Kodak NO.2 FOLDING AUTOGRAPHIC BROWNIE

モボの必携品だったかも

 私の蛇腹カメラ初体験は、中国製距離計連動の「海鴎203」というカメラでその顛末はこのコンテンツの「海鴎203」に書き込んである通りですが、その後、日本製の「Welmy Six」をいじってみて今度は、目測蛇腹カメラの面白さに目覚めてしまいました。
 両機ともブローニー判なのですが、何と言ってもレンズを収納して折りたたんだ状態の薄べったいコンパクトさはスプリングカメラの最大の特徴で、ジャケットのポケットなら容易に入れて持ち運ぶことが出来ますね。
 これはものぐさな小生には、もってこいの利点で普段の外出でも気軽に持って出かけることが出来ます。これが同じブローニーでも、二眼レフとなるとちょっと気軽にというわけには行かなくなるでしょう。
 というわけで、近頃蛇腹式カメラが気になってしょうがないんですね。どうせこの沼に填るんであれば歴史的に辿った方が理解しやすいかもと、次に選んだカメラが今回の主役「Kodak NO.2 FOLDING AUTOGRAPHIC BROWNIE」という何とも長い名前のカメラなのであります。 こんな名前アメリカ人ならいざ知らず、日本人には一度や二度聞いたくらいでは覚えられません。
 蛇腹カメラの歴史と言うことになると、それこそ乾板を通り越して湿板の時代までさかのぼってしまうわけで、それでは大事になってしまいますのでそこまでは遡れません。では何故このコダックのカメラに目が向いたかというと、「ブローニー」がキーワードだったのです。ブローニーフィルムだったら現在でも容易に手に入りますからね。
 文献によると1918年、米国コダック社がこのカメラの開発に合わせて、120型ブローニーフィルムを最初に発売したとあります。
 そうなんです現在まで生き残ってきた120型ブローニーフィルム誕生のきっかけとなったカメラがこのアメリカ製「Kodak NO.2 FOLDING AUTOGRAPHIC BROWNIE」というカメラだった訳です。
 戦前、 戦後そして現在まで、いろいろなフォーマットのカメラとフィルムが誕生しましたが、現在及び未来へと確実に残って行くであろうフォーマットは、ライカ判とブローニー判なのではないでしょうか。日々何気なく使っているブローニーフィルムではありますが、何と80年近くも昔のこのカメラが120フィルムを使う最初のカメラだったんですね。
 さて、このコダックのカメラ、蛇腹式ではあるのですが、いわゆるスプリングカメラではありません。名称にもあるようにフォールディングカメラなのです。
 スプリングカメラのように小さなボタンを押すと前蓋が開いてレンズが飛び出して固定されるのではなく、前蓋を開けて置いてから2本のレールに沿ってしずしずとレンズ部を引っぱり出してセットするのです。この辺の所作はいかにも写真器という感じ。しずしず引き出すところが何ともいいですね。
 元々ロールフィルムの開発の狙いは、写真を職業とする人たちのためではなく、一般市民に写真機を普及させるために開発したんですね。 このカメラを仔細に観察するとその辺の狙いが見えてきます。
 まず、フィルムの装填ですが、カセット式の光学部分がそっくり外れますので、あっけないほど簡単に女性でも子供でも出来ようになっています。何一つコツや器用さなんていらないんです。これが80年も昔のカメラとは思えないほど合理的な設計がされています。
「オイッ、そこの裏蓋外してゴチャゴチャやってるライツだかライカっていう奴、良く見習っておけっ!」と言いたくなるくらい、上手な設計です。
 フィルムの装填が終わると撮影にためのレンズを引き出してくるのですが、2本のレールに沿って最初のラッチで止まる位置があります、この位置に1.5ミリほどの米粒より小さな字で30メートルと指標が打ってあり、いわゆる近代のカメラでいうところの無限遠の位置になっているのです。
 更に2ミリほど先にラッチがあります。この位置にも指標があって2.5メートルと表示してあります。この位置が最短撮影距離なんですね。 というわけで、このカメラは最短と無限の2段切換ができるのです。スバラシイ!! それじゃ5メートルの場合はどっちにセットするの、なんてことは聞かないで下さいね。私にも解りません。要は家族の肖像を撮る場合は2.5m、景色を撮るときは30mでということなんでしょう。 どうです、ファミリーカメラとしてはこれで十分ではありませんか。

