Kodak Retina IIIC

僕のコダクローム

 もうかれこれ四半世紀の昔、アメリカのポップスで、サイモン&ガーファンクルが歌った「僕のコダクローム」という曲がありました。日本でも結構ヒットしましたからご記憶の方も多いと思いますが、あなた、覚えておいでですか?
 この曲のタイトル、原題では「Kodachrome」というのですが、CMソングでもないのにズバリ商品名でぶつけてくるところに当時のアメリカの自由で大らかな雰囲気を十分に感じますね。そして、曲を聞いているとサビの部分の歌詞に「♪ナ〜イコンキャ〜ムラ♪」(僕の耳にはそう聞こえる)というこれまた、どうやら商品名らしき単語が飛び出してきます。ナ〜イコンキャ〜ムラ、その昔、この曲を聴きながら「アッチにはナ〜イコンキャ〜ムラと言う名前のカメラがあるんだな」と、かなり後になるまでひとり納得していたのです。
 それから数年経ったある日のこと、仕事で知り合った英国人が茶飲み話の時に「君たちが羨ましいよ、なんたってホンダとセイコーとナイコンがいつでも安く手にはいるのだから・・・」と言ったのです。うん?なんだ・なんだぁ〜・・・ホンダとセイコーは意味しているものはCB750とオートマチック腕時計ということは即座に判りましたが、ナイコンって何だろ・・・?そこで彼に「ナイコン」って何のことよと、聞き返すと「オマエ、ニホンジンのくせして、ナイコンキャ〜ムラをしらないのか!」と・・・。はっはぁ〜、相当に頭の回転が悪いボクも、尻にキャ〜ムラを付けてくれたので、ここに来てやっとナイコンの意味が分かりました、いつかサイモンとガーファンクルが歌っていたアレだ。Nikon、このNiを「ニ」じゃなくて「ナイ」と読んじゃうのね。「僕のコダクローム」で歌われていた「♪ナ〜イコンキャ〜ムラ♪」は、ニコンカメラのことだったんだわ。しかし、これはまずいでしょ、ニコンさん。いくらなんも、会社名の呼び名ですから正式な読み方・発音の仕方を世界に向かって啓蒙しなくっちゃ・・・。

 1973年、当時23歳の僕にとって、コダクロームフィルムとニコン一眼レフカメラ(この場合、時代から探ると「F」か「F2」のことを歌っているのでしょう)の組合せは、自分にとってまったく縁遠いもので、まさに歌の中だけの世界。
「そうかぁ、アメリカでは写真家でもない普通の人々がニコンFにコダクロームをポンポン入れてパチパチ写 真撮っているンだナァ〜」・・・・高度経済成長期に足の先が掛かったとはいえ、まだまだアメリカの経済力とは程遠い格差がありましたので、そのような環境を羨ましく感じていました。もっとも、作曲者のポール・サイモンは「普通 の人」ではありませんがね。しかし、これも彼等としては当然のことで、当時、普通にカラー写真を楽しむのはDPEでプリントしたものではなく、プロジェクターによってスクリーンに直接投影したもので楽しんでいたらしいのです。
 30年前の当時、ニコンFは僕の月給の4倍くらい?いや、もっと高かったかな、コダクロームだってネオパンSSの5倍位 していた超高級品でした。しかし、経済力が日本の何倍も高かったアメリカ人にしてみたら、このカメラとフィルムなんて大して高価な買い物ではなかったのですね。
 この「僕のコダクローム」という曲は、結局、商品名がボコボコ出てくると言うことで、NHKはもちろん、そのうち民放でもかけなくなってしまいましたね。そりゃね、例えば、番組の提供者がMinoltaやCanonだったまずいですものね。あっ、Canonと書き込んで思い出しましたが、Canonはカタカナ表記で「キャノン」と書くと×、「キヤノン」と促音ナシで書かないと正しくないのだそうです。ガイジンにナイコンと言わせるのも納得が行きませんが、このキャノンと書いたらダメよというのも、何だか納得がいきませんナァ〜・・・。

