Aires VISCOUNT

ヴィスカウントで、なぜいけない!

 突然ですが、アナタはどんなきっかけでこの道に迷い込んで来ましたか?
 この道とは古いカメラ達を愛して止まない趣味のことです。わたしの場合は、写真生活は長いものの「カメラなんて所詮は、新しい物の方がいいに決まってる!」という極々標準及び平均的小市民だったのですが、♪あの日、あの時、あの場所で、キミに出逢っちゃったんですねぇ。そう、色白で美しいなと思ったら、美白ではなく全身カビだらけで真っ白くなっていたフジカカメラと。
 その顛末は「フジカ・オートM」の稿に書いたとおりですが、その1台から始まってその後、まさか100台以上のカメラに埋もれて異常な生活をすることになるとは、わたし自身、想像すら出来ませんでした。

 で、なぜそれほどまでに熱くなってしまったかといえば、そりゃぁもう、いにしえのカメラの”写り”に腰を抜かしたからでありますね。
 しかし、よく考えてみると、フジカ・オートMが現役であった時代はリアルタイムで知っていたはずなのですが、それでも感動してしまった。このことを今になって少し冷静に見つめ直してみると、まぁ確かに立体感溢れる素晴らしい解像をしていたことも事実ですが、何よりも被写体と直面し、自分で焦点を合わせて自分で露出を決定してシャッターを切ったことに強く想いがいったのではないかという気がするのですよ。
 そう、その瞬間、頭の中の想いは初めて写真機を買って貰って感動した少年時代へと一気にトリップしてしまったのですね。
 理研光学のリコレットで写真世界の門をたたき、ハイカラー35でオート露出の味を知り、キヤノンFTでTTLの何某かを覚え、その後はもうプログラムシャッターが当たり前のごとく身に染みつき、なんの抵抗も感じなくなってしまった。そして、80年代、カメラ任せの自動合焦が普及し始めると、ただただ便利、アリガタヤ・アリガタヤと、これまた何一つ抵抗を感じることなく無神経な写真を撮り続けていたのであります。
 そんな我が身に、露出と合焦に撮影者が積極的に関与せよという写真にとって当たり前のことを思い出させてくれたことがある意味でショックだったのです。

 そこで最近、よく思うことなのですが、私達はこの先、どう進化していくのか?このクラシックカメラという楽園で産するリンゴの味を知ってしまった以上、元の標準的小市民に戻ってしまうことは考えられないのですが、外的要因で戻らざるを得ないこともあり得るわけです。
 一番の心配が、感材の供給切れ、昨今のメーカーやショップのあり方を見るとかなり現実味を帯びてきました。先ほどもヨドバシカメラへ現像材の購入に行ってきたのですが、売場の棚がまた縮小!さらにショックは常用していたエヌ・エヌ・シー社製の液薬が全品撤収!
 おぉ〜、いよいよ来る物が来たという感じ。仕方なくイルフォード社製の同一品を買っては来ましたが、先が暗くなってきましたネェ〜。
 せめてあと10年、なんて考えていましたが2、3年先すら危ないのかもしれません。
 思い出すのは、音楽がレコード盤からシーデーに取って代わったときのことですよ、あの時はうむを言わせず、アッという間でしたもんね。
 やだヨォ〜、やだヨォ〜、デジタルなんてやだヨォ〜・・・

 まあ、嘆いてばかりじゃ先へ進めないので、本論へ話を戻しましょう。
 さて、今回ピックアップしたカメラは「アイレス・ヴァイカウント」、誕生当初(1959年)には非常に先進的なデザインを身にまとったカメラです。カクカクとキレのよい直線で構成されたボディやファインダー窓のフレームなど、前モデルのライカ似「IIIc」とはガラリと趣を変えてデビューしてきました。タイトル写真でもお判りになるだろうと思いますが、とても美しいカメラでしょ。
 トップカバーのてっぺんに「Aires VISCOUNT」とシンプルですがたいへんセンスの良い書体で刻印が施されています。深々とエッジの立った刻印で、これ一つを見るだけで高級機の風格が漂っています。


 それにしても、英語つぅ〜のは難しいもんですね、VISCOUNTとつづってヴァイカウントと発音しなけりゃならないらしい。
 我らは小学校に時にアルファベットと初めて対面したわけで、その始まりがヘボン式とかいうローマ字。そりゃぁ、一生懸命勉強しましたよ。おかげで、VISCOUNTもどうしたって「ヴィスカウント」と読みたくなっちゃう、HANDKERCHIEFだってハンドカチーフとなっちゃうし、KNIFEだってクナイフとどうしても読みたくなっちゃうのであります。
 みなさんは抵抗無くハンカチーフとかナイフと読めちゃうのでしょうか?

 ところで、アイレスカメラの系譜を見るとI型から始まってIIとかVとかローマ数字の記号で表記されていたのですが、このカメラになって、いきなり「ヴァイカウント」という名詞が使われてきました。
 うぅ〜ん、これは何か意図が有ってのことなのでしょうか?
 ちょっと、推理してみたのですが、VISCOUNTとは貴族の位を表す言葉で、COUNT(伯爵)の下位、ですから「子爵」という意味ですね。で、子爵の下位が男爵で、これはご存じ、BARONということになります。
 なので、もしアイレス写真機がこの翌年に倒産せず、事業が継続していたのなら、このVISCOUNTにもっと明るいレンズや高速シャッターを載せた上級機の「COUNT」とか、あるいはまた、1段暗いレンズを搭載したf2..8の4枚玉を積んだ普及型の「BARON」と名づけたカメラが計画されていたのかもしれない、などとついつい想像が膨らんでしまうのであります。
 当時、このカメラを初めて見たユーザーには斬新なデザインや金色に輝く距離計窓などが相当の衝撃を与えたであろうことは容易に想像が出来ます。また、そのことが販売戦略の成功につながったとみえ、現在でも相当多くの個体が専門店などでは流通していますね。
 そのお陰で相場も低価格で安定していますので、私達にとっては非常に有り難い存在のカメラでもあります。写り方も絞ったときと開放近くまで開けたときでは、ニュアンスのまったく違うメリハリの利いた写真が容易に写せますので、見掛けたときにはぜひ手に入れることをお薦めいたします。

 


もし、アナタが手に入れたヴァイカウントに不具合がありましたら、こちらのページをご参考にしてください。

ビュッカーさんの報告はこちら

2005.3.29


VISCOUNTでの作例です

写真はすべてKodak GOLD200を使用
Nikon Coolscan IVでネガフィルムを直接スキャニングした画像です。

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これは1960年4月にオランダで発行された写真誌「FOCUS」に掲載された
アイレスカメラの広告紙面です。全面でスペースをとっていますから、
相当力が入っていたことが分かります。
今回、この資料をお送りいただいたご当地在住の「りえ@アムステルダム」さま、ありがとうございました。

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