし、還ってこのことが後に幸いすることになる)で、この先が心配だ。肝心の機体は案の定、かなり煤けていてファインダーを覗いてみると距離計の二重像が全く消滅していてピント合わせが出来ない。
 過去にも二重像に障害のあるカメラは幾度か再生した経験はあるが、それらは像が薄くて見えづらかったり、上下左右のズレだったりと機能していることは分かったので何とかなったが、今回はまったく素通 し状態で、もしかしてハーフミラーの欠落か欠損ではと心配になってきた。
 更に見ていくと巻き上げレバーを操作してもフィルムカウンターが一向に進んでいかない。しかし奇跡的に絞り羽やシャッターは実に快調で1秒のスローも正確に作動している。
 おまけに肝心のレンズ群は曇りやカビなどもなく非常にクリアーだった。たまたま前オーナーが湿度の低い環境で保管して置いたための幸運だったのかもしれない。その分、前述の皮ケースがホロホロになってしまたのではないかな。
 これらのトラブルの再生に関しては、距離計二重像の消失は欠落や欠品ではなく単にミラーの蒸着剥離で、JFC会の皆さんのお力を拝借して自動車用品のウインドゥフィルム転用で解決。
 フィルムカウンターは数字が刻まれた円盤を回し送るためのギアが損耗していて、これは要ギア部品のため機能回復は困難と判断、再生は断念。
 まあ、最後のコマまでくれば巻き上がらなくなるので、それを目安にすることとしよう。
 その他は、フィルム室の遮光の再生と各機械部分の清掃と注油を施して取りあえず試写 をしてみることにしよう。
 比較的簡単に整備が終了したので、このカメラをもう少し詳しく見てみよう。
 この稿のタイトルを「Beauty 35 Super」と名付けたが、実は本当のところ私にはこのカメラの名称が判らない。何故ならば、ボディのどこを探しても正面に刻印されたBEAUTYという文字とシリアルナンバーの刻印以外に文字が見あたらない。
 通常カメラには常識的に表示されている製造国名すらも見あたらない。
 前述の茶色い革ケースも全く同様だ。オークションでの出品者も確か「ビューティカメラ」としてあった。従って稿のタイトル「BEAUTY 35 SUPER」は亜哉さんからの全くの受け売りで何とも心許ない。
 最初に手にしたときの第一印象は、50年代の国産カメラとしては、非常に小さいなぁと思った。私の手の平に乗せても指先が充分余る。それもそのはずで、計測してみると左右幅が128mmしかない。実にコンパクトでかわいい。
 それにしてもこのカメラのデザインは、「BEAUTY」という流麗で女性的なイメージとはほど遠く、四角四面 ・真面目一辺倒の石部堅吉といったふうで、重厚感すら漂い、およそビューティとは言い難い。
 輸出を意識してのことなのか、何が何でも横文字使いで欧米人に媚びたかは定かではないが、デザインとネーミングのちぐはぐさが相当かけ離れていて面白い。
 ボディを真上から俯瞰すると、左右対称の12角形で構成されていて構えたときのホールド感は小型の割には悪くない。ただピント合わせが鏡胴のフォーカスリングを掴んで回す方式ではなく、鏡胴下に出っ張った半円形の小さなボッチを指で摘んで左右に動かすやり方で、これがチト使い辛い。調整幅も約90度程でこの幅で最短から無限遠を合わせるのだからかなり微妙な操作を強いられる。それでも、ヘリコイドは直進式になっていて肝心なところはちゃんとしているなぁと思う。
 絞り環と速度環はギザギザの加工が施された1ミリ位の薄さのリングで両リングの間隔は6ミリしかないのだが、よく観察してみると手前の速度環が極ほんのわずか径を小さくしてある。そのことで両リングが狭い間隔で並んでいるにもかかわらず、絞り環を操作しても速度環を一緒に回してしまうことが無いような配慮がされている。
 このようなほんの小さな設計の心遣いを発見すると、50年も前に白熱電灯の下で連夜の残業をしながら一生懸命製図板に向かって線を引いていただろう設計者のセンスを感じるし、どんな人が設計したのだろうかと意味のない想像を膨らませたりして楽しんでしまう。
 このカメラに限らず、50年代中盤から60年代あたりのカメラは、ドイツカメラの模倣から多少脱却して、遠慮がちだが、いくらかのオリジナリティがあり、モノとしての力が手から溢れかえる。その後の、世界のカメラ王国を築く階段を懸命に駆け昇っていた時だけに、どのメーカーのカメラを見ても、ギラギラと滾るものを感じて興味が尽きない。
 このカメラを世に送り出した太陽堂光機という会社は、もうとうの昔に消えてしまったが作品として残されたこの一台を大切に使っていこうと思っている。

