Ricoh 35S

キャノネットへの想いは・・・

 今回、ご紹介するのは「リコー35S」です。リコーには「リコー35何々」とつく写真機がたくさん存在していますので、余程のリコーマニアでない限り写真を見ずにリコー35Sといわれてもピンと来る方はそう多くないでありましょう。
 この写真機は、1963年に誕生したカメラで昭和で言うと38年、かれこれ42年前ですから、写真機としてはそこそこ古いものといえます。
 写真機の歴史なんて、おおよそ150年くらいのものですから、42年という歳月は道2/3を過ぎた辺りか・・・。
 人間の歴史をたどれば、約4000年ほどになるそうですから、写真機とは実に超近代的な装置なんですね。ですから、それを相手の職業や趣味は歴史的に見ると最も最先端のことをしているとも言えるわけです。事実、写真機と言う道具にはその時代、その時代の最先端技術が投入されて今日まで発展したきたものであります。

 これが例えば、器(うつわ)造りなどの陶芸を趣味にしている場合などは、縄文時代まで遡って2000年以上の歴史があるわけですから、そりゃぁことは深いんでしょうね、蘊蓄なども半端なことではないでしょう。
 それにくらべりゃぁ、写真機なんて20分の一ほどの歴史しかないものですから、蘊蓄なんて言ったって大したこたぁない。
 人間は太古の昔から目に見えたものを記録する能力を授かったために描く、或いは彫り込むという行為でその欲求を満たしてきたわけです。
 その歴史は人類が誕生して以来だそうですから約4000年くらい続き、とうとう描くことをせずに実際の事象を暗箱と小穴を使って銀に焼き付けることに成功したものが写真というわけです。
 ですから、写真の発明こそは人間にとってなんと4000年間思い続けてきた夢が叶ったものといえるのではないでしょうか。
 いまでは写真を使った表現手段を用いて、芸術の分野にまで裾野が広がりましたが、写真の本分というか本道は「記録」という一点に集約されることは万人に異存のないところでありましょう。

 記録と言う点が本道だとするのであれば、シャープでクリアーな画像ということが何よりも優先されるのですが、このリコー35Sというカメラはまさに、その一点「シャープでクリアー」なことに関しては今現在の高級カメラと比しても相当に高いレベルを達成しています。
 わたしが、これまでに経験した数多くのカメラの中でもシャープでクリアーな解像を得られるカメラとしてはトップクラスとして保証できます。
 もとからしてリケノンの4枚玉は尖鋭度の高さにおいて定評のあることは、みなさまご存じの通りですが、このカメラに載せられたレンズは、フレキシビリティが高いというか、良い意味で”鈍感”なのであります。
 どう説明したらご理解いただけるか・・・うぅ〜ん、文字で説明するという作業はやはりわたしのような凡には、難しすぎます、しかし、もう少し頑張ってみますね。

 レンズを通過してフィルムに定着する光は、あらゆる角度から入り込んできますね、そこである角度の光は過剰に反応したり、逆に何の作用もしなかったりと、レンズによっていろいろな受け止め方をするわけです。
 これが写真の面白いところでもあるのですが、使うレンズによって同じ光(被写体)でも、かなり違う結果が生じるわけですね。これがいわゆる「レンズのクセ」というやつです。
 そうして観察してみると、このリコー35Sに使われているレンズは、とても寛容なのです。「いらっしゃい、いらっしゃい、どんな角度の光でも、ドォ〜ンと面倒見てやんから」と、じつに寛容でとにかく頑張ってくれるのであります。
 これはわたしのように無神経にシャッターを押す人間にはじつに頼りになるレンズで、ここ一番という場面でも、まず失敗がありません。

