KONICA IIIA

いっそのこと一眼に?

 旧いカメラのことを説いた本などを開くと必ずと言っていいほど登場してきますね、このカメラは。そこに記された解説は様々ですが、共通しているのは「名機の風格」を備えた初の国産カメラというような内容が多いのです。有名なカメラですし、まして名機の風格を備えたとあっては、わたくしとはおよそ縁遠く、近寄ってくるはずもありません。いつも指をくわえて老舗カメラ店のショーウインドウをのぞき見るだけだったのですが、あるとき、この拙いページをご覧の読者さまから「使ってみてよ」と、お誘いのメールを頂きました。
 突然のメールで、まったく見ず知らずの方ですし、ましてそのお誘いにはこのカメラの他に「パールII」も一緒にどうぞとありました。
 うぅ〜ん、このような歴史的工業遺産品を一度もお会いしたことがない方からお借りして、もし、何かあったら取り返しがつかないと、お断りしたのですが、「そんなに固くならず、気軽に使って・・・」というご親切なお言葉を頂いてしまい甘えることに致しました。(ギャァ〜、うれしいヨォ〜:内心の声)

 数日後、カメラが届けられ早速手にしてみるとズシリと手応えのある重みに圧倒されてしまいました。この重みはいかほどなのかと思い、ハカリに乗せてみるとナントナント820gもあります。このカメラ、大人の手の平に乗せても指が余るくらいの大きさで、決して大きい方ではないのです。
 他の金属製カメラでもこのくらいの大きさだと大抵700gあるかないかくらいのものでしょう、この異常なる重量感、期待が高まるナァ〜・・・、デブで重いのは当たり前ですが、中肉中背の高バランスで重い!脂肪の塊など一切無くスキッとしたスタイル、「わたし、脱いでもスゴイんです」というCMを思い出してしまいました。そうだ!自分も、あと5キロは落とそうと固く決心するのでありました。

 いやぁ、それにしても現物は見事な仕上がりですね。部品の一つ一つが完璧な機械加工が施されていて、凄みさえ漂っています。その凄みとはそれぞれ用途にあった金属が、ある物はナシ地仕上げ、ある物はクロームメッキ仕上げ、またある物はペイント仕上げと、相当な熟練を積み重ねたであろう職人さんの手でビシッとした加工がされたことによって醸し出されてくるのでありましょう。
 特にウットリしちゃうのは、セルフタイマーレバー。このレバーのカタチって、カメラによっていろいろでしょ、大概がカメラの正面の重要なポイントになる位置に付いているものなので、全体のスタイルを引き締める役割を持ったパーツなんですよ。このレバーのデザインで気を抜いてあるカメラは期待が持てないという“勝手な偏見”がわたしにはあります。

 ところでセルフタイマーレバーって、みなさまはどのくらいお使いになっていますか?えっ、一度も使ったことがないですって、それはもったいない!わたしはかなりの頻度で使っていますよ。カチッとシャッターを押して、スタスタと彼女の元へ走っていって肩を抱き寄せニヤつきながらツーショット。違う、違う、そんな美味しい使い方なんてもう30年以上したことがありません。
 わたしの利用法は、風景を撮るときに使います。距離を∞にセットしたら絞りをf8にして、あとは光の状態で速度を決めます。そして、セルフタイマーをセットしてレリーズ。これで、ブレのない素晴らしくシャープな写真になります。風景だったら動かないし、逃げることもないでしょ。なぜ、絞りをf8にするのか・・・多くのレンズは絞りの中間値で最良の描写になることが多いからなのです。この利用法、特に夕景や夜景には有効ですよ(この場合はf5.6で)、ぜひ、セルフタイマーを活用してくださいね。わたしとしたことが、艶っぽい使い方じゃなくてゴメンナサイね。

 さて、話を戻さなくちゃ・・・そうそう、このカメラのセルフタイマーレバーね、この研ぎ澄まされたカタチの素晴らしいこと素晴らしいこと!その優れたカタチを産み出すために実に丁寧な加工と仕上げがされているんです。これだけを見れば、ほんの小さな部品ですが、間違いなく“魂”がこもっていますよ、このレバーには。
 もう一つ、特筆しておきたいのが巻き戻しのレバー。これはダイキャストでしょうが、実に複雑なアールを駆使した造形です。これまたカタチといい、仕上げ方といい、お見事!
 これら二つの部品は、直接撮影結果の良否とは関係がありませんが、これらの部品が放つ上質感はやはり撮り手の撮影意欲と緊張感の持続に大きく貢献することは間違いありません。

 このカメラが誕生したのは昭和33年、私は10歳でした。街には観音開きのクラウンやダルマコロナのタクシーが、商店街ではマツダやダイハツのオート三輪がダッダッダッァ〜と走っていた頃です。
 日清のチキンラーメンが出てきたのも確かこの頃、中華屋さんのラーメンとは程遠い味と食感でしたが、年がら腹を空かしていたボクには相当にウマイ食べ物でした。当時、あのラーメンは幾らくらいでしたっけネェ〜・・・。
 まぁ〜、十数円だったと思いますが、このカメラのお値段は39,400円!同時代の同じような仕様のリコー519が23,500円、露出計内臓のマミヤ35・メトラでさえ24,800円でしたから、トンでもなく高いカメラでした。
 それほど高価ゆえに、爆発的に売れたカメラではありませんが、逆に所有者さま達はよほど丁寧に扱ったとみえ、今日でも程度の良い個体が多いのはそのせいだったのではないでしょうか。

 さて、さて、この先、このカメラと出会えるチャンスはまず無いと思えますので、今回は色付き・色無しとたくさん撮影させて貰いました。その印象ですが、一言で言ってしまうと実に「正確無比」な写真が撮れます。この印象を具体的に言うと、画面の中心は勿論のこと、四辺の隅々まであらゆる崩れを知らずに解像してしまうということです。ただ、逆光では五角形のゴーストオンパレード、角度によっては三つも出たりして賑やかなこと、賑やかなこと・・・。
 それと、各所でこのカメラのファインダーについて語られていますが、その意味が使ってみて分かりました。要するに、ファインダーで“見えたまま”の写真が撮れるんです。
 このことは一見、当たり前のようなことですが、ぜんぜん当たり前ではないのです。その証拠に、アナタがお持ちの距離計カメラのファインダーを覗いてみて下さい。妙に歪んで見えたり、変な色が乗ったり、暗くなったり、小さくなったりしていませんか?
 このカメラにはそれが一切ありません、実に一眼レフ的な見え方なのであります。逆光で構えればフレアーもゴーストもちゃんと見えます。うん?そんなら、いっそのこと一眼に行っちゃえばいいじゃないのなんて言わないでくださいヨ。なぜって、ホレホレ一眼レフなんて無粋なことこの上ないじゃないですか。
 えっ?そんなカッコつける前に、オマエ、ほかにカッコつけるところがあるだろうって?
 キャィン・キャィン・キャィ〜〜〜ン・・・・

2005.6.7


KONICA IIIAでの作例です

写真はすべてNikon Coolscan IVでネガフィルムを直接スキャニングした画像です。

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今回も、ご覧頂きありがとうございました。


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