 私にこのカメラと巡り会わせてくれるきっかけをつくってくださった「亜哉さん」並びに再生にご指導を頂きましたJFC会会員の皆様に感謝いたします。有り難うございました。
 また、ここまでお読みいただいたあなたにも是非「亜哉のおじゃんくかめら」を併せてご覧いただき、亜哉さんの素晴らしい作例をご堪能ください。


この角度から見ると、いかに小さいカメラかがよく判る。


最後部がフォーカス用のボッチ。
長期の使用でクロームメッキが薄くなり、真鍮材が顔を覗かせている。


距離計の基線長は、ご覧のようにかなり短い。

 このカメラのピント合わせは、楽ではなかった。 しかし、シャッターボタンの工作は今までに経験したことが無いくらい秀逸な出来。
 ピントが合い、フレームを確認してレリーズしようと指先に神経を集中させたときには、シャッターは切れています。 完全な機械式シャッターなのに、ストロークの短いフェザータッチのシャッターボタンで、レリーズショックによるブレは殆どおこさない。



フレームはフルダイキャストで、精密にしっかり造られているが、その分ズッシリと重い。

BEAUTY 35 SUPERの主な仕様

発売年度 1956年
レンズ FC Canter-S 45mm f2.8
シャッター COPAL MX (B・1ー1/300秒)
露出計 ナシ
焦点調節 距離計連動直進繰り出し
ファインダー アルバダ形式、パララックス補正マークのみ
大きさ 幅128・高さ78・奥行き67mm 
主な特徴 とにもかくにも、小さくて、可愛いスタイル    

 

ビュッカーさんの報告

2002.11.11 

 

BEAUTY 35 SUPERを使ってみました。
亜哉さんのような清々しい写真は腕が至らず撮ることは叶いませんでしたが、このカメラの描写はサラッとした色乗りで大好きです。
以下の作例は、スキャン時に色補正やアンシャープマスク等の処理は一切加えませんでした。
カラーはコニカ・センチュリア100、モノクロはFUJI ACROS100を使用しています。


木陰のお地蔵さん、かなり暗かったので絞りは、開けました。最短撮影距離です。
やはり、開けると柔らかくなるようです。個体差なのか、カラーでは全体に赤が突出します。


晴天時、距離3Mにあわせ、f16まで絞りました。プリントを見てたまげました。、
この写真では解りませんが画面中央右端奥にある 立て看板の文字が読めます。凄い解像度!


上の写真の看板を拡大したものです。フィルム上では、4×3mm程度の小さな面積部分です。
フォーカス位置を8M位にセットしていたらもっと尖鋭だったかも。


入り口付近の自然光から、アーケード奥の人工光まで違和感無く撮れました。
それにしても赤いですね。色フィルターで補正が必要かも。


やはりモノクロ時代のカメラなので、モノクロも使ってみました。
Yフィルターなどもちろん使っていませんが、コントラストに不満はないし、階調も充分です。
どちらかというと、モノクロで使う方がこのカメラは活きるかもしれません。

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