Minolta Hi-matic 7s

ISO100って、おもしろい

 私が17歳の頃(1965,6年頃)、夏休みのアルバイトで森永のアイスクリームをお店に配達する仕事をしていました。
 早朝、品川の海岸沿いにある冷凍倉庫から、ダイハツ・ミゼットの保凍車にアイスクリームをギッシリ積み込んで、駄菓子屋さんやパン屋さんに配達して廻るのです。
 なんたって16歳になるのが待ち遠しくて、誕生日になるやいなや、試験所ですぐに取得した自動車免許ですから、タイヤがあってハンドルが付いているものなら、どんな自動車でも乗りたくて乗りたくてしょうがない時、もう運転できるのなら、ミゼットだろうがトラックだろうが何だってよかった訳です。

 仕事を始めて2週間くらい経って丁度、お店やコースに慣れた頃、事件は起きました。
 その日は、朝からカンカン照りの晴天で凄く蒸し暑くて、私もフゥ〜フゥ〜言って、午前中の配達を終えて品川の倉庫に戻ったのです。
 保冷車と言っても冷えているのは荷台のアイスクリームだけ。ミゼットの運転席にはクーラーなどあるわけは無く、まして尻の下には空冷単気筒のエンジンがビィ〜ンビン唸っているわけですから、そりゃぁもう、熱いのなんのって焦熱地獄そのもの。
 首に掛けたタオルで汗を拭き拭き、事務所にはいると2台ある電話が鳴りっぱなし!
 あまりの暑さで、どこのお店もアイスクリームが売れに売れ、品切れ続必。アッチでもコッチでも「早く持ってこい!」のSOS状態です。

 結局、このアルバイトの唯一の楽しみであった大盛り仕出し弁当も食えぬまま所長に拝み倒され、午後の配達に出されてしまったんです。
 それでなくても、喰い盛り育ち盛りの真っ最中、「死んじゃうヨォ〜・・・」と心で叫びながら仕方なく、積み荷の箱をほどき、アイスを2,3個口に放り込みながら、渋々走り出したんです。
 品川を出て、魚藍坂から六本木、四谷のジジババ(駄菓子屋さん)に荷を降ろし、あとは南青山のパン屋さんに届ければ今日は終わり、「あと1軒、あと1軒」と少々急いだのが原因だったのでしょう。
 千駄ヶ谷から神宮の銀杏並木に入り、青山通りへ出ようと突き当たりの信号を見ると青。「うん、こりゃぁ間に合うゾ」とばかりアクセルを踏み込んで交差点に入るや、小さなタイヤがキッキィ〜と悲鳴を上げた瞬間、ミゼットは哀れコロ〜ンと・・・。

「ウッヒャァ〜〜、やっちゃたぁ〜・・・」
 転んだはずみで、保冷庫のドアが開き、アイスクリームの入った箱が交差点に散乱。
 幸い、自分自身は擦り傷一つしませんでしたが、これが生まれて最初に起こした交通事故(?)。
 
泣く泣く一人でミゼットを起こし、積み荷を拾い集め、「えぇ〜い、クッソ〜」と記憶に残る一日になってしまったわけです。
 もしこの時、もう一人の自分が居たら、その一部始終を写真に撮っておきたかったですね。

 そんな辛く苦い思い出を作っていた当時、日本のカメラ業界で華々しい売り上げ記録を更新していたカメラがありました。それが今回ご紹介する「ミノルタ・ハイマチック7s」です。以前に、ご紹介していたハイマチック7に更に「s」を付けて新装なった写真機です。
 この「s」一文字がお尻にくっついてどう変わったかというと、実はほとんど変わっていないんです。先代がヒットして順調に売り上げを伸ばし、3年経って少し頭打ちになってきた。そこで少し手を入れて売り上げ維持を狙ったのでしょうね。
 レンズも同じ、シャッターも同じ、ファインダー関係も見た目ではまったく同じですね。
 細かいところでもいいから、どうしても違いを探せと言うことであれば、「s」のほうにホットシューが搭載され、新型フラッシュとのマッチングが容易に出来るようになったこと。レンズのトップリングに黒塗装が施されたこと。しかし、トップカバー両サイドのアイレットの処理が幾分安っぽくなっちゃいました。こりゃ明らかに「s」なしの先代の方が格調高くていいですよ〜・・・。
 ですから、結論を言ってしまえば、よほどのミノルタマニアでない限り、どちらか1台を持っていれば用が足りると言うことになります。
 わたしの場合は、ロッコールと言うレンズに異常とも思える執着がありますので、たとえ小さな「s」でも有ると無いでは気になって仕方がない。こういう人間は両方がないと腰の据わりが悪いというか、どうも落ち着かないのであります。
 もし、あなたにお薦めするとなれば、断然「s」なしの先代の方ですね、なんたって全体の意匠に格調が有りますから・・・。

 今回、わたしが使った個体は珍しく新品時の状態で各機能が生きています。ボディやレンズも傷一つなくピッカピカ。おまけに牛革で出来た黒い革ケースまで新品のごとくピッカピカ・・・・前の持ち主がほとんど使用せぬまま、死蔵させておいた物のようです。
 それで、折角Cdsも元気なことなので、すべてオート撮影で撮ってみました。で、フィルムは敢えてISO100を選択。これは、このカメラが現役だった頃の標準感度だったと言うこともありますが、もう一つの理由は100って、とっても面白いの。
 ISO400入れてオートで使うと、まず期待通りというか予想通りに撮れちゃうでしょ、ところが100を入れてオートで使うと、光によってはメーターぎりぎりの所で頑張る場合があるんですよ。ここが面白い!ちょっとしたスリルが味わえます。当然、絵にもそのスリルが写ります。ここが更に面白い!いま、オートが使えるカメラで低感度フィルムを使うのが「マイブーム」ってヤツになってます。

 

2004.10.13

 

Hi-matic 7sの作例です

今回の作例:Neopan SSをミクロファインで標準処理。
Nikon coolscan IVで取り込んだスキャン画像です。

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