Canon Autoboy TELE


設計者のわがままいっぱい、こうゆうの大好き
 
先週のこと、かれこれ1年ぶりくらいにインターネットオークションで、写真機を買ってしまいました。誰もが通る道の「カメラ欲しい欲しい病」もようやく一段落してきて、さてこれからは特に気に入ったカメラのスペアーというかリペアー用に同じモノを気の向くままポツポツ揃えていけばいいかナァなんて思っていたところ、滅多にお目にかかれない大好きな単玉2焦点カメラの「フジ・テレベネ」が出品されていたものだから、反射的にスイッチを押しちゃたんですね。
 で、この出品されていたテレベネ、2台一括りの片割れで、それも「どうでもいいから、コレも邪魔なので一緒に貰っててちょうだい!」的なオマケ扱いの品。
 メインの方は「キヤノン・オートボーイ・テレ」と言うカメラでね・・・そりゃぁ、誰が見たってオートボーイの方が作りは立派だし、イチリュ〜メーカーのキヤノン製だし、それに手に持ったときの重さが全然違うわけですよ。
 もう、カメラに関しては毎度言いますが重さが違うというのはボクの場合、決定的でね、テレベネはスッカスカの170gでオートボーイの480gに比べたら1/3近い軽さ。それに作りだってテレベネは最安プラスチックのペナペナですから、誰が見たってメイン商品はオートボーイで異存のないところ。
 まっ、でもそんなことはどうでもいいのです。誰が何と言おうとボクにとってはテレベネが手に入りさえすれば・・・・ネ。

 それでオークションのスタート価格は、なんと1円から始まったのですよ。まぁ、その安さに引き寄せられてビッドしちゃったのが一番の理由。しかし、1円のまま終了するはずはなく、たぶん、一応3,000円前後での決着だろうと予想をしていたのですが、終盤になっても誰一人ライバルが現れずに、あれよあれよ、なんとなんと結局1円のまま終了してしまったのですよ。
 「えっ、ええぇ〜・・・、こんなことってあるの?」と、ボクが思ったのは当然ですが出品者も注目度を高めるために思い切って1円の設定を決めたのであろうことが、まさか、1円のまま終わってしまうとは・・・。
 それでもって、首を傾げつつも落札金の「1円」を210円の振り込み手数料と共に矛盾を感じながらATMから送金すると、なんと翌日にはカメラが到着してしまったのですね。そして、すぐさま後を追うように出品者さまから『落札者の評価:非常に良い落札者です。ご入金・ご連絡ともに素早く、迅速にお取引を執り行う事が出来ました。ありがとうございました。また、機会がございましたら、宜しくお願い致します。』なんてコメントまで頂いちゃって、別になんにも悪いことをしている訳じゃないんだけれど、ちょっと申し訳ないというか後ろめたいというか、複雑な気持ちになる買い物をしちゃったなぁ〜、せめて、キモチとして1,000円くらい送るべきだったかナァ〜、などと反省までしちゃったりして。

 到着したお目当てのテレベネは、埃だらけ傷だらけのボディでかなり乱暴に扱われていたようです。おまけに何年も仕舞われていたようで4箇所あるスライドノブがすべて渋く動かし辛かったのですが、シリコン油をチョイチョイで滑るように軽くなりました。肝心のレンズ(ったって1枚しか填っていないのですが)やシャッター、電池室、フラッシュ機能はすべてセーフ、5,6コマ、フィルムを切って試写してみましたが、期待通りに写っていました。これで、テレベネは2台体制完了、一生安心だなと・・・。(シャッター回りは単純なエバーセットだし、絞りも大小の穴プレートが感度ノブで上下するだけだから、何年経っても壊れようがない、プラスチックが経年劣化でパラパラに朽ちるまでは使えるはずですヨ)

