FUJICA AUTO-M

カメラ分解コトハジメ

 今になって思えば、このFUJICA AUTO-Mに中古カメラウイルスが40年間ひっそりと住み続け、自身を増殖させるための宿主をしぶとく待っていたカメラだった。
 それまで「カメラなんて新しい方がいいに決まってる」と古いカメラなど全く見向きもしない健康体だった私が、何年か前のある日曜日、久しぶりに妻の実家を訪れ、一家で古いアルバムを見ながら昔話に興じていた。
 そこに貼り付けられていた40数年前のプリントはモノクロとカラーの混在した妻の幼少期の記録だったが、どのプリントを見ても解像度やコントラストが良く相当上等なカメラで撮影し、腕の良い職人に現像してもらったものかと訪ねたら、そんなことはないといって義母が押入の奥から黒い皮ケースが真っ白にカビたこのAUTO-Mを引っぱり出してきて、ほとんどの写真がこれで撮ったものだと言って懐かしそうに私に見せた。
 30数年使わずにしまわれていたこのカメラはその時、ほとんどの機能が固まっていてただの金属の塊にすぎなかったが、アルバムの写真にショックを受け、もう一度このカメラで写真を撮ってみたいと言う思いが膨らみ、譲り受けてしまった。

 早速近所のカメラ店で修理を依頼したが、今では部品がなく修理不能とのこと。ほかを数件あたったがどこも同じ返事で諦めざるを得なかった。
 こうなるとあのとき見たプリントのショックが思い起こされ、プロも匙を投げたんだからと、ダメモトで自分で分解を始めたのがこのウイルスに感染したきっかけとなった。
 今までカメラといえばフィルム装填のために裏蓋しか開けたことのない自分に修理などすぐにできるはずもなく、この日から悪戦苦闘の毎日。
 その間、精密ドライバーやらカニ目レンチやら見たことも触ったこともない道具達がだんだん揃い、とうとう3ヶ月目にはレンズ・ファインダーはクリアーになり、セレン電池も生き返りシャッターも開くようになった。次の休日、家の近所を手当たり次第に1本撮りまくり、すぐに30分仕上げのDP店に持ち込み、その場で上がり見て全身の力が抜けるほどの感激を味わった。
 まあ現在の感材の進歩にも因るが、予想を遙かに超える見事な写りに今までの苦労は完全に消し飛んだ。しかし冷静になって思うに、ここまで要した時間と費用で最新のデジタルカメラが買えたのは事実だが、今となっては新型フルオートカメラには、何の興味も沸かなくなってしまった。
 恐るべし、古カメウイルス。皆さんは、どんなきっかけウイルスに冒されたのかそこを伺ってみたいです。

 さて、このカメラ、今では目をつぶってもバラせるくらい修理調整のため何回も分解したが、シャッターと絞りを動かすためのユニットは、一切電気に頼らずメカで幾つもの金属部品がまるで時計の中身のように積み重なって動いている。
 そのパーツ一つ一つが高品質・高精度で機械と言うより芸術作品のオブジェを見ているようで感動する。
 一枚の適正露出の写真を得るためにこれだけの部品が一斉に蠕動していることを想像すると、安易な気持ちでシャッターは押せなくなる。

 軍艦部の上面 は真っ平ら。シャッターボタン、露出補正ダイヤルそれとアクセサリーシューのみ。
 スマートさを狙っているのだろうがどの角度から見てもデザインは野暮ったい。スマートさには欠けるが、作りは質実剛健でとても丁寧。
 左側にプレスされた「Fujica35 AUTO-M」のロゴはレトロでいい感じ。
 露出補正ダイヤルセンターに付いていた黒いレザーカバーは度重なる分解の末、どこかに紛失してしまった。

左サイド面に付いている巻き上げノブ。実に凝ったメカニズムだがさりげない。

購入後10年の間、酷使され革ケースはボロボロ。
現役時はしっかり仕事をしてくれた上、40年たってまたも二度目のお勤め。
これってカメラにとっては、幸せなことなんだろうか。



FUJICA 35 AUTO-Mの主な仕様
発売年度・価格 1962年 16,000円
レンズ FUJINON-R 47mm f2.8(3群4枚構成)
シャッター COPAL MAGIC B・1ー1/500秒
露出計 セレン光電池メーター
焦点調節 距離計連動前玉 回転式
ファインダー 採光式ブライトフレーム、パララックス自動補正
大きさ・重さ 幅140・高さ88・奥行き73mm 720g
主な特徴 世界初の複式プログラムシャッターを搭載したカメラ    

ビュッカーさんの報告

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