 今度はレンズの周囲を見てみましょう。レンズはシャッターを挟んで、前後に1枚ずつの2枚構成なんですが、このようなレンズ構成は何というのでしょうか。私の経験では、もっともシンプルなものです。
 レンズボードのてっぺんに機関車のライトのよう物がありますが、これファインダーなんです。上から覗いてみると、何か見えるのですが何だか小さすぎてよく分かりません。しかたがないので、虫眼鏡を通して見てみると確かに前方の景色が映っています。その窓が十文字の形になっていて、縦位置横位置に対応しています。ただ69のフレームにしては寸づまりの感がありますが。
 レンズの周囲には、真鍮製のプレートがネジ止めされていてそこにまたまた小さな文字がいっぱいあります。
 上から見ていくと25.B.T.50とありますからコレはシャッター速度指標ということが解ります。更に見ると25の下にクリアーって書いてあります。晴れの時はココよ、と示しているんですね。
 反対側の50に位置にはブリリアントと書かれています。こちらはそれよりもっと晴れということでしょうか、変ですね、快晴とでも訳すのでしょうか、済みません、英語は全く苦手なもので。
 そしてBとTのところには、グレイ(曇り)や暗所での秒数が表示されています。何と解りやすい!
 下の方には、6.4から64までの数字があります。絞りの指標ですね。ココにも各数字の上に色々書いてあるんですよ。面白いので読んでみましょう。
 まず、6.4の所には、ポートレイトとあります。はは〜ん、なるほど、肖像写真は絞りをいっぱい開けてバックをぼかして被写体を浮き上がらせろということなんですね。
 8の所には、アベレージビューとあります。中距離の被写体というこでしょうか、16ではディスタントビューとあります。遠景ですね。
 更に32では、マリーン、海上の風景、64ではクラウズ、空を撮るときよ、まぁーなんと親切な説明ぶりでしょう。
 してみると写真における速度と絞り関係は大昔から現在まで何一つとして変化していないんですね。(当たり前か)現代カメラの液晶によるピクトグラム絵文字よりよっぽど解りやすい!
 この辺が如何にも市民カメラを標榜したコダックらしい作りですね。
 ところで名称にある「オートグラフィック」とは、何を以てオートなんでしょう、全て手動で決めなければならないのですが・・・ワッカラないなぁ〜英語は!

 ということで、レンズ2枚、シャッター3速、絞り6.4から64、何だか心許ないファインダーを持つこのカメラで写真を撮ってみましょう。
 気分は、大正末期、モガ・モボになれるかも・・・。(嗚呼、また何と例えが古いこと・・・)

 


全てを収納すると、とても69フォーマットのカメラとは思えぬほど小さく
ペッタンコになってしまいます。このコンパクトさが蛇腹のいいところ、止められません!



構造は、光学部分とフィルム室部分の二つのユニットからなっています。

レンズ周りのアップです。
この小さなプレートの中にいろいろな情報が詰まっています。

 

Kodak No.2 Holding Autographic Brownieを使ってみました。

試写の作例なので、スキャン時にアンシャープマスク等の画像処理は加えていません。
トリミングはせずフルフレームの状態です。


最初の試写です。蛇腹のピンホールは充分修復したつもりでしたが、まだ上部の方に幾つかあるようです。
再度点検の結果、やはり数カ所のピンホールが見つかりました。


2回目の挑戦です。湘南平塚の七夕祭りに連れていきました。
まだ少し光漏れがあるのかなぁ・・・


ファインダーはあって無きにごとしなので、どのカットもノーファインダー状態での撮影です。
でも何とか写っているので安心しました。関東では夏の名物行事なので、カメラマンの数も異常なほどです。
F5、EOS1Vの砲列に混じってこのカメラで撮影している私を見た周りのカメラマン達は、明らかに侮蔑の視線を送ってきます。
1年前の私なら、恥ずかしくてこのような場所では、絶対手にできなかったカメラですが、今は全く平気なんですね。
私の病はかなり進行してしまったようです。羞恥を司る脳の神経まで冒されているようです。


このカメラが現役の頃には、カラーの感材などあるわけないのですが、試しに使ってみました。
結構自然な色再現にビックリ!フォーカスのセットは2.5m(それ以上は無理)ピンがかなり後ろに行ってしまいました。

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