 さて、ボクにとってはオマケの方だったもう一方の「キヤノン・オートボーイ・テレ」と言うカメラ、こちらは逆に別売りだった純正ケースにまで収められていて、ボディもピッカピカ。シャッターボタン脇に付いているちっちゃな液晶パネルには「電池残量満タン」のサインまで出ていてラッキー!
 しかし、スイッチをONにしてもウンともスンとも反応せずで、ん、何、これはジャンクかと・・・そして裏蓋に開いているフィルム確認窓を見ると、あれれっ、フィルムが入っているのが分かります。何枚か撮影済みなのかな、フィルムカウンターの液晶表示が消えているので、状況が分かりません。とりあえず、巻き戻して現像だけでもしてみようかしら・・・と。
 途中巻き戻しのノブにボールペンの先っぽで突っつきますが、やはり反応ナシ。こりゃ、困ったな、開けちゃえばフィルムはパァ〜になっちゃうし・・・・、万が一ということもあるので、一応電池の抜き差しだけでもやってみましょうかね。
 ということで、電池室の蓋は何処なのと探しますが、これが何処にもない!形状からすると、左側グリップ部が電池室の定石場所、しかし、この回りに蓋らしいもの、ドアらしいものがまったく見あたりません。おいおいおい、どうなってんのよこのカメラ?オートフォーカスって書いてあるし、フィルムだって巻き上げレバーが無いんだから、モーター駆動でしょう、ということは間違いなく電動カメラだと思うのですがね。
 いや、もしかすんと、裏蓋を開けると電池室に行けるのかな、おぉ〜、きっとそうだ、そうなんだ、そんなカメラをどこかで見たことがあるゾ。と、勝手に解釈しはじめます。しかし、いま開けちゃうと入っているフィルムが感光しちゃうなぁ、仕方なく夜まで待つことにしましょう。(ボクの暗室は自然と共にあるので、闇夜が来るまで暗黒が得られないのでございます)

 半日待って、暗闇の中、裏蓋をパクンと開けてみます。フィルムをなんとか取り出しパトローネに巻き戻してから、明かりを付け、中を覗きますがやっぱり電池蓋らしきものはないではありませんか。「うむっ、なにをぉ〜〜・・・!」こうなると、ニンゲンだんだん腹が立ってきますね、「クッソォ〜、たかがオマケのジャンクカメラのくせしやがって!」と、思いも寄らぬ方向に憤怒のやりばを向けていったりなんかして・・・。
 こうなったら、考えられるのはただ一つ、まさかとは思いますが、左側面のボディパネルを止めている上下2本の+小ネジ、コイツが怪しいゾ。しかし、電池室を小ネジで固定しちゃいますかネェ・・・?と、半信半疑で2本のネジを外すと、案の定、現れました、2CR5リチウム電池が。おぉ〜、キヤノンともあろうエリートエンジニアさま達は何をよかれとして、電池を封印してしまったのでありましょうや、この設計は納得がいきませんよ、ボクには。
まぁ、そのことは後日再考することとして、とりあえずターミナルの接触を回復させるべく数回抜き差しを試しますが、カメラは相変わらず静かに押し黙ったまま・・・・?
ちょうど、手持ちに新品の電池があったので、試しにそれを差し込んでみたところ、一気にいろんなところがジィ〜ジィ〜パコパコと。
 なんだよぉ、電池切れだったのか、しかし、電池残量のインジケータはFULLを示しているのにヘンですネェ?

 さて、カメラが動き出したところで、落ち着いて仔細に観察すると、何ともヘンに凝ったカメラですよ、この「キヤノン・オートボーイ・テレ」というのは。
 まず、「TELE」と銘打っているんだから望遠レンズが装備されているんですが、これがじつに凄いの。あの電気仕掛けロボットカメラ「ナショナルC-D700AF」もまっ青になるほどの仕掛けがレンズ筒に隠されています。カメラ背面の右手親指が来る位置に小さなスライドスイッチがあって、それをチョンと押し出すとレンズ筒自体がモーター力を使って凄い早さでガシャーンと飛び出してきて望遠レンズがセットされます。で、そのときに外側からでは見えないのですが、WIDE時に3群4枚だったレンズ列が瞬時にして6群7枚に、これまた電気力でチャッチャとセットしているらしいのです。そんな細工物を詰め込んであるのでレンズ筒の右側が妙に出っ張っているんですね。
 べつに、広角から望遠に切り替えるのに、手動でやってもまったく差し支えなのですが、こうゆう”与太な努力”に痛く感動しちゃうんですよね、ボクは。
 ぜんぜん合理的でないことに拘るとか、エネルギーを注ぐというのは無駄と考える人もいるのでしょうが、情緒的な豊かさというのは多くの場合が、合理とは反対方向に有りますでしょ。まして、実用とはいえ趣味の写真機ですから、このような技術的与太はこちらの写欲を増進してくれる良いお薬なのですよ、ボクの場合はね。

