canon 110ED

ポケットに入る高級機
 我々は、写真機という道具をなるべく小さく軽くして持ち運びたいという願望が昔から強いようで世界中の写真機製造会社も、そのための努力が繰り返し行われていますね。
 人が心地よく使えるサイズのカメラとしては、バルナック型のライカが誕生して、その目的は到達点に至ったように思えます。
 しかし、それでも飽きたらず、技術を進歩させ工夫を凝らし、さらなる究極を求めようとしています。それが現在では、感材の変更を伴ってまで遂行されている変革です。
 APSシステムしかり、デジタルカメラしかりですね。これらも当初開発されたものに比べると、高性能・高機能は当然ですが、必ず小型軽量化に移行してきます。
 もう30年近くも昔、宇多田ひかるの母、藤圭子が唄う「夢は夜ひらく」が巷中に流れていた頃、コダック社より110フィルム(13×17ミリの画面 サイズを持つ小型カセットフィルム)を使う「ポケット・インスタマチック」というシステムが開発され、世界的に大ヒットしました。
 私もそれまでのカメラの形態概念から遠く離れたモダンなツートーンカラーの小さくてスマートなボディに惹かれ1973年に普及タイプの「pocket INSTAMATIC 20」というカメラを買いました。
 このカメラは、距離計すらない固定焦点で固定絞り(大体f8位 だと思う)、固定速度(これも感じだが1/60くらい)の本当のインスタントカメラで、いかにもアメリカンで大雑把なモノで、とても日本人の感性では使えるモノではなく、付属品で付いてきたフィルムの現像が出来上がった時点で買ったことを後悔した記憶があります。
 また指で摘むようにして持つ撮影の仕方は重量が軽いことも手伝って、非常に手ぶれを誘発しやすく、それも画質が不良になる大きな要因でありましたね。
 75年頃になると、日本の各メーカーもこの110フィルムを使うカメラを作り出し、またも懲りずに、カメラ雑誌の広告に乗せられて買ってしまったのがこの「Canon 110ED」です。
 当時、社会人になったばかりで、まるまる2ヶ月分の給料(このカメラ34,000円だった)を投じましたが、今思い起こしてみても、どこに惚れ込んだのか思い出せません。まあ、子供の頃から精巧なものや精密なものが好きだったので、このカメラの諸元に惹かれたのかもしれない。以下に、惹かれたであろう諸元を記すと、

1. 本格的な二重像合致式距離計が付いている(コダックでねむい写真ばかり撮っていたのは、距離計がないせいだと信じていた。本当は殆どが手ぶれだったと思います)。 
2. CdS使用の絞り優先EE機構(当時、CdSでの測光は先進的でした) 
3. 最長で8秒までの電子シャッター(今でこそ、機械式シャッターのカメラにノスタルジックな愛おしさを感じつつ愛でていますが、実用と言うことを考慮すれば、機械式では2秒以上の低速は、バルブにして勘に頼ってカウントする以外になく、AEで8秒までいけるこのシャッターは、何かと便利この上ない。これで夜景も撮れると思ってしまった。実際にf.8位 まで絞ると、綺麗に撮れました。高速側は1/500秒まで切れます) 
4. X接点直結ホットシュー(こんな小さなカメラでストロボが使えるなんて凄いと思ってしまった。しかし、G.N.20クラスのストロボを装着すると高重心になって、さらにホールドが不安定になります)。 
5. 日付写し込み機能(デート機能搭載の走りの時期だったので、これにもクラッときてしまった) 
6. たかだか13×17ミリという35mmハーフ版より更に小さい面 積のフィルムに光を焼き付けるのに4群5枚構成の贅沢な大口径26mm f.2キヤノンレンズ等々。
 
 当時としては、最先端のテクノロジーがこの小さく平べったいボディの中に濃密に搭載されていました。
 極め付きは、スローシャッターの使用を想定したワイヤーレリーズの取付ネジがシャッターボタンの横に設けられていることで、諸元から見る限りれっきとした高級機だったのです。
 両機とも未だ異常なく正常に作動しますが、ここ10年程はフィルムの入手と現像に時間が掛かるので、めっきり出番が減ってしまいました。ポケットサイズとはいえ、中身も含めて殆どが金属製なので200gもあり、サイズの割にずっしりとした重量のあるカメラです。

Canon 110ED
ピント合わせは本体上面についたノブを左右にスライドさせて調整するが、
ファインダーが明るく、二重像もハッキリしているので操作は容易。
絞りの表示は数種のピクトで表されるが開放のf.2から最小のf.16まで
自由にセットできる。いわゆる絞り優先AEだ。


Kodak pocket INSTAMATIC 20
このカメラのシャッター位置はどう考えても設計ミス。
上から押し込むので端に寄れば寄る程ブレが大きくなる。
キヤノンの方も更に中央よりだとベストなのだが・・・。
上面中央のギザギザした丸い穴は、低光量時に使用する「フラッシュキューブ」を
装着するためのもの。フラッシュキューブは立方体の4面 にフラッシュバルブが付いていて、
1回撮影する度に、90度回転させながら使う。現在の感覚からすると、殆ど子供のオモチャという感じ。


Canon 110EDの主な仕様
発売年度・価格 1975年 34,000円
レンズ 26mm f2.0(4群5枚構成)
シャッター Canon製電子式 8秒ー1/500秒
露出計 CdS素子使用の絞り優先式EE
焦点調節 二重像合致式距離計内蔵ゾーンマーク付き
ファインダー ブライトフレーム付逆ガリレイ式、パララックス補正マーク ゾーンマークのピクト表示あり
大きさ・重さ 幅142・高さ28・奥行き56mm 295g
主な特徴 ポケットインスタマチックカメラでは、異例の大口径レンズを与えられた高級機

110EDで撮影してみました。



ほぼ最短撮影距離、絞り解放。室内だが、自然光を利用した。絞りを解放にするとやはり先鋭度は甘くなる。
チカッというとても小さなシャッター音のおかげで、彼の目を醒ますことなく、撮影できた。


狙い通 り夜景も撮れる。これは、f:5.6で1秒くらいだった。
脚を持ち合わせていなかったので、無謀にも傍らの電柱に腕を押しつけながら ジッと我慢でレリーズ。
点光源がかなり滲んでだれてしまった。 8秒までは切れるのでf:11位 まで思い切り絞った方が良いかも。

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