Ricoh ELNICA 35

中途半端な時代の中途半端なカメラ

 人間も満40歳になると「不惑」なんて言ったりしますね。「私もついに不惑の年になりまして・・・」何て言ったりします。
 不惑とはご存じ「論語」の中に出てくる「四十にして惑わず」という記述から引用したものですが、この言葉、現在の日本ではとても通用する言葉ではないですね。
 先が一向に見えてこない大不況の中、現在の40代はリストラ・倒産に怯え、不惑だなんて泰然自若にしていられる状況では無くなって仕舞った訳です。精神的にも毎日がグラグラと揺れ動く始末で、惑いっぱなしというのが正直なところではないでしょうか。何せ50をとうに過ぎた私が不安定な日々に戦々恐々としているのですから・・・。(情けない!)

 先日も写真機メーカーの老舗中の老舗「RICOH」が銀塩カメラからの撤退を断行したのは皆さんもご存じのことだと思います。リコーほどの大メーカーになると、銀塩カメラ部門に携わっていた人々は下請け会社を含めると千人規模であるとは確かでしょう。その方々がすんなりデジタルカメラや事務機部門に移行できるはずもなく、当然リストラクチャーが生じたことは容易に想像がつきます。
 私が少年の頃、最初に手にしたカメラが「リコレット」、学生時代のデートには「ハイカラー35」・・・そして現在この年になっても孫撮り専用に「R1s」、旅行には「XR-7」といった具合で、生粋のリコーファンとしては今回の銀塩撤退が残念と言うより、この先どうしようと困惑している始末なのであります。
 この先リコーの銀塩カメラが手に入らないとなれば、今の内に買って置かねばと、先日以前からR1sのスペアーとして狙っていた「MF-1」というコンパクトをヨドバシカメラに買いに行きましたが1台として残っておらず、見事売り切れ!更に驚いたことにはMF-1以外にも「RICOH」のロゴマークのついたカメラは全て売り切れ、まったく残っていなかったのです。ヒェ〜〜、世の中には私なんか足元にも及ばないリコーファンが大勢いたんですねぇ、いやぁービックリしました。
 そうかぁ、現行のリコーカメラが入手困難となってしまってはリコーの中古機に目を向けるしかないなぁ〜。(本HPをご愛読いただいている皆様、以上のような次第で今後はリコー製の昔カメラが度々登場することになると思いますが、お付き合いの程よろしくお願いいたしますね)

 というわけで今回壇上へ上がっていただいたのは「リコー・エルニカ35」、中途半端に古い昭和47年(1972年)に誕生したカメラです。
 この年、田中角栄さんが総理大臣に就任したんです。皆さんまだ覚えているでしょ、日本列島改造論をブチ上げちゃって就任当時の人気は凄かったですね。角さんならこの日本を何とかしてくれるかもと国民の期待は一気に膨れ上がりました。日本列島改造の御旗の元、国家予算を蒔くだけ蒔いて公共事業をフル稼働させ、ある意味で日本のインフラ整備が進んだことは彼の功罪の功の部分でしょうが、今となってはこの大不況の遠因はあの時から始まっていたのかもしれません。

 さて、このカメラをよ〜く見ていると遠くの方にキヤノンの「キャノデートE」が見え隠れしてしょうがないんですね。いわゆる印象がダブるってヤツです。
 細かな部分を一つ一つ取り上げれば共通するのはシャッターが同じようなグニュグニュした感触の「セイコーFSシリーズ」ということ位しかないのですが、見るに付け使うに付けどうも同じ様な味がするのです。
 調べてみると、なるほど合点がいきました。このエルニカ35にはキャノデート同様に日付写し込み機能を搭載する予定で開発されたカメラだったらしいのです。(リコーがそう言っているのですから間違いないでしょう)
 寸法や重量はほぼ同じ、基本的なレイアウトもそっくりなのです。そうか出発点のコンセプトは同じだったんだ。しかし、日付写し込み機能の開発が遅れに遅れて結局上手くいかず、この目玉になったであろう機能を載せないまま見切り発車・・・この辺がリコーらしいといえばリコーらしいのですが、何とも特徴のない中途半端なカメラになっちゃった訳です。
 この両者の決定的な違いはカメラにとって一番大切なレンズに相違があります。
 キャノデートEは3群4枚40/2.8テッサータイプを前玉回転式で使って実に軽快に使えるカメラに仕上げていますが、こちらはダブルガウスの大口径4群6枚40/1.8という大層贅沢なレンズをヘリコイドを用いて使っています。
 さらに前述のシャッターですがこちらは2秒から1/1000秒で作動する「セイコーBFS」、キャノデートの方はひと味違う4秒から1/500秒で切れる「セイコーEFS」。従って絵作りに関しては趣がかなり違っていて、こちらは線よりもトーンを重視した重厚な写真になります。
 ただねぇ〜スタイルがどうもいけません。
 こんな重厚で上等なレンズとシャッターを載せていながら、何の工夫も感じられない平凡な形・距離計窓の周りに乳白色の格子模様が彫り込まれたプラスチックパネルなんかくっつけちゃって、もう許せないほどのペナペナさ、何とも安っぽく軽々しい仕上がりになっていますね。
 幾ら他社が真似の出来ない製品作りを目指す会社とはいえ珍しいですよ、これほどまでにチープな造形物を造り上げるメーカーも。そこがまたリコーらしいといえばそうなんでしょうが・・・。
 そのせいかどうか撮影範囲を示すブライトフレームなんかキャノデートのパッチリクッキリとは雲泥の差、ポアンと薄くて見難いことこの上もありません。

 とまぁ、苦言ばかりを並べ立てましたが、これもリコーカメラを愛しているからこそのこと。
 これで撮影結果が良ければスタイルのことなど目を瞑れますが・・・キャノデートEと併せてご覧下さい。

2004.4.9

 

ELNICA 35の作例です

以下の写真は、モノクロはILFORD DELTA 400をエヌエヌシー社のナロファインで標準現像処理
カラーはAgfa Vista 100を純正現像
Nikon Coolscan IVでネガフィルムを直接スキャニングした画像です。

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