 それともう一つ、気に入ったのが広角側40ミリ・望遠側70ミリという一見中途半端と思える焦点距離。焦点距離40ミリを広角と呼ぶには少々疑問もありますが、通常、広角側はたいてい35ミリ前後にセットしちゃいますが、それをあえて避けて40ミリまで伸ばしちゃった。この設計者は何を思ってそうしたのか、そのコンセプトを今となっては知るすべがないのですが、35ミリだと、もうかなり「広角の匂い」が絵面に漂ってきますでしょ、しかし、40ミリまで引っ張ってくるとその匂いは消えて、ニンゲンの視野にかなり近づいてきます。すなわち、無理をしていない自然な視野の写真が作れるわけですよ、こりゃ嬉しい配慮ですね。
 よくコンパクトカメラでも28ミリなんて極端に広いやつを有り難がる人がいますが、実際に使ってみると難しいですよ、ボクなんか絵がパラパラになっちゃいますもんね。
 そして、望遠側の70ミリ、これはもうお馴染みポートレイト用ですから言うことがありません。一応、80年代のカメラですからファインダースクリーンだって焦点切り替えスイッチでリニアに切り替わりますので、使いにくいことはないのですが、パララックスだけは自動というわけにはなっていませんでした。

 ファインダー接眼レンズを挟んで右側が広望切り替えスイッチなのですが、左側にもスイッチがあってこれが便利な「フラッシュ操作スイッチ」になっています。つまり、フラッシュ光を如何様にもコントロール出来るような仕組みで、強制発光・自動発光・発光停止と各モードの選択が可能に。ただ、時代が時代だけにまだズームフラッシュとはなっていないようで、望遠側にしても40ミリのままの照射角で発光してしまいます。つまり、光の無駄が生じるわけで、GN10.5しかない光量ですから距離が稼げなくなるわけですね。
 ただ、感心するのはそれを補うレンズの明るさで、40ミリ側f2.8でEV6(1/8秒)まで測光可能、70ミリ側でもf4.9(1/3秒)まで開きますから、結構、自然光のままでそこそこの雰囲気ある写真が気軽に撮れちゃいます。このあたりは、初代のオートボーイのレンズの系譜をまだ引きずっているようで、好感の持てるところでもありますよ。

 さてさて、「ヘンに凝ったカメラ」の説明はこれからですよ、もう少しで終わりますからガマンして読んでくださいね。
 まずはね、レンズ先端に40.5mmのネジが切ってあります。昔のカメラはどれも当たり前にリングネジが切ってありましたが、プラカメ時代になるとデザインの関係もあるのか、どんどんそのサービスが無くなっていきましたね。しかし、これにはちゃんと切ってありますからSLだろうがUVだろうが、はたまたPLだろうがどんなフィルターだって、またフレアーが出そうなときはフードだって付けられます。この「ねじ切り」は設計した人が拘ったわがままの一つなんでしょう。
 でもって、もう一つ拘ったであろう箇所が、カメラの両端に付いたヒモ掛け用のみみ。オートボーイは初代からヒモ掛けが片側になっちゃって使いにくかったのですが、ここへきてまた両みみに戻してくれました。コレは小さなことかもしれませんが、やっぱり早くカメラ操作をするときは両吊りの方が断然使いやすいですよね。しかし、両みみに戻ったのはこのカメラだけで以降の製品からはまた片側ストラップに変えられてしまいましたね。