 もう一つ、分かり易い例を出すと、丁度このカメラと同じ年にコニカが出した「コニカEEマチック」、どちらが真似をしたのか、あるいは偶然がそうさせたのか、まったく瓜二つのデザインをしたカメラです。がしかし、形は似れども光の受け止め方はまるで正反対!
 このEEマチックは自分好みの光しか受け付けてくれません。アンダー・オーバーの判断基準が性急で、輝度不足と決めつけたとたんにスパ〜っと気持ちよく省略!したがって、非常にデリケートで神経質な写り方をします。
 当然、写真としては面白いものがぽろぽろと出てくるのですが、記録という点に重きを置いたらとてもじゃないが、手に負える代物ではありません。
 少なくとも、この手の写真機はファミリーカメラの要素が大であることは言うまでもありませんので「コニカEEマチック」のレンズ設計は如何なものなのでありましょうや。
 要は簡単に言ってしまえば、このリコー35Sというカメラは誰がどのような時(低光量時・高光量時)に用いても、ちゃんと・ちゃんとの写りをしてくれますよ、ということなのです。

 それと、もう一つ・・・ここ1,2年、わたくし、この種のカメラスタイルに心強く惹かれて居るんです。このスタイルというのは、レンズ周りにリング状のセレン電池を有したカメラのこと。
 若い方々にはどうも敬遠されて、人気が今一つらしいのですが、わたしら世代はいわゆる「キャノネットの衝撃」を経験していますでしょ。これがどうも、脳裏の深層に残ってしまって、いまだに後遺症のように疼くのであります。
 あのレンズの周りに付いているツブツブした仕掛けには、きっとスゴイ秘密めいた特殊装置が内蔵されているんだろうなぁ〜と、羨望の思いでカメラ屋さんのショーウインドーに陳列されたピッカピカのキャノネットをしきりに見つめていた少年時代を過ごしてきました。
 キャノネットはもちろんのこと、このリコー35S、コニカEEマチック、ヤシカミニスター-S、マミヤEE等々、どれも眺めているだけで、心は一気に40数年前の自分に戻っていけるんですね。
 遠い昔、カメラ屋さんのショーウインドーに顔をぴったりくっつけて「いいナァ〜・・・、欲しいナァ〜・・・」と時間を忘れて見つめていた自分に・・・・。

 さて、現在の”電気がなければ何にも出来ないカメラ”に比べれば子供のオモチャ以下の装置ですが、先にも書きましたように、このカメラにも電気力を使って露出制御が出来る装置が内蔵されて居ます。
 現在の用語でいえば「シャッター速度優先AE」ということになるのでしょうか、絞りレバーを「AUTO」位置にしておき、あらかじめ1/4秒から1/300秒まで任意の速度を選んでカメラを構えます。そして、ファインダー右隅の指針を見ながら中央の適正位置に針が来るよう絞りリングを回します。選んだ速度が適正範囲を超えていると、指針は当然中央には来ず、なおかつシャッターもロックさせてしまう安全装置まで内蔵されていますよ。また、絞りレバーの「AUTO」を解除して2.8から16までの絞り値を任意で選べば、フルマニュアル撮影にも応じてくれる実に親切設計のカメラでもあります。
 今回使った個体は、セレン電池もまだまだしっかり反応してくれていましたので、すべてこのカメラが適正と判断した「AUTO」露出での作例を掲載いたしました。

2005.1.18


Ricoh 35Sでの作例です

写真はNEOPAN 100をミクロファインで標準現像処理。
カラーはコダック・ゴールドを純正現像。
Nikon Coolscan IVでネガフィルムを直接スキャニングした画像です。

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これ、ウィンドーの反射とかでありません。
二重露光でダブルイメージを狙ったのですが・・・
写真にはいろいろな遊び方があるのですが、
去年からはまっているのがこのダブルイメージ。
なかなかドンピシャにはまることは無いのですが、面白いんですよ、コレが・・・。
みなさまもカラーを詰めたらぜひ試してみてください。
モノクロでやると、余程画面を整理していないと訳の分からない絵になります。

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