Welmy 6

発想の転換・・・なんて凡人には出来ませぬ!

 敗戦でずたずたにされた日本の工業が、何とか立ち上がりかけた昭和28年、大成光機(戦前の富士光学)が造った一連のスプリングカメラの一つがこの「Welmy 6 L」です。
 シリーズ中の最廉価版で、とりあえず写真が写せればよいという一般大衆の要求に応えたカメラだったようです。
 従って凝った仕掛けや高級な装備は一切なく、切り詰め・節約・簡素ということがそのまま形になっていることがダイレクトに現れていますね。姿・形はどう見たってIKONTAのまんまコピーで、ボディシェルに至っては、形状・寸法とも生き写しのごとくピッタリ同じです。
 もっとも、この会社は、戦前の富士光学時代から、セミイコンタをそっくりパクった「セミライラ」という模造カメラを造っていて、戦後もその姿勢は変わらなかったようです。ネーミングにしても、「ライラ」なんてライカを連想させるし、「ウェルミー」にしたってドイツの「ウェルタ」が意識の根底にあったのではないでしょうか。
 カメラ自体は、ツァイスをパクっておきながらネーミングはやはりドイツの他社を連想させる発想というのは、何と独自性に欠けたことか、日本国民としては少々ガッカリしますね。当時のカメラ界は日本のみならず全世界的にドイツ至上主義だったのでやむを得ないことだったんでしょうか。
 しかし、この稿でこのカメラがIKONTAのコピーだからといって両者を比較対照したところで、さらにガッカリが増幅されてしまうし、このカメラを単独で見た場合あまり意味のあることとは思えないので、それはやめましょう。
 イコンタの1/4程の価格で買えたこのようなカメラがあったからこそ、大衆にも写真が楽しめたのですから、このカメラの存在価値は大いにあったことには違いないのです。

 このカメラが世に出た時期は、同じブローニーフォーマットで大ヒットした「リコーフレックス」も登場した時で、国産大衆カメラはブローニー判カメラが雨後の竹の子のごとく登場するんですね。
 片や、このWelmy 6のようなスプリングカメラ、もう一方はリコーフレックスを頂点(販売台数)とするTLRカメラ。そうしてやがてスプリングカメラはTLRに駆逐され、市場から消えていってしまうのですが、その原因は距離計の有無ではないでしょうか。 ドイツの高級なスプリングカメラには、上等な距離計を備えたものもありましたが、当時の日本の技術力では蛇腹を介して距離計を連動させるのは相当高度な技術が必要だったようで、ほとんどのスプリングカメラは目測式でしたね。
 例えば、このWelmyにしたってIKONTAの最上級機Super SixやSuper IKONTAの距離計をコピーする手も考えられるが、まあ特許や工作技術等の問題もあったんでしょうね。戦中の同盟国、戦後は敗戦国同士のよしみとはいえ商売となれば、そこまでコピーされたらいくら太っ腹のツァイスといえども看過してはおきませぬ。
 唯一、国産機で距離計連動に成功したのは、マミヤ6くらいのもんでしょうか。

 話は変わりますが、あのバックフォーカス方式は目から鱗の実に良いアイデアですね。ドイツ勢の特許責めに苦しんでいた間宮さんが仕掛けた大勝負。
 野球でいえば、延長12回の裏、巨人の攻撃で2アウト2・3塁で打順がピッチャー。(このシュチエーションって、よくあると思いませんか)ところがそれまでにピンチヒッターを使い果たしもう誰も残っていない。そこで苦し紛れに監督が指名したのが「バッター桑田」。そうです桑田という「大打者」がいたのです。
 これが大成功、ライト前にポテンヒットでサヨナラ勝ち!ってな感じでしょうか・・・。
 ちょっと例えが変ですが、ようは定常的な視点で発想せず、横方向や後の方からと視点を違えてアイデアをひねり出したことが成功の一因だったことは確かです。
 近頃世間では、よく「発想の転換」が叫ばれていますが、私ら凡人にはこれほど難しいこともありませんね。そんな簡単に転換なんて出来ないんですよ。と、ココでぼやいても始まりませんが・・・。

 話が、かなり脱線してしまったのでこのWelmy 6に戻しましょう。
 機構自体は前述のように目測式で、巻き止め装置や二重露光防止装置等の小洒落たメカニズムは涙が出るほど一切ありませんね。 従って夜に好きな酒をチビチビやりながら、このカメラを手にとって至福の一時を、なんて絶対ムリです。カメラを愛でながらうまい酒を楽しみたいならIKONTAのほうにして下さいね。その代わりといっては何ですが、シャッターは2枚羽の4速(1/25から1/200)部品数は切り詰めの極致で極端に少なくスペーススカスカ、レンズはトリプレット、絞りも簡素なものですから小生のようなレストア超初心者にもスラスラと手を入れてやることが出来ます。
 おかげで写真ごとく、製造50年を経てかなり煤けた機体で可動部はすべて固まっていましたが、割と簡単に息を吹き替えらすことができました。ただ部材が情けなくなるほどヤワですから、力加減には神経を使いました。シャッター部に使われている小さいバネなどは簡単に折れたり変形したりしますから。
 このカメラの前の持ち主は、このカメラでの最後のカットを何十年前に撮ったのかは、知る由もありませんがフィルム押さえのバネ板には相当の本数のフィルムを通したと思われるスリ傷が残っていて、家族の記録を沢山残したカメラなんだろうなぁ、などと想像が膨らんでしまいました。


ボディはサビサビ、張り革はベロベロで廃棄寸前の機体でしたが、
何とか写真が撮れる状態にはなりました。


ファインダーは一応ありますが、目測式なので、目安程度ですね。

さて、何十年ぶりにフィルムを通すことになるのでしょうか。早速使ってみましょう。以下は作例です。

 

Welmy 6 を使ってみました。
今回のモノクロは、T-Max100をD-76の自家現像で処理をしましたが、学生の時以来、35年ぶりの作業だったので、
手順など全て忘れてしまい、殆ど初体験の状態でした。現像の甘さを差し引いてご覧ください。
試写の作例なので、スキャン時にアンシャープマスク等の画像処理は加えていません。


デパートの店内を開放で撮りました。今度はフレアーに悩まされます。
輝度が高いとご覧のごとく。
モデル横の「ご案内」の看板はフワフワになってしまいました。


何だか、だんだんえらいことになってきました。
右横のタオルや左下の小テーブルは湯気ではなくフレアーです。
中心部は悪くないんだけどァー。これも絞り
開放です。


少しましになってきました。ほぼ最短撮影距離です。スーパー前の歩道につながれ、
ご主人をジーッと待っているビーグルです。これほど近づいて、変なカメラを向けているのに
主人のいった先を見つめたままです。こうゆう姿は犬好きにはたまらないですね。

 
カラーで使うと、こんな感じです。
実に日本的というか和風というか、あっさりと色が乗ります。

 
ついでにもう一枚。何をとってもあっさりです。このカメラ、どう使うと個性が活きるのか、
面白い課題が残りました。しかし、目測のアバウトな使用感とスプリングカメラのコンパクトさは
大いに気に入りました。中判のフォーマットをジャケットのポケットに入れて持ち運べる利便性には、
少し開眼した思いがあります。二眼レフのピント精度を採るか、
スプリングカメラの軽快性を採るか、皆さんはどちらがお好みでしょうか。

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