 で、何でこんなことを書き始めたかというと、先日、物置の整理をしていたら、むかし聞いていたカセットテープが山のように出てきたんです。ちょっとの間、手を休めてそれらのテープをひっくり返していた中に、この曲が入っているテープが出てきたのです。
「おぉ〜、僕のコダクロームかぁ、懐かしいナァ・・・・」この曲、どんなことを歌っていたンだっけナァ?たしか、ナ〜イコンキャ〜ムラがどうしたこうしたって言っていたンだよねぇ、あぁ〜、気になってきたナァ〜・・・。
 さ〜て、こうなると、どうしてももう一度聞きたくて、いても立ってもいられなくなってしまいます。「えぇ〜と、カセットプレーヤーは何処にあたっけ?」と、家中探しますが、何処にも見つかりません。「あれぇ〜?何でカセットプレーヤーがないんだろ?!」
 妻に問うと、とっくの昔に使わなくなったので処分したとのこと。「えぇ〜、処分しただと、そう言えばカセットテープってもう何年も、いや十何年も聞いていないような・・・?カセットテレコだって何台もあったじゃないの、アイツらも捨てちゃったの・・・じゃぁ、ココにあるこのテープの山は???」しかし、そんなこと、今はどうでもイイの!僕はサイモンの「僕のコダクローム」がどうしても聞きたい、いや、聞かねばならないのだ!ウン、そうだ、車のオーディオに付いてんじゃないの、あぁ〜ジタバタして損した。ということで、車庫に回って車のドアを開けてみると、CDのほかにカセットを入れられる投入口があるのですが、カセットのサイズがまったく合わなくて入口に入りません。「???うん?何だコレ???」僕は使ったことがないので知らなかったのですが、この小さな投入口は「MD」というものを聞くためのモノだと、その時、息子から教わりました。
「なんだ、MDって、そんなの知らんゾ、いつからそんことに決まったんだ!」とワケの分からない文句を口走りますが、どうにもなりません。「あぁ〜、このテープが早く聴きたい、ど〜しても聞いてみたい!サイモンはナ〜イコンキャ〜ムラでどうしたと歌ってんだヨォ〜」
 こうなると脳ミソが沸騰したように思考回路が壊れてきます。そこで思いついた結論が「安物でもいいから、とにかくカセットプレーヤーを買ってこよう」と。そして電気屋へ出向こうとジャンパーを羽織った途端に、このことの始まりをハナから傍観していた妻は、僕のこの決断を即座に察知。30年も連れ添っていると、僕の眼球の動き一つで考えていることが分かるようで「また、余計なモノ、買ってこないでくださいよ、ゴミが増えるだけだから・・・」と、カァ〜ッ、チックショォ〜〜〜〜。
「くっそ〜、ナ〜イコンキャ〜ムラで何をしたンだよぉ〜、気になるナァ〜、寝らんないヨォ〜・・・」


 さて、もしボクがコダクロームというフィルムをイメージして楽曲を作るのであれば、ナ〜イコンキャ〜ムラはないですよ、こんな発想は絶対にあり得ない。あのカメラはどちらかというと質実剛健、報道現場向きでしょ、むしろ報道専用と言ってもいいくらい。もう硬派の権化みたいなカメラ、それもモノクロ専門というイメージよね。だから、フィルムだってトライXオンリー、これで決まり!っていう感じがするのでありますよ。
 じゃぁ、コダクロームが似合うカメラとはどんなものかと考えてみれば、そりゃぁもう、コレしかないんじゃないですか、コダックのレチナ。ね、それも初期のシンプルなヤツじゃなくて、割りと後期の露出計なんかが付いている洒落たヤツね。コダクロームはラチに余裕のないリバーサルだし、感度だって64と厳しい一面 を持った手強い相手ですから、距離計とか露出計は有った方が心強いでしょ、なので、ボクがコダクロームの歌を書くんだったらカメラには絶対、レチナを選んじゃいますね。両方ともコダック社製だし相性はこれ以上申し分ないでしょう。

 ということで、レチナIIICというカメラがボクの所にもやって来てくれましたので、コダクロームとの相性はいかにと相なりました。ホントは一台一台のカメラを詳しくご紹介するページだし、いままでもその路線でやってきましたが、このレチナIIICに関しては、あらゆる関係書籍をはじめ、web上でもたくさんのインプレッションが紹介されてますので、敢えて僕が追記することはありません。どの記事にもありますように、まったく非の打ち所のない素晴らしいカメラであることに間違いありません。ただ一つ、このIIICというのは、レンズが交換できるようになったせいで、ファインダー内に広角・標準・望遠の3フレーム枠が常時表示されて居るんですね、コレが鬱陶しいというか、咄嗟のチャンスに一瞬どの枠が現在のものなのか迷うことがしばしばあるんです。唯一の欠点をほじくり出せと言われたら、そのくらいでしょうかねぇ・・・。
 今回は、記事に沿ってコダクロームだけの作例を掲載さて頂きますのでご覧ください。このフィルムがあと何年、いや、あと何ヶ月(になるかもしれない)使うことが出来るのか判りませんが、他のフィルムにはない独特の世界がこの中にはありますね。

 こちらで「僕のコダクローム」を聞くことが出来ます。この曲がどんな歌だったか思い出せない方、あるいは聞いてみたい方はどうぞ・・・・。

http://wmg.jp/artist/paulsimon/WPCR000011991.html

2006.3.8


コダクロームでの作例です

考えてみたらこのフィルムとは、もう十何年と断絶していました。
昔は当たり前と思っていたASA64という低感度は、リバーサルでもISO400を
経験してしまうと、異次元とさえ感じてしまいますね。

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このフィルムのために「記憶色」という言葉がありますが、
じつにピッタリとこのフィルムの性格を言い当てている言葉だと思います。

今回も、このような拙き写真をご覧くださり、まことにありがとうございました。

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