Olympus AutoEye

ボンネットバスに乗りたい

 近頃、バスが面白いですね。バスと言ってもお風呂じゃありませんよ、路線バスのことです。車体全面が走る広告になっているでしょ、あれ良いアイデアですし、見飽きたバス会社のお仕着せデザインより遙かに面白いですネ。
 バスは私もよく利用させもらうのですが、最近のバスは随分変わりましたね、乗車し易いように停車すると車体がプシュ〜ッと沈んでステップの段差を無くしてくれたり、降車扉がワイドになったり・・・。

 一昔前のワンマンカーといえば、車内アナウンスは運転手さんがマイクで案内していたものですが、今では女性の優しい声で案内してくれます。それに何より乗り心地が素晴らしい!道路が良くなったせいもありますが、実にスムースに走ります。
 その昔、路線バスは乗り心地の悪い代表的な乗り物で、切符を売るガイドさんが激しく揺れる通路をどこにも掴まらず、スラスラ歩く姿を不思議な感覚で見ていたものです。
 そういえば、路線バスからガイドさんが消えたのはいつ頃だったでしょうか。腰の前にガマグチのお化けのような革鞄を提げて切符を切ってくれるんですよね。乗客を乗せ終わると左右を確認して「発車オーライ」なんて少し鼻にかかったような声をかけて・・・。
 カッコよかったナァ〜、憧れたナァ〜。当時の女の子に大きくなったら何になるのってきくと90%くらいは「バチュガイドさ〜ん」でしたね。

 その頃のバスは、いわゆるボンネット型といわれるバス、エンジンが前に付いていて鼻が出っ張っているヤツです。元々がトラックベースなのでサスペンションもヘッタクレもありません。ちょっとした道路の凸凹でもガンガン跳ねちゃって・・・特に最後列なんかに座ったひにゃヒドイものでした。
 最後列に乗った大人5人が同じ高さで跳ね上がる、何処か掴まるモノでもあれば踏ん張れるのでしょうが、何もないわけですから、もう諦めてみんな一緒に跳ねるしかないわけです。なまじ口など半開きにしていたら舌など簡単に噛んじゃいます。
 今でも観光地などでは復元したボンネットバスが走っているようですが機会があったら、是非お乗りになってみて下さい、乗り心地の悪さについては私が保証します。

 そんなボンネットバスに揺られて、よく行き来していたのが笹塚近くのオジキの家。
 このオジキ、自宅近くのオリンパスで働いていた人で、私が長じてからはよくオリンパスカメラの自慢をしていたのを覚えています。
 運悪く丁度その頃、こっちは反抗期、行く度にオリンパスは・オリンパスはと呪文のごとく自慢されると返って嫌気がさすものでありました。そのトラウマはズゥ〜ッと付いて回って、平気で持てるようになったのは、私が40代になってからです。
 そんなオジキは、とうの昔に故人となってしまい、なにをしてオリンパスが最高と褒めちぎっていたのか知る由もありませんが、年代(昭和35年前後)から推察すると「オリンパス・オートアイ」辺りのことを言っていたのではと思っています。
 なぜならば、その褒め言葉の中に「日本で初めて」とか言っていたような記憶が微かにあるからなのです。

 オートアイは、確かに日本で最初に自動露出を実用化したカメラで、これ以降、日本製カメラは自動化の道を突っ走り始める歴史的な記念碑カメラです。
 使い方は実に簡単で、シャッター速度を任意に決めると輝度に応じた絞りをカメラが選んでくれます。そして、その絞り値はファインダー内下側に表示されるのですが、今のような電気仕掛けが無い時代ですから、機械仕掛けで造ってあります。この仕掛けが大変凝っていて、絞り値が印してある円盤がクルクルッと廻って適正値を知らせてくれるんです。
「へぇ〜、こんなものまで付いているんだぁ」と感心したのが、シャッターボタンの下に付いているプレビューボタン。このボタンを使うと撮影前に、絞り値を知ることが出来るので、ある程度、視写界深度の予測が出来るわけです。実に親切というか、写真を良く知る人の心をくすぐる仕掛けですね。

 ところが、このカメラが世に出た翌年、トンでもない事件が起こったのであります。
 そうです、あのキャノネットがベールを脱いだんですね。それまで高級機専門ブランドとして確固たる地位を築いてきたキヤノンが、大衆路線に殴り込みをかけてきたのです。
 未来的で洗練されたデザインのボディに完全EE(シャッター速度優先)とマニュアルが選べる露出機構、レンズは大口径の45mm/f1.9、そしてトドメは、驚異的な低価格11,800円!
 一方、こちらはシャッター速度優先のEEのみ、レンズはテッサータイプの45mm/f.28、価格は21,500円。
 オ〜、マイゴッド!勝負は簡単に付いてしまいました。
 たった2年間の命でしたが、このカメラの果たした役割は発売期間以上に大きかったことは間違いありません。残念だったのは、この後に出てくるオリンパス・ペンの大ヒットです。このカメラのお陰でオリンパスはペンの開発と製造に追われていきます。歴史的な皮肉ですが、ペンのヒットがなければオートアイのキャノネット対抗機が出来ていたかもしてません。
  
 さて、このオートアイの写りですが、これが実に素晴らしいんですね。オリンパスのお家芸とも言える強烈な尖鋭度はもちろんそのままに、非常になだらかなアウトフォーカスを示しますので、まるで立体メガネを掛けて見ているような遠近感が出現するんですね。
 この当時の、国産レンズは立体感の表現に弱く、わりと平板な絵になりがちなんですが、このカメラの関しては、その点の不満がまったくありません。
 
 販売期間の関係か、それほど市場に溢れているカメラではありませんが、見つけたらぜひ、手にしていただきたい高性能で悲運な歴史的カメラであります。 

 今回は、当時を偲びつつ、中村メイ子さんの歌でヒットした「いなかのバス」でも口ずさみつつ作例をご覧下さい。この歌詞でも分かる通り、まだまだのんびりしていた時代でしたね。



田舎のバスは おんぼろ車(ぐるま)
タイヤはつぎだらけ 窓は閉まらない
それでもお客さん 我慢をしているよ
それは私が 美人だから
田舎のバスは おんぼろ車
デコボコ道を ガタゴト走る

田舎のバスは 牛が邪魔っけ
どかさにゃ通らない 細い道
急ぎのお客さん ブーブー言ってるが
それは私の せいじゃない
田舎のバスは おんぼろ車
デコボコ道を ガタゴト走る

2004.5.24


オリンパス・オートアイでの作例です

以下の写真は、モノクロはプレストをエヌエヌシー社のND-76で標準現像処理。
カラーはKONICA Centuria 400を純正現像。
ニコンCOOLSCAN IVでネガフィルムを直接スキャニングした画像です。

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ビュッカーさんの報告

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