 さて、レンズ筒の右側にはギザギザの付いた小っちゃな半円レバーがあるのですが、これがレンズバリアーを兼ねた電源スイッチになっています。そしてこのスイッチには面白い仕掛けも隠されていて、1段下げるとバリアーが上がって電源が入ります、そしてもう一段下げると、なんとなんとソフトフォーカスフィルターが出てくるのでありますよ。せっかく、ポートレイト用の70ミリ付けたんだから、ソフトフォーカスでも撮りたいよネェ〜っていう設計者のわがままがここでも出てきましたよ、こうゆうの好きだナァ〜、こうゆうの嬉しいナァ〜・・・。
 それにボクとしても、ソフトフォーカスでシャシンをしたことがないので、興味津々、40代のご婦人を撮るとちゃんと目尻の小じわを消してくれるのでしょうか、うぅ〜む、早く試してみたい!

 さらに今度はボディ正面右側にあるちっちゃなスイッチに注目してみましょう。
 ここには上下に長楕円形の2つの押しボタンがありますが、上の黒い方は「ME」と記されています。エムイー?ミー?・・・ミーかっ、よく女の子がやっている自分撮りでもするときに押すとキレイに撮れるとか?はて何を操作するものやら・・・。押しながらレリーズしてみるとシャッターが切れる音だけがします、フィルムを巻き上げていきません。ハッハァ〜、分かった!これはリコーのカメラによく装備されている「多重露光」用のスイッチなんですね。MEはミーじゃなくて、マルチエクスポジャーとかいう意味なのかな。
 ぼくは、多重露光で遊ぶのが結構好きなんですよ、当てが外れると意味不明の失敗写真にしか見えなくなりますが、うまく重なると訴求イメージの強い絵ができて面白いんですよ。もし、あなたが未経験でしたら、ぜひ、多重露光で遊んでみてください。ボクなりにコツみたいなことをお話しすると、重ねる被写体の距離を極端に変えてみると割とうまくいきます。引いて全体を取り込んでから、見せたいものにグゥーッとよってアップの絵を重ねるとかね・・・。
 そして今度は下の方の赤いスイッチ。これにはお日様マークのピクトが示されています。これはカメラ業界の共通マークで「逆光補正」のことですね。たぶん、1段半か2段くらい絞りを開けてくれるスイッチなのでしょう。
 しかし、この2つのスイッチはなんでこんなに小さくしたの?オマケにボディとほぼツライチなものだから、指先で探っても所在が分かりにくくて、まったくもって押しにくいことこの上ない!せっかく、ここまで面白いカメラに仕立ててきたのに、このエンジニアリングでぶち壊しじゃありませんかっ。

と、まぁ、祭り上げたり、こき下ろしたりグダグダと語ってきましたが、肝心な写りはどうなのか、下の作例をとくとご覧くださいませ。

2006.10


Autoboy TELEでの作例です

1. 40ミリ側で・・・極々肉眼視に近い焦点距離だと思います

2. フラッシュ使っています GN.10.5なのでISO100のフィルムでこの程度の距離だとテカらずに自然な感じに撮せます

3. 逆光補正のボタンを押しながら撮ってみました かなり効果がありますね

4. ついでにミーボタンも・・・アカン、失敗だわ!

5. 二つの焦点距離の差はこのくらいです

6. ソフトフォーカスフィルターを使うと・・・若い女性ではあまり意味ないみたい

7. ついでにカラーも キャノネット以来伝統の渋さはそのままのようです
最短撮影距離は約90センチまで これはテレ側で撮ってみました

 
8. 20年前のカメラですが、日付は2029年までセットされています まだまだ安心して使えますよ


いかがでしたでしょうか、なかなか遊び心があって面白いカメラでございましたでしょ。
ボクは大いに気に入ってしまいました、早速、スペアー用にもう1台・・・あぁ〜、また無限地獄の始まりだぁ!
このカメラ、お店のジャンクワゴンをひっくり返せば必ずや1台や2台は 転がっていると思います。
電池のインジケータがFullを指していても 電池切れになっていて、
ジャンク扱いになっていることがありますの、騙されないで拾ってあげてくださいませ。

今回も長い時間お付き合いいただき、ありがとうございました

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