Fujica 35ML

SS考

 わたしが写真機とつき合い始めた40数年前、写真フィルムと言えば富士の「ネオパンSS」と、こりゃぁもう定説のごとく決まっていたものだったのです。写真屋さんへ行って「フィルムくださいナ」と言えば黙ってネオパンSSが出てきたものでした。
 あれはどうゆうことだったんでしょうねぇ・・・当時は確かネオパンSS以外にもSSSとかサクラフィルムとか超高級な物では、コダクロームなんて言うのもあったように記憶していますが、フィルムと言えば必ずと言っていいほど「ネオパンSS」でしたね。
 一度だけ少年心の好奇心で「ネオパンSSSって、よく写るんですか?」と店のオジサンに聞いたことがありましたが、「これは露出が難しいよ」って・・・当時は、高感度がなんたるやの意味なんて理解できませんでしたから、オジサンの応えは大層正しかったわけです。
 当時は「露出が難しい」の一言は「手を出すな」と同義語。なので、二十歳を過ぎたあたりでしたね、SSSとお付き合いするようになったのは。

 その頃、わたしが使っていた写真機は「リコレットII」で、当然すべてがマニュアル(オートで撮れる「キャノネット」が出てくるのはまだずぅーっと先のことでした)。ピントはどうにかなっても露出の失敗は結構多かったんです。でも、写真屋のオジサンもそうした素人のミスを上手にカバーして焼付けをしてくれましたが、極端に露光過多のネガでは、救済に限界もありました。
 で、あれから40年、件の「ネオパンSS」は未だに存在しているのです。ライフサイクルの短い日本の商品としては記録的な長生き商品です。
 最初にこのフィルムが世に出たのは昭和27年(1952年)ですから、いやいや、なんと52歳!実に長寿なフィルムではございませんか。その間にパトローネやパッケージのデザインを幾度となく変えてはいますが、一つの商品としては他業種のものと比しても実に長命ですね。この長命を支えた理由は、一にも二にもその性能がユーザーに受け入れられていたからで、逆に言えば、ユーザーもネオパンSSと言うフィルムに万全の信頼を置いていたと言うことになるのでしょう。


当時のパトローネはこんなデザインでした。
これは36枚撮りですが、この他に20枚撮りというのもありましたよ。
一度、写真機にフィルムを詰めると1年近くはズゥ〜ッと入れたままでしたね。
昔は家族のイベントなんてそんなには無かったのです。

 一方で、富士には同感度で、「アクロス」と言うフィルムもありますが、それぞれ個性がかなり違うようです。
 富士の説明によればネオパンSSは「一般撮影用微粒子ネガティブシルム。広いラチチュードをもっているため、露光に少々過不足があっても画質を下げることはありません。豊かな階調と優れたシャープネスを備えており、安心して大型引伸しができます。屋内外を問わず、あらゆる撮影条件に適しているので広い分野での期待にこたえます。」となっており、他方、アクロスは「中庸感度、超高画質の黒白写真用ネガティブフィルムです。このフィルムは、ISO100としては世界最高水準の粒状性と豊かな階調、優れたシャープネスを備えていますので、ポートレート、風景写真、建築写真、商品写真から顕微鏡写真や複写用途に至るまで幅広い分野の撮影に適しています。また、優れた相反則不軌特性を有しており、低照度長時間露光による感度低下が非常に少なく、建築写真や夜景などの長時間露光の撮影では特に効果を発揮します。」との説明があります。

 今回は、この長寿フィルムに敬意を表して写真機ではなく、フィルムを主役として見ていただくことにしましょう。しかし、普通にやったのでは「写真機の話をしよう」の趣旨がねじ曲がってしまいますので、何か一つアイデアをひねり出さなきゃ・・・、そうだ、ここは富士写真機工業が最初にこのフィルムのために作った写真機で、写真を撮ろう。うん、そうだ、それに決定!!!
 ということで「ネオパンSSご長寿感謝記念」として選んだ写真機は「フジカ35M」。ところが、悔しいかな残念かな、今、私の所にはこの肝心のフジカ35Mが無いんです。うぅ〜っ、こんな大事なときに・・・しかし、フジカ35MLと言うまったく同じ形の写真機なら有りますので、今回はそれで我慢することにしましょう。

 わたしが、フジカと最初に出会ったのは「フジカ・オートM」という写真機。
 妻の実家の押入奥深くにカビまみれになっていたものを、貰い受けてきたものです。しかし、このことが後にわたしの写真人生を大きく狂わせることになってしまったのです。
 この写真機にはカビの菌と共に強烈なクラカメ菌というヤツが深く深く潜んでいたのです。この写真機と出会わなければ、わたしは今頃、デジタル一眼か何かを首からぶら下げて、極楽とんぼで極々標準的なカメラ人でいられたのですが・・・。
 この経緯についてはオートMの項で語っている通りですが、その写りにショックを受け、好奇と探求の心からフジカ35EE35SEと時代を逆行しながら、この道を彷徨い始めてしまったのです。この35MLもその流れで入手した物で、いずれは正真のフジカ35Mも触ってみなきゃと思っているのです。

 さて、この35MLですが、次世代のSE・EEと比べるとやや工作精度が劣っているのか、巻き上げなどの操作感にスムースさを欠いた一面があります。といっても、同時代の国産機としては小西六の写真機と並んで最上等の部類ですが、あくまでSE・EEと比べるからで、この両機の仕上げは驚異的なほどに素晴らしいですからね。
 しかしね、シャッターを押したときの感触などは、逆にこのMLの方が上ですよ。これは、メーターの銜え込みなど余計な作業をさせていないことによるものですが、少しの慣れで、落ちる深さを会得できますので、シャッターチャンスを逃すことなく撮影できる良い写真機だと思います。
 露出操作もライトバリュー式のシチズン製シャッターは、一度設定してしまえば、速度を変えると自動で絞りも追随してきますので、こりゃぁ便利!
 多分、35MLというネーミングの「L」はライトバリューシャッターを搭載してのことだったのではないでしょうか。
 あ〜だ・こ〜だ言っている内に、先ほど「ネオパンSS」で撮ってきたフィルムの現像も出来上がったようです。45年前のフジノン4.5cm/f2.8、どれどれ、どんな風になったかな・・・・?

2004.10.19

HIROAさんの報告

ビュッカーさんの報告


フジカ35MLでの作例です

以下の写真は、ネオパンSSをミクロファインで標準現像をしたものです。
ニコンCOOLSCAN IVでネガフィルムを直接スキャニングした画像です。

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5 ここまではすべてフルフレームです

6 ここから先は、2/3ほどをカットしてトリミングした絵です。
フィルム面積としては、ハーフ判より狭小な面積になっています。

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8 やはり、ネオパンSSって、いいじゃないですか。
「看板に偽り無し」とはこのことですね。

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