Wester Chrome Six

生理が呼んでいる

 数年前までは5、60万円もしてた一眼レフタイプのデジタルカメラも性能を更に上げて10万円台で供給されるようになり、我々のようなアマチュア好事家も気軽にデジタルカメラが触れるようになりました。
 銀塩の最新カメラでも電源スイッチを入れ、「P」マークにセットしさえすれば、たいていの写真はきれいに撮れちゃうわけですが、デジタルになるとその場で結果が確認できるわけで、こりゃぁ、便利この上ないですね。
 それで、何を確認するかと言えばシャッターチャンスのタイミングとかフレーミングですね。写真の二大失敗要素は、露出とピントですが、これはカメラの方で全部引き受けちゃう。
 こうなっては、誰もがみんなピントのあった綺麗な写真がホイホイ撮れちゃう訳ですから、良い時代なったものです。
 ちょっと前まで、問題になっていたシャッターのタイムラグだって、最新のモノはものすご〜く早くなり、いわゆるぎりぎりのシャッターチャンスにも十分対応できるようになってきました。
 こんな美味しい毒は、一度注入されたが最後、一瞬にしてデジカメ毒は全身に回ってしまい、まどろっこしい銀塩カメラなど二度と手にすることは出来なくなっちゃうでしょう。

 振り返ってアナタや私のような、昔から写真が好きで、コツコツと失敗の山を築いてきた人達は何処へ行けばよいのでしょうねぇ。
 露出で失敗し、ピントで失敗し、おまけに現像で失敗することを何よりの楽しみとしていた、我々はそう簡単には失敗を許してくれないデジタルカメラには、爪の先ほども魅力も感じられません。
「オイ、オイ、ちゃんとした写真が誰にでも撮れるようになって、どこが悪いンダ、なに文句言ってンダ、結構なことじゃねぇ〜か!」
「いやね、あたしが言いたいのは、そういうことじゃないのよ、写真を撮るというのは人間だけにしか出来ないことでしょ。だから、尊いことなのよ、そんな安易に扱うと、記録の消費になっちゃうし、だいいちアンタ、カメラを手にしてから絵が出てくるまで何処にも思考するところが無いでしょ、それじゃぁ折角アタマののてっぺんに乗せて歩いている脳ミソだって可哀想だって言いたいワケよ。失敗というリスクが大きいほど、成功したときの感激は高まるでしょ、だから、そうして苦労した写真は間違っても消費と言うことはしないんじゃないかって・・・。」
 まっ、いいや、いまさらこんなこと言ってもだ〜れひとり聞いてくれなくなっちゃたし、人間、楽な道を行きたいのは本能みたいなものですからネ。あたし一人が吠えたところで、どうにかなるもんじゃないし・・・。
 みなさんデジタルで楽しい写真生活を送ってください。私は私で世間の白眼視にジッと耐え、失敗を甘受できる苦しい写真生活を続けますから・・・。

 と、愚痴っていてもしようがない、気を取り直して今回も失敗の可能性がかなり濃厚な写真機を引っぱり出してきましたよ。
 1953年、西田光学が大衆用に向けて製作した「ウエスター・クロームシックス」です。なぜ、失敗が濃厚かというと、この写真機、同好の士の皆さんの間では、あまり評判がよろしくない。
 まあ、大衆機路線の写真機ですから、材質や機構に目を見張る点がないことは認めます。しかし、いままでの経験でも「リコーの板金フレックス」のように、素晴らしい能力を持った大衆用写真機も存在しているのですから、噂を鵜呑みにするわけにはいきません。
 噂と言えば、これは噂話ではありませんが、よくその筋のエライ先生がクラシックカメラについての本なんかをよく出していますよね。まぁ、大抵そこに取り上げてあるような写真機は古今東西の名機と呼ばれているものがほとんどで、私などには遠く縁のないモノばかりが並んでいるわけですが、ごく希に国産大衆機なんかが載っていたりすることもあります。そんな場合でもインプレッションになるとあまりいいことが書いてない。それではと試してみると結構イケてる物が多いのです。ですから、活字に印されているものも、そっくり信用しては損をすることもありますので、そこそこに読み流しておきましょう。


 私がこの写真機と最初に出会ったとき、トップカバーのファインダー処理のデザイン感覚に一目惚れ!おまけにお値段も情けなくなるほど安かった。それもそのはず、なんたって不人気カメラだったんですね。
 人様がどう評価しようと、好きなモノは好き!数年後、他のお店で見つけて、それもまた買ってしまいました。正直に言うと、もう買って持っていたことをすっかり忘れていたのです。で、そのお店で見たときに「うん、コレ、カッコイィ」となってしまったのです。
 ということは、もう生理的にズズゥ〜ンと来ちゃう・・・好きなんですね、このデザインが。
 最近、といってもここ10年くらいですが、私、こういうことを年柄やっちゃうんです。写真機もそうなんですが、本にCD、レンタルビデオなんかも、そうですね。
 本やビデオなんか、途中まで読み進まなければそのことに気が付かない。「あれぇ〜、この物語、前に読んだナァ〜・・・」で、本棚を捜すと・・・「あらら、やっぱり買ってあったのカァ〜」とね。みなさんも、50の声が近くなるときっと同じことをやらかしますよ。


 このウエスター・クロームシックスは1953年の誕生ですから、工作や加工はそこそこ洗練されています。レンズ扉の開閉もしっかりと、それもスムースに行えますよ。スプリングカメラというのは、買うと最初にやるのがレンズ扉の開閉で、これがギクシャクしていると一気に不安が膨張してきます。ですから、ここがメリハリ良くパチンパチンと動くと第一印象がすごく良くなるわけです。
 この写真機を造った西田光学という会社はかなり規模の大きいところだったようで、シャッター部を含めた光学部品をかなりの同業他者に供給しています。
 もちろん、これにもフル装備(?)のシャッターが載せられていて、バルブの次が1秒、以降倍数順で1/200秒までいけますし、絞りも3.5から始まり22を越えて32まで、ほぼ正円のまま絞り込むことが可能です。また、ファミリーカメラには必需のセルフタイマーもちゃんと付いています。
 それでは、WESTER 7.5cm/3.5(トリプレット)の写り方をご覧ください。評判通りかいなかは、アナタのご判断に委ねることといたします。

 

Wester Chrome Sixの作例です。

以下の写真は、Konipan 100をND-76で標準現像したものを
Canon D2400Uでフィルムを直接スキャニングした